魂の力
紅[今回は第2部完だぞ。」
信「やっとか。」
そいつは、力の気配をたどったのか、病室の壁や窓、
空いているドアの廊下と病室の間の空間をべった、ぺったと
触りながら、唸る。
『よこせ。その体をよこせ。』
やっと月明かりが届き、そいつを照らす。
その姿はいろいろな性別、いろいろな体系、
いろいろな年齢の人が混ぜ合わさった”何か”であった。
「気持ち悪い。なんだよあれ。」
流治は泣き腫らした目で、そいつをみた。
(私たちの力を欲しがっている。悪霊の集合体よ。)
「そんなの、何も知らない人が使えるわけないじゃないか。」
(あれに、そんなこと理解できるわけないじゃない。)
この体を奪われたれら確実に世界は終わる。
流治は記憶と、六花たちに聞いたあの夜のできごとから、
そう考えた。
<さあ、どうしようか。>
<結界で、一応は防いでいるが・・・。>
<ジリ貧。>
<だな、あと耐えて、2時間ってとこか。>
<異議。3時間。>
<そうはいっても、2時間たてば、ヒビが入り始めるだろう。>
<肯定。遺憾。>
<まあ、すねるな。あんな奴はそうはいない。悪食もいいとこだな。
無機物、有機物関係なくエネルギーになりそうなものを吸収してやがる。
流治の虚無といい勝負だな。>
(どうすんの?)
<しゃあねぇ。奥の手使うか。現状これを使うと、どんな副作用がでるの
わからんのよ。下手すんと、元に戻れなくなるかもしれないんだよな~。>
<げっ、あれですか。>
<元はといえば、お前と俺の確認ミスだかんよ。責任をとる意味でも、
やるしかあんめい。>
<ふ~。仕様がないですね。>
<流治、悪いがいきなり実戦だ。お前の能力の使い方、きっちり見て覚えろよ。>
「えっ。何?」
<いくぜ!>
<<ソウルシフト。>>
<ライト!>
<ダーク!>
<<モードセレクト、真理の神。>>
ーカッ!ー
流治の体が、光と闇両方に包まれ、そして、消えると、そこには、
髪が長くなった、金の瞳の、右に黒い6枚羽根、左に白い6枚羽根を背負った姿が
できあがっていた。
(えーーーーーー!)
(何これ!?)
(あっ。流治。)
(えっ。嘘。なんで?え?)
<<あんたの力。ソウルシフトは、自分自身の中に居る魂、ないし、
自分が体の使用を認めた魂と自分の魂がいっしょになって体を利用しつつ、
異界の力を使うというもの。
今回は、お手本のために、私たちが強制的に体を使わせてもらうけど、本来は、
あんたの意識が表にいないと体は動かないし、異界の力も使えない。
まあ、私たちは貴方の心と魂のかけらをもっているからできる、
荒業だけどね。>>
(あ~。それで、奥の手ですか。確かに、副作用が大きそうですね。)
(えっ。どういうこと。)
(つまり、ここにいる人にお願いをすると、信兄や秋姉と同じような力が
使えるってこと。)
(えっと。なんとなくわかった。)
<<まあ、今はそれでいい。さて、あいつをどうにかするか。
とりあえず、忍、解除しろ。>>
<是。解。>
<<さて、お前に罪はないが、せめて、あの世には行かせてやんよ。>>
そういって、右手を手の甲を上にして、人差し指で、そいつを指す。
するといくつかの羽が飛んでいく。
白と黒の羽がささると、球状に切り取られるようにそいつの一部が消えた。
<<どうよ、疑似虚無の力は>>
そういって、次々に羽を飛ばす。
しかし、そいつは体をくねらせて、削られる量を少なくし始めた。
<<ちっ。>>
『怖い、怖い、逃げよう。』
<<おい!逃がさねえよ。縛。>>
床に散らばっている羽から、白の鎖が発生する。
『いやだ、いやだ、消えたくない。』
<<安心しな。消えはしない。輪廻にもどるだけだ。さて、これで終いだ。
異界の門を閉じよう。>>
羽が、そいつの中に埋まっていく。しばらくして、
ーばぼっん。ー
くぐもった何かが破裂する音が聞こえたかと思うと、
そいつは徐々に外側から消え始めた。
<<良き来世でありますように。>>
目を閉じて祈る。
(水を差して悪いんだけど、最初に消した部分の魂は輪廻に帰したの?)
<<そこはちゃんと制御してたさ。さて、元に戻ろうかな。リブート>>
最初の時のように闇と光が流治を包む。
消えると、元の姿の流治がいた。
「戻った。」
<<戻んね~。やっぱ副作用がでた。>>
(「え?」)
<<異界の門の力の一部が俺たちと繋がっちまった上、強制操作だったから、
魂がもとに戻らね~。>>
(ということは?)
<<流治の力に制限がかかる上に、異界の力が使えない。
ということは、記憶の解放は当分お預けってことだ。>>
(「何だって~!」)
(そんな当分このままなんて・・・。)
ーがっくしー orz
「まだ、役立たず。(T_T)」
ーガーンー
<<悪いね。>>
波がテトラポットにくだける心地よい音が響いた。
ーザ、サーン、ザーンー
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病院の外の松の木にフクロウがランランと目を輝かせて、一部始終を見ていた。
その下に目をつぶって木に寄り掛かる男がいる。
(あれを消しますか。あの子は風間家の能無しのはずではないのか?
とりあえず、障害になりそうなら、消すことを考えましょう。)
男は目を開くと、街灯が照らす駐車場を歩き始めた。
信「また、座談会するか。」
紅「えっ?」




