第十回 雑談する
ついに最終回です。しかし、参加者が一人来なかったので、いつもの二人で終了することになってしまいました。起きられなかったのでしょうね。逆にそのくらいの参加意欲でも大丈夫ということなのかどうなのか、結構自由な感じがします。参加を考えている方は気負う必要はない、ということでしょうか……。(もちろん全ての回参加するに越したことはないですけど……。)発達障害専門の女性もどうしたのやら遅れて来ました。
一分間スピーチ。再び県で行われている芸術祭に参加してきました。前回は回らなかったところです。理解できないアートが多いんですけど……(ここで笑い)、貝殻に建物が乗っかっているガラス細工(このままじゃ意味不明ですね。多分聞いている人誰も理解していなかったと思います)は綺麗でした。その貝殻を実際にヤドカリに背負わせている展示があって面白かったです。途中で寄ったファミリーマートで、260円を奮発してマカロン三色セットを買ったのですが、とても美味しかったです、と話しました。原稿を一回書き直してしまいました。そして最後まで結局暗記。一分間には届かず「以上です」と締めてしまいました。女性スタッフに「まとまってる~」というふうに言われたのですが、自分ではラストこんな話しかできないのか~とやや不満に思ってしまいました。
他の方は、娘のバスケ、電子タバコを普通のタバコにしたら家族に臭うと言われた、パククネ大統領・韓国は裁判の権利(?)も大統領が持っているので、それを分離するべきという話(そうなのか……全然知りませんでしたが少し興味が湧きました)。やっぱり二、三個の話は飛んでしまいますね。私の不得手なのか人間誰しもそうなのか……。
できていることリスト。起床時間。七時台一回、九時台二回、十時台二回、十一時台一回、一時台一回。最後の最後は頑張ろうと思ったのですが駄目でした~。七時台起きは芸術祭に出かけるため頑張りました。他にもリストには「服は清潔か」「爪は切ってあるか」等の項目があって、そこも二重丸ではなく丸にしていたのですが、「大丈夫だと思うよ。最後だしオマケしちゃえば? 自信持って」と女性スタッフに言われました。うーん、オマケ……自信……そういうことではないんだよな~と思いつつも、言われたので二重丸に変えておきました。
本題です。今回は「雑談について」。「雑談で困ったことはありますか?」と質問されました。「時事問題やスポーツなど疎い話をされると困ってしまう」というふうに言いました。「実際雑談で困るシーンになったことは?」と聞かれたのですが、「もう随分喋ってないので覚えていない」と答えてしまいました。大学の新入生歓迎会の自由に喋りながらお菓子をつまむ時間で、私の周りだけだーれも集まらなかったことを言えば良かったです。後輩にまで無視されるという……見た目で何か分かったんでしょうかねぇ……興味ないので化粧もオシャレも全くしていなかったんですが。参加していない同級生は結構いたので、私も行かなきゃ良かった……、と心底後悔したあの夜です。
前SSTにやってきた人はパートの仕事をしていたそうですが、仕事は嫌じゃないけど休み時間がどうしても嫌だったそうです。どうしても雑談が嫌だったら、その場から離れるのも手だそうで、看護師で休み時間は自分の車に戻る人も実際にいたそう。それは凄いですね。また、タバコを吸いに行ったり、トイレに行ったり理由をつけて離れるのもOK。寝る、スマホを使う、もアリかも? ということです。新入生歓迎会でスマホを使って下を向いている知人は確かにいました。でも、スマホを休憩中人が喋っている中で使うのは、非常に失礼な気がするのですが……。私の考えが旧式なのか。
雑談には定番ネタというものがあります。「天気、相手の趣味、季節(花粉症・インフルエンザ)、持ち物(服・バッグの色)、学校行事」がそれです。面白くしようと思わないで、自分らしく伝えることができればOK。でも話す以上面白い話にしたいと思ってしまいます。聞く方もだらだらどうでもいい話は聞きたくないだろうし……。「雑談はする必要のないことでもある」という意見が出て、それももっともなことだと思いました。昔は喋ろう喋ろうと思っていた記憶があるのですが、今は雑談なんて別に……という気持ちです。喋らなければ喋らないで困ることもないですし。「聞き役に徹して、穏やかな表情の口数の少ない控えめな人になるのでもいい」ということなので、現実的にはこれかなぁ、と思います。
趣味の話で年配の女性スタッフは「漫画やアニメの話をされてもよく分からなくて困っちゃう」と言っていました。そういうのは分かる者同士の時だけにする方がいいとのこと。それはそうですよね。オタクに囲まれた非オタクですので……(二回目)よく分かります。
休み時間。「障害者職業センターに電話しましたか? これ聞いていいのかな~と思って」というふうに言われました。前回聞かれなかったので、あれ? 聞いて来ないのかな……と少し疑問に思っていました。ためらっていたとは。聞かれるのが遅れると「ん? 今その話か……(もちろん嫌ではない)」と思うので、やはり早め早めに聞くのがいいと思った次第。男性参加者は主治医に相談してから決めるそうです。
後半はほとんどの時間を使って、約五十分くらい雑談タイム!
ルールとしては、まず喋る人がスピーカーマイクという名前の星マークが書かれた紙を持ちます。その時その他の人は相づち言葉のみ使っていい。カードを渡された人(自分からもらっても可)が次に喋ります。話題が変わっても会話を続けましょう、ということです。てっきり立って雑談するのかと思いきや、テーブルを囲んで椅子に座ったまま。必然的に大体両隣の人にカードが行き渡る感じに。(もちろん手を伸ばして正面の人に渡す場合もありましたが、それをやったのはスタッフだけ。)
全部の会話を思い出すことはできないので、私が喋った周辺のことをなんとなくで書いていきます。当たり前というべきか、自分が喋ったことを一番覚えているものですね。
一回目は「この冬の予定」。女性スタッフからのスタート。(色々あって)私「ガーベラの苗を探しています」→苗はどこに売っているのか?→私「農産物直売所とかスーパーです。綺麗で安いやつを探しています」→園芸やるの?→私「今はあんまり季節じゃないからやらないけど(そんなこともない)、水菜とかパンジーとかビオラの種をまきました」→花の話→母の日に花とか贈る?→贈らない→父の日に贈る物→ゴルフ→ビール→好きな食べ物→私「100円ショップのネクタイをあげていたけれど、今はあげていません(100円ショップで笑いが起こるかと思ったが、そうはならずちょっと残念)」→(色々)
一回目やってみた感想を聞かれ、「皆が喋っているうちに何を話そうかぐるぐる考える感じでした。少し緊張しました」と言いました。「考えておけばできる感じかな?」と言われ、頷いておきました。
二回目は男性参加者が選んだテーマ「趣味」。男性参加者からのスタート。アニメ・ライトノベル→趣味がない→電子書籍の話→300冊くらい入る→アイフォンの話→集めている物→メモ帳→雑貨集め→特にない→私「最近マスキングテープ集めをしています」→料理・お菓子作り→私の質問「マカロンとかって作れますか?」→マカロンは作らないけど、メレンゲなら息子が作った→暖房・オーブンレンジの話→私「うちのコタツはずっと壊れていて、ストーブの熱を引き込んで使っています」→そういうチューブがある話→そんなもの見当もつかない→私「変な話なんですけど、ストーブとエアコンを同時につけて死亡したというドキュメントを昔テレビで見たことがあって、調べたら全然そんなことはなくて、あれはなんだったのだろう……」とSSTで一番地声というか地を見せた喋り方で言いました。「不思議な話」という括りで話が広がっていくと期待していたのです。結果全く広がらず次の女性スタッフの話で終了してしまいました……。
二回目の感想は「こんなふうに話が広がっていくんだ、というのを体感しました」と言いました。体感……ちょっとキザだったかな。
三回目は私が選んだテーマ「好きな食べ物」。私からスタート。私「キムチ鍋に入っているもやしが好きです」→もやしの話→食べすぎたらどうする→私「実際に吐いてしまいました」→お店で失敗したこと→流しそうめんというメニューを頼んだら、小さなぐるぐる回る流しそうめん機が出てきたこと(凄く面白かったです)→メニューでの失敗→キノコ博士→私「家族は庭の蜂の巣からとれるハチノコを食べていたけど、あれは食べられない」→イナゴも食べられない。どうやって食べる?→私「蜂の巣をとってきて、ハチノコをほじくり出して、フライパンで炒めます。でもあれは襲ってこないアシナガバチ(真偽は不明)とかだったと思うので……それに今はもう(巣はとらずに)見守ります」→スズメバチの話→(ここらへんは忘れた)→ラインの話→私「メールとかの文章は何度も見直すのでラインはできないな……と思います」→というかガラケー→私「私もガラケーです」→書く話→私「日記を100円ショップの日記帳に書いています」→三日坊主で無理→続けていることは?→喫煙くらい→日記帳は持ているけど飾ってある→(色々)
今回の感想と、プログラム全体の感想を! と言われ「皆の話を聞くのが単純に楽しかったです。プログラム全体の感想は、最初は喋るのもやっとだったのですが、喋れるようになって良かったです」と言いました。いきなり私からだったので、言うことを煮詰められず……。もっと言いたいことは色々あったんだよなぁ……。スタッフのフォローにありがとうと言いたかったです。
帰りの会の司会になぜか男性スタッフが指名されて、あれっ? と思ったのですが、男性参加者が「今日は王李さんですよ」とフォローしてくれました。有難いです。私はただ普通に原稿プレートを読んでいき、「お疲れさまでした」と締めました。次回の確認事項がない分、いつもより簡単でした(笑)。
終わった後、スタッフ一同が「王李さんの様子を障害者職業センターに送っておきますね」と言っていました。プログラム中、スタッフが短いメモを書いたりする様子が見られたのですが、やっぱりそういうことか……。これが、主治医の言っていた「サポートが続いていく」ということなんでしょうね。障害者職業センターの担当者に何か伝えておくことはあるか、と聞かれ、特にないと言ってしまったのですが、「色々言いたいことをすぐ言葉にできない」と言っておけば良かったかな~と後悔しています。障害者職業センターの見学(面接、とスタッフは言っていた)で、自分の実情を全部言葉にできるとは限らないじゃないですか。それも母がいる前で。(母は私のことを発達障害とは考えていない節があります。それは検査テストの時に私が普通の状態じゃなかったからだと思います。号泣してテストを途中で放りだしてしまった感じですね。とはいえ、医者は後に、両親に対してだけ先に発達障害だ、と言ったそうです。ずっと生きづらさを感じていたので、知らされた時は私としてはかなり救われた感じです。でも診断書が出ているかというと、誰も話さないのでいまいち分かりません。そもそもそんなものはないのか?)
そして、女性スタッフが「週一来るっていうのは習慣として良かったかな? どんどん増やしていけば……ね?」と聞いてきました。私は何回も頷きました。「良かったです」と答えました。
電話相談はSSTの終わった午後三時以降いつでも受け付けています! とのことです。
年配の女性スタッフは「是非就職に向けて頑張って下さい」と言っていました。やはり最終的なゴールは就職なんだなぁ……人間って何なのかしら、とふと思ってしまいました。
一人一人に向けて「ありがとうございました」と頭を下げて廊下に出ようとすると、男性スタッフに呼び止められました。何だろう? と思っていたら「王李さん、名札忘れてます」と言われ、あっと気付きました。部屋に入って来た時最初につける名札を返し忘れていました……。最後の最後に、なんとも間抜けな幕切れ。
廊下を出て、建物の外を歩きながら、もっと一人一人に「ここが助かりました」と言えれば良かったなぁ、と思いました。なんとも切ない気持ちになりました。色々募る思いはあっても、全ての人がそれを言葉にするとは限らない……。私が感謝を感じていることを、どうかそちらも感じて欲しいな~、と思いました。まぁでも、最後の挨拶の仕方でそう思ってくれただろうか? 少し、というか結構心残りではあったけど、無事、今回を持ってSSTは終了です。
スタッフの人柄は基本的には温かいのですが、時々、男性参加者に対して言いすぎ……とヒヤヒヤすることは数回ありました。皆でゴチャゴチャ言うもんだから彼がやや切れてしまった時もあります。また、年配の女性スタッフはおそらく五十代前後で看護師。やっぱりどうしても考えが「働くこと」から離れないらしく、バイトの話をすると露骨に顔を輝かせたりしました。男性参加者のバイトの話に食いつくのをみていると、なんとも微妙な気持ちになる回もありました。それに、この方、あまり人の話を聞いていない・記憶していない! おばちゃんだから仕方ないのかな~と思いつつ、この方だけ少し配慮が足りないような気が、最後にしてしまいました。とはいえ、色んな人間がいるのは当たり前で、このくらいの刺激があった方が社会に順応していけるのかもしれません。
何が変わったか、と言われると、やっぱり一番は「他人と喋る感触を思い出してきた」ということでしょうか。学校に通っていた時と比べると、元にはまだまだ戻れませんが(まぁ、別に戻りたいとも思いませんが……)。確実に前に進んでいるとは思います。ロールプレイも話す訓練としては鍛えられた感じはあります。
作業所に体験入所してどうしても嫌で通わないと決めたのがおよそ二年前。その間だらだらと過ごしていることに劣等感を抱いていて、通えば良かった……と後悔したこともありました。それで生活の中でなんとなく作業所を探している自分がいました。家にいるだけだと息苦しかった日もあったようです。(読書ができるまで回復したらそんなことはあまり考えなくなりましたけど……。)しかし、作業所に通うだけで、SSTという道を通らなかったら得られなかったものは確実にあるように思います。作業所ではノートに皆の感想を聞いて集める係があって、絶対やりたくないと思っていたのですが、今なら問題ないですね(笑)。作業所に行こうかどうか迷っている人は、自宅待機→SST→障害者職業センターというルートもあるし、道は一つじゃないということを覚えておくのもいいと思います。私も、無理に作業所に通わなくて良かったな~と少し思いました。何年か待ってみれば、自然とタイミングが合う時が来るかもしれません。
作業所を体験入所する中でも「なかなか就職できない」という空気は感じましたし、実際「資格が必要だ」というような会話を入所者がしているのを聞いた事もあります。つまり、就職はそんなに容易いことではないのでしょう。それでも、主治医もSSTスタッフもそんなことは言いません。普通に就職の道が開けているような話をします。現状をあまり知らないのか、知っていて黙っているのか……。
そういうわけで、私のゴールはバイトをして本代と医療費を稼ぐこと、くらいにしておきます。
そのためには順々に階段を登って行かなければなりません。まずは十二月の障害者職業センターの見学(面接)に行こうと思います!
『SST……私の通う病院での正式名称はLST(Life related Skills Training/生活対人技能トレーニング)』
【期間】2016/9/5~2016/11/21【曜日】月曜日【時間】13:00~15:00(第八回のみ15:30まで)
【料金】一回420円




