第九回 表情の練習・相手の気持ちを考える
前回のSSTで、障害者職業センターに自分で電話をすると決心し、無事次の日に(早い! 自分にとっては凄く早い!)電話することができました。「(通っている病院名)で○○さんと○○さん(←職業センターの人)にお話を聞いたものなんですが……見学とかって……」と出だしで言ったら、事務の人だったみたいで、名前を聞かれて、片方の○○さんに替わってもらえました。私のことを覚えてくれていたようで、「さっそくお電話ありがとうございます」と言ってもらえて、あぁ、先延ばしにしなくて良かった……と思いました。見学の日時を教えてもらい、「遅れても大丈夫ですよ」と付け加えてくれたのが感じが良くて、作業所は駄目だったけど、こっちなら大丈夫そう……と安心しました。おそらく、というか確実に通うことになると思います。見学していないけれど、他に行くところもないし……意地でもしがみつきたい、という気持ちではいます。
さて、SST。今回も初めはとても緊張した状態でしたが、終わる頃には爽やかな充実感を感じることができました。今回も途中から一人来て三人揃いました。
一分間スピーチ。原稿うろ覚えで臨みました。いや、一応これとこれは言おう! と書いて考えていたんですが、若干忘れ気味で……途中言葉に詰まりました。でも言葉を探して喋っている感じは臨場感があったかな……と思います。つまり、作り物の言葉じゃないというか。水曜日に母と髪を切りに行った話をしました。(店に)髪を切りに行くのは三年ぶりで、二回目であること。それまでは千円カットにしか行ったことがなかったのです。今回行ったところはカットが1500円、シャンプーが500円。「(髪を)縛れるギリギリの長さにして下さい」と言って切ってもらい、「このくらいでいいですか?」と聞かれたのに「もう二センチくらい切って下さい」と答えたので、凄く短くなってしまいました。何度も髪を切りに行くのは面倒なので、ギリギリまで短くしようと思って言ったら短くなりすぎた……というのがこの話のオチです。いい感じに笑ってもらえました(笑)。男性スタッフからは「それ分かります。僕もできるだけ短くします」と賛同して頂き、嬉しかったです(笑)。しかし本当に久しぶりに切りに行って、大変緊張しました。
他の方の話は、サッカーの試合鑑賞(?)、娘のバスケの試合、高尾山に夫と登ることになった話……。一番衝撃を受けたのは、駅で咳が止まらなくなったら、周りの人がさーっと引いていって、近くにいた男性はマスクまで取り出した、という……。女性の方がのどあめをくれたので嬉しかったそうですが……。なんというか、世間の人って露骨で冷たい……。ちょっとゾッとしてしまいました。それが身を守るのに必要とはいえ、なんというか……。
ウォーミングアップは「今日の気分を円グラフにして理由もつけて発表しよう」というもの。プリントに並べられた感情のリストから選んで書いてもいいそうです。私は「緊張80%、恥ずかしさ20%」にしました。理由は「人前で意見を言ったり話したりするのは慣れないから」です。普通に話しているし、そんなふうには見えない、九回目でもまだ緊張があるのかな? と色々言われたのですが、そうなんですよね……まだ本当に緊張します。最近、始まる前の嫌だな、という気持ちがない替わりに、緊張するようになりましたね……。
できていることリスト。起床時間は、八時台一回、九時台二回、十時台二回、十二時台一回、一時台一回。どうしてリストに丸がつかないのか? と聞かれ、「寒いし寝過ぎてしまう……」と答えるのは、これで三回目くらいでしょうか。
本題です。表情を鍛えよう! 半分に割った割り箸を横にして咬んで、イーっとやると笑顔になる。他にも、無表情→小さくニコッ→さわやかな笑顔。首を傾げる→つらい→喜び→驚き……と色々表情を変化させます。これは鏡に映してやります。人前であれだけ鏡を見るのを嫌がっていた自分が、不思議なことに、抵抗なくやることができました。変な笑いは抜けませんが。つらい顔をするのが難しくて手こずっていたところ、女性スタッフが「自閉症スペクトラムの人はつらさを顔に出すのが苦手だからね」と言っていて、ああ、そうだったのか……と得心しました。まさにそこで引っかかっていたので、納得です。
「ジェスチャーは使いますか?」と聞かれ、「自然にやってるのかも……ゴニョゴニョ」とめちゃくちゃか細い声で言ってしまいました。自信がないとすぐ声が小さくなってしまいますね……。
ジェスチャーや身ぶりの練習をしました。これも鏡で見て練習します。親指と人差し指で「少しだけ」とか、指を輪にして「OK」とか、手を出して「ちょっと待って」とか……。
「不安な様子を見せると周りの人が助けてくれます。周りから受け入れられる困り方を練習しよう! 愛嬌を見せた方が相手も助けやすいです。」というようなことがプリントに書いてあって、スタッフも「こんなのがあるとは凄いね~」と驚き気味でした。面白いですよね。困り方って……、その通りなんだとは思いますが、実際文字で見ると軽い衝撃があります。これも鏡で練習しました。私は単に腕を後ろで組んで下を向いただけですが……。靴のところくらい下を見ちゃうのもいいね、と言われました。
休み時間は美容院とか髪を切りに行った話を三人のスタッフとしました。「久しぶりじゃ緊張しますよね~緊張度合はSSTの十倍くらいですか?」と聞かれて私は頷きました。実際は三倍くらいかもしれませんが……。そのくらいSSTも緊張するということです。「三年ぶりってことは……」「いつも母に切ってもらってます」と言いました。「かゆいところはありますか?」って店員に聞かれても「ないです」としか答えられない……という話をすると、二人の女性スタッフらは「なかなか言わないですよね~」と言っていて、そうか……普通なのか、と結構安心しました。男性スタッフに「頭皮マッサージはやりましたか? あれ気持ちいいんですよね」と言われ「カラー専門店だからか、そういうのはなかったです。乾かすのもセルフでした」というようなことを答えました。そしたら女性スタッフが同じくカラー専門店で、髪を洗うのも自動の機械でやるところに行ったことがある、と言っていました。髪の話題は皆共通なのか、参加しやすい良い話題かもしれないですね。一番会話が弾んだ……かもしれません。
最後は「相手の気持ちを考えて受け答えをする練習」です。Aが休み時間に座ってボーっとしていると、Bが話しかけてきた。しかしそれは関心のない芸能人の話だった。「Aさん聞いて! 私○○っていう芸能人が好きなんだけど、この間のドラマ見た? 演技上手くて凄いよね!」といった感じ。
まずはBがどういう気持ちで話しかけてきたのか考えよう。私は「感動を共有したかった」と言いました。女性スタッフの「Aが寂しそうだから話しかけてみた」という意見には、あーそれっていいなーと思いました。他には「単に仲良くなりたかった」とか。人によって色々違いますね。
次にその返事を考えてロールプレイしていきます。相手の気持ちを考えた上で対応します。
「そのドラマ、気になってたけど、まだ見てないんだ。今度見てみるよ」というセリフを作りました。完全に相手に合わせる感じですね。実際は興味ないけど……でも、振られた以上会話は続けるべきだよな~、と思う……と思います。昔はもちろん大体の会話は興味深げに聞いていたはずなんですが、でも今はどうだろう……。ロールプレイしてみると、「うん! 是非見てみて! あのね~」と会話が続いてしまいました。そりゃそうか。ぐいぐい来られるとううって思ってしまうけど、嬉しい気持ちもあります。
対応パターンとしては①断る②相づちを打つ・オウム返しする③付き合う、というのがあって、私のセリフは③ですね。もう一個違うパターンでロールプレイしてみよう、ということになって、簡単そうなので②を選んだところ「でもさっき無理に話を合わせないのもいいのかもって言ってたよね?(男性参加者のロールプレイの感想で言いました)」と女性スタッフの鋭いツッコミを受け、①をやることになりました。「本を読んでいるから今は聞けない」という設定にも惹かれたので(笑)。「Aさん聞いて! 私~(同上)」「へぇ……あっでも今本読んでるから、今度聞かせて欲しいな」と言いました。
アドバイスとしては、しばらく話を聞いて最後に「今本読んでるから……」とフェードアウトしていくのがソフトでいいかもしれない、とのことです。それはそうですよね。実際はそうすると思います……多分。(いやそもそも断らないか……。)微妙に(というか結構?)ロールプレイと実際が一致しないと思ってしまう自分がまだいますね。
最後の感想は「相手の気持ちを考えて対応を……考えるのは大切だな、と思いました」と微妙な間を作ってしまいましたが、言いました。そのまんますぎる感想になってしまいましたね……。今回も捻りだすのに少し苦労しました。女性スタッフに「考え過ぎないようにしてね」と言葉をかけられました。
宿題は「今回のSSTの内容を家族に身ぶり手ぶりを交えて話そう!」というもの。この手の宿題は家族に説明してからでないと唐突に思われてしまうので実は難しい……。「今からこういう宿題をやるよ」と言ってやりました。なんとまあ不自然。
帰りの会で、次回の始まりの会・帰りの会の司会を決めるのですが、今回はダチョウ倶楽部的なノリになって男性参加者が「分かりました! やりますよ!」となっていて大変愉快でした。私も男性参加者にじっと見られたので帰りの会の司会に立候補する流れに(笑)。最終回のラストを締める役目を担うことになり、今から結構緊張しています。まぁ、大それたことにはならないはずですが……うーん、心配です。