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第三回 自己紹介の練習

 二週間間が空くと、若干行きたくなくなってしまうのは仕方ないですね。

 今回も参加者が一人来ていませんでした。前回休んだ男性で、一体どうしちゃったんだろう……? と疑問に思いますが、詮索はしません。今日はいつもと違う席に座ってみよう、と提案され、ホワイトボードの前の席に移動してみました。二週間ぶりということで、接し方を忘れている部分があって不安だったのですが、しばらくしたら慣れてきました。

 私が始まりの会の司会(という程大層なものじゃありません)を担当しました。文章が書いてあるプレートを皆に見せながら喋ってしまい、見せなくてもいいよーと言われ少し恥ずかしかったです。

 

 そして一分間スピーチ。私は今回も原稿をきちんと用意せずにはいられませんでした。緊張して内容が飛んでしまうと思うので、これでいい気がします。今回は一分間計らずに文章を作りました。「だ・である」調で書いたものを「です・ます」調に直して話したので、原稿通りではありません。これが進歩と言えば進歩……? 家族と福島県の山に登って、湿原の草紅葉を見た話をしました。朝三時三十分に起きて、車で四時間半かけて行きました。太っているし運動不足なので、六時間・一万八千歩は歩けるギリギリといった感じでしたね。アップダウンがきつかったです。左足の親指に大きな水ぶくれができました。お気に入りのパーカーの袖が汚れて、洗っても落ちなくてショックだったと話したら笑ってもらえました。

 他の方は飛行機に遅れた話、何かのフェスの話、仕事の資料を忘れた話、読みかけの本の話……と、あんまり覚えてはいないのですが、前回よりは落ち着いて聞けた気がします。最初に発表したから、聞く方に集中できたんでしょうね。

 

 できていることチェックリスト。ふふふ……ここ二週間の起床時間は、三時台一回、五時台一回、六時台一回、七時台九回、八時台二回です! かなり健康的な生活になってきましたよ~~。ホント、これについてはSST様様です。

 

 自己紹介リレーは今回もやるのかな? と思って構えていたんですが、今回は「○○な××さんゲーム」でした。両隣の人のことを特徴(?)と一緒に紹介するというゲームです。私は「姿勢が正しい○○さんと、髪ゴムの色が素敵な××さんです」と紹介しました。ちなみに私は「笑顔が柔らかい王李さん」「一分間スピーチでいつも準備してくる王李さん」と言われました。そ、そうですね……。前者は嬉しいですが。


 本題です。今回は自己紹介の練習をします。自己紹介の項目を紙に書き出しました。職場などでは自分の特徴や苦手なことを伝えておくといいそうです。ですが、実際言えるかというと……多分無理。だって「何それ?」と思われてしまいそうなので……。

 

 この「苦手なこと」については結構突っ込んで聞かれました。


「怒鳴り声、高速道路(もちろん乗る方)、機械、電話」と言ったら、男性スタッフに、「前、聞く方が駄目って言ってましたよね? それも言った方がいいと思います」と言われました。

 よく覚えてるな~と感心してしまいました。私は躁鬱(そううつ)になった頃から、他人の言葉をあんまり真剣に覚えておかなくなったので(以前は一言一句真剣にとらえていたんですけどね……)、何だかムズムズしてしまいました。そして、今となっては、聞く方もそれ程駄目じゃないような気がしていて……(気がするだけかもしれないし、テンパると駄目なのは確かなんですが)何か間違ったイメージを植え付けてしまったようで罪悪感があります……。ずっと聞くのが駄目な人、というイメージが付きまとうのかなぁ……。自分から言い始めたのに何言ってんだ、って感じですが。


「機械が駄目っていうのは?」と聞かれました。「大学で(測量用)コンパスとか使ったんですが、全然覚えられなくて、ついていけなくなってやめました」「機械っていうか道具ですか?」「測量とかするので、道具っていうか機械ですかね……」「学部は?」「森林です……」「はぁ~。森を守るみたいな? 土木系なのかな」「まぁ土木もありますね……」と答えました。

 

 発達障害者にとっては森林科は鬼門かもしれません。機械(または実験器具)の使い方を覚えて、作業の手順を覚えて、班の人と協力しながら学んでいく……。普通ならできることなんでしょうが、悪くすると私みたいに人間関係をギスギスさせて退学に追いやられることになるので、発達障害があるという方に森林科はオススメしません。普通に座学やってた方が卒業はできると思います。私も昔は追い詰められて、何とか卒業だけでもできる手立てを探したものですが、今は結構どうでもいいですね……。高卒だろーがなんだろうが、そんなことにプライドはなくなってしまいました。これも躁鬱になったせいです。ただ大学中退の芸能人を見ると親近感は湧きますね(笑)。


「高速道路が苦手というのは?」と聞かれ、「スピードが怖くて、いつも前方を凝視している」というようなことを答えたところ、「ぶつかりそうで怖いから?」とちょっと不思議そうな顔をされました。うーむ、皆は怖くないんでしょうねぇ。羨ましいなぁ。


 次は声の大きさを練習しました。モソモソ話すところからだんだんボリュームを上げていきます。久々に他人に対してデカい声を出しました。「お腹が減ったー!」「お菓子が食べたい!」と言いました。意識すれば案外声って出るもんなんだな、と結構嬉しかったです。


 休み時間に男性スタッフから「王李さん、最初は家に引きこもってるって言ってたけど、結構出かけてるよね?」と言われました。よく覚えてるな~とこれまた驚きました。「家族となら……」と言っておいたんですが、多分秋という季節柄、いつもより出かけることが多いというだけだと思います。母と買い物はよく行くんですけどね。それ以外は大体家でじっとしています。秋だから近所の池の周りを歩こうかな~と考えてはいるんですが……。


 次は視線の向け方。相手の目を見られない人は眉間や顎を見たりすると良い、ということです。これは以前クビになった飲食店のバイトで教わったことがありました。そして、適度に視線をそらすことも大切。まぁそうですよね。凝視されたらビビりますもの。五秒程相手を見たら二秒程テーブルの上の花を見る……なんてことを練習しました。


 今回のロールプレイ。自己紹介するところです。悪い例は下を向いて小さな声で……。「独り言みたいに見えました」と言いました。改善点は「もっと自信を持って」(誰が言ってんだって感じですが)と言いました。発達障害支援センターの女性が賛同してくれて嬉しかったです。

 良い例は視線を合わせて声を大きく笑顔で! 実際にやってみると……なんだかそわそわしてしまいました。笑顔と視線の外し方がいいと褒められました。


 最後の感想。「声の大きさを練習できて良かったです」と小さな声で言ってしまいました……。

 今回の宿題は「家族やスタッフに自己紹介してみよう」というもの。家族に自己紹介はさすがに憚られるので、女性スタッフの方に「自己紹介していいですか?」とお願いしました。

「本を読むのが趣味で、興味のあることは本屋巡りで、苦手なのは機械です……」と緊張してぎこちなく自己紹介しました。そうしたら「本は何を読むの?」と聞かれました。「ミステリーです」「今、娘の本を読んでいて、何だっけ……謎解きは」「ディナーのあとで、ですね。私は読んだことないですけど……」「それをゆっくり読んでる。難しくない感じで読みやすい」「あー……えー……」と言葉に詰まってしまいました。「謎解きはディナーのあとで」には全然興味がなかったので、何と言っていいやら分からなかったのです。話を広げられなくて少し申し訳なかったです。「感想を教えて下さい」くらい言えば良かったかなぁ……。それにしても、タイトルを本気で忘れていたようで、(スピーチの時もタイトルが分からない本を読んでる、と言っていました)タイトルさえ覚えないのかぁ……とやや残念な気持ちになりました。それは何だか勿体ないです。本の世界はとても奥深くて面白いのに! 本さえあれば無聊(ぶりょう)を慰められるのに……! ……世間の人はきっと暇じゃないんでしょうね。

 

 今回は終わった後、とても清々(すがすが)しい気分でした。SSTやってて良かったなーとなんとなく思いました。気晴らしになるのは確かですね。前回のバイトできるかも? な自信はやや控えめになりましたが。やっぱりちょっとハイになっていた模様です。ただ、SSTをやっと習慣として受け入れられた感じがします。

 休み時間に出歩いた時、ロビーでデイケアに来た(?)女性に話しかけられました。「スタッフの方ですか?」と言われました。ビックリしましたね。そう見えるのか……。人に話しかけられても以前ほどオロオロしなくなってきた実感があります。

 


 


 


 

 

 

 


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