閑話 見張る者達
秋「えーと。今回は信兄と大楠様の話?」
信「題名からすると、暗躍する者と監視する者両方かな。」
<ふ~。うまくいかんの~。>
「おやおや、古より存在する樹の意識とは思えない愚痴ですな。」
<術師か?この学び舎には、何ぞ強きものでもいるのか。
立て続けに、2つも友を失ったぞ。
それに、分魂の一部が消され始めている。>
「ふむ。実はこの地を監視する術師が動き始めたと連絡を受けました。
そのせいでしょう。彼らが動きを緩めるまで、
しばらく、なりをひそめるのはいかがでしょうか。
あと1週間もすれば、この小学校には人が少なくなりますので、
ちょうど、良いかと。それに、聞いた噂では、
今年は秋に立て続けに人が集まる行事があるようです。
それまで、英気を養ってはいかがでしょうか?」
<ふむ。確かに、今はの状態であるなら、それが良いかもしれん。
決戦は秋ということかの。>
「それが良いかと。」
<ふふふ、楽しみだ。もっともっと大きくなり、
あ奴のように神格を得てやるぞ。>
(精々、私の実験の役に立ってください。)
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清涼な風が吹く神社の境内に大きな大楠が鎮座している。
ーかさかさ、サーー
ーざっ、ざっー
信幸はその前に進み話しかける。
「ご無沙汰しております。聖樹たる大楠の樹よ。」
<風間の長兄よ。よく来てくれた。主が、上の学び舎を卒業して、
半年になるか。>
「はい、今年度より、中学に通っております。
して、念話で私をお呼びになった理由は。」
<此度、汝を呼んだのはほかでももない。上の学び舎でのことだ。
どうも、この近くに生えていた榊が関わっているようなのだ。>
「それは本当ですか?件については、我が風間家にも関わりが深く、
現在、調査を進めております。その話が本当であるなら、
非常に厄介なことになるのですが。」
<であろうな。我と同様に太古から存在しているのにも関わらず、
ないがしろにされ、負の感情をためたあ奴が係っているとなると、
非常に厄介な相手になるであろう。だが、どうも、あ奴とは別に、
この土地に関わっている術師の気配を感じる。>
「それはどこの家元とお考えですか。」
<あくまで、儂が感じた力の気配の話ではあるが、”今川”の本家だ。
結界と幻影を扱いに長けている。あの一族の気配を感じる。
確か、汝の屋敷の近くであったな。>
「ええ。たしかあそこは、最近よい噂を聞きません。
分家の”今川”と我が弟と、本家の”今川”の長兄の3人同い年のはずですが、
その本家の”今川”の息子が、分家に比べ力が低いため、
ないものとして扱っているとかなんとか。」
<人の子は何を考えるかはわからん。ただ、我が領域で、
不穏な動きはしてほしくはないものだ。あと、これは吉報かはわからんが、
先ほど話した榊の気配が、ここ数日薄れておる。
もしかすると、暫くは大人しくするのやもしれん。>
「貴重な情報痛み入ります。では、我ら一族はしばらく、
”今川”の本家の調査を行い、これ以上、
貴方様の領域を荒らすことがないよう努めます。」
<うむ。励むように。あと、この間、2つほど神の気配を感じたのだが、
何かこころあたりはあるか?>
「いえ、妹と弟が通っておりますが、
神の力を持つものを見たとの報告はございません。」
<そうか・・・。気のせいだったのかもしれん。気にはするな。>
「御意に。では、失礼いたします。」
ーざっっ、ざっ、ざっー
ーかさかさ、サーー
<あの気配、もしやとは思うが。>
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ーカツンッ、カツンッー
蝋燭で照らされた薄暗い、石壁の廊下を黒縁眼鏡の顔の長い、
背の高い男性が歩いていく。
しばらく歩くと目の前に座敷牢が見える。
「ああ、お父さん。」
座敷牢の中には眼下が窪み、ひどい隈ができた、やせ細った男の子がいた。
「ああ、ごめんな。こんなお前を生んでしまったばかりに、
こんな場所に閉じ込めることになって。だが、もう少しだ。
もう少しで、お前を馬鹿にするものはいなくなる。神に等しい力を与えれば、
誰もお前を馬鹿にしない。」
「お・と・う・さ・ん。苦・しい・よ、怖い・よ、ひと・りは嫌・だ~。」
「そんな弱音をいうな!」
ービクゥー
「もう少しだ。もう少しで、だれも私たちを馬鹿にするこはなくなる。
もう少しで。」
そう言って、男はどこからか、黒い物体を取り出し、男の子の心臓あたりにおしつける。
「イギャー。」
男の子の叫びが響く、それは男は何の感情もないのっぺらな顔で見ていた。
秋「え~と。なんで、流治は今川家の長男が狂った理由をしっているの?」
信「フレイアの力の仕業かもな。」




