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ハイカラ少女ノ恋物語  作者: 黒川凛恵
3/3

舞踏会への誘い

「そういえば…。」

ようやく昼餉を始めた三人。

箸の手を止め、王欄は話を切り出した。

「今夜、鹿鳴館で舞踏会が行われるそうだ。どうだい?二人も…。」

「嫌です。」

「行かない。」

即答する二人。

王欄は思わず溜め息を付いた。

しかしこれくらいで落ち込む訳にはいかない。

王欄の瞳が鋭く光る。

「鹿鳴館の舞踏会といえば各界の著名人や多くの外国人が出席する。お前達にとって、良い機会になるだろう。」

「残念ながら俺はそのような場が苦手なので。」

「知らない人と話すのは苦手…。」

「…全くお前達は似た者同士なのだなぁ。」

苦笑する王欄。

そんな彼に見向きもせず、二人は黙々と食事をしている。

「だが、二人とも僕の意見に従ってもらうよ?」

柔らかい口調でありながら有無を言わせない物言いに、夏樹は思わず箸を止めた。

「王欄さん、いつもそうやって強引に物事を進めるのはいかがなものかと。」

「ははっ。なにを言っている。お前達は我が邸の下宿人なのだぞ?主の言う事を素直に聞き入れるのが筋だと思うのだが。」

「ぐっ…!」

輝かんばかりの笑顔で言い放つ王欄。

夏樹は返す言葉を失った。

「し、しかし…。」

「しかしもだってもなーい!では二人とも、午後6時までに用意をして置きたまえ。」

王欄は口早に言い、部屋を出て行ってしまった。

しばしの沈黙。

「ねぇ、星羅。なんとかして王欄さんを…。」

夏樹は彼女の意見を聞こうと振り返り、思わず目を見張った。

彼女の姿は見当たらず、代わりにあったのは桜色をした一枚の和紙。

和紙には流れる様な達筆で

【話が長いので部屋に戻ります。】

と、書いてあった。

和紙を手にした夏樹の手が震えている。

「どいつもこいつも…。」

彼は思い切り、和紙を投げ捨てた。

舞うように和紙は窓を抜け、澄んだ青空に溶ける様に消えていく。


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