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リアリズムってなに?

 今にも降り出しそうな空を見上げた。灰色の雲が風にゆっくりと流されていく。

 野口治は雲を目で追っていると、電話がメールの着信を告げた。

「治君、家にいる?今から行くから、下の酒屋、ヒデヨシの前まで来ているから、何か買って行くものはない?」

「特にない。それよりも走るなよ」


 治はメールを送信した。

 そうだ、洗濯物を取り込まなければと思い、治は縁側からサンダルを履いて、庭に降り、洗濯物を籠に放り込んでいく。

 そんな事をしていると、湿った大気に、不意に薔薇の香が飛び込んでくる。驚いて探すと、白く小さな野薔薇がいっぱいの花をつけているのを見つけた。それをみると不思議と幸福な気分になった。


 洗濯物を全てかごにとり込み、上の道路を見やると、紺色のセーラー服にえんじのリボン、かなでが駆けて来るのが目に入る。かなでは下の小さな庭にいる治に気が付き微笑み、手を振った。

 治も右手を挙げて、返す。


 かなでは道路から折れて小さな祠の横を通って、治の家の庭に向かって降り、急な階段を駆け下りてきた。斜面にへばりつくように建つ、小さく古びた日本家屋が、治の住む家だ。そこへは道路から急な階段を下りて入るのだ。

 そこで、やっぱり、よりにもよってそこで転んだ。治は走り出し、自分の身体をいれ、かなでを受け止めた。

 衝撃と共には庭に倒れこんだ。治は顎を引いて無意識に受身を取って、かなでを守った。


「大丈夫か、カナ」

「ああっ、ごめん。ごめん、治君、やっちゃったー」

「ううん、やっちゃったじゃないだろう。ほれ、立ちな」

 治は恥ずかしいので、かなでを立たそうとせかす。治はかなでを幼い頃から知っているが、お互いに高校生になった今では身体を密着させるのは恥ずかしい。

 治が急いで立ち上がろうとすると、かなではバランスを失ってよろけまた倒れ、さらに抱き合う格好になった。

 治の目の前に、かなでの瞳がある。大きな濃い茶色の瞳「ああ子どもの頃から変わっていない」と治は思った。それとかなで匂い甘いかんきつ系がした。


「どうでもいいから離れてくれ」

「うん、うん、ごめんごめん」かなではゆっくりと立ち上がり、離れ「あら、治君、泥だらけだね」と言った。

「まあ、確かに、カナのせいだろ」と言って治はかなでの頭を軽く叩いた。治は昔からかなでの事をカナと呼ぶ。

 かなでは猫のように目を細め「よくあるところの足がもつれたという奴です」とスカートを払いながら言った。

 治はそれに何も言わず。立ち上がると、かなでに玄関で待つように言い、布巾を持ってきて、かなでの膝を拭かせた。かなでは下駄箱を自分の家のものみたいに開け、ブラシを取り出すと、それでローファーと鞄についていた、泥を飛ばし、布で拭って、下駄箱に納めた。


 かなでをいつもの居間に通し、ニスのはげたテーブルを持って来くると、かなでは古びた籐椅子を持って来て、その横に鞄を置き、座った。

 治は新しいシャツとチノパンに着換え、台所に行き、湯を沸かし、コーヒーを淹れると、イルカの絵柄のカップをだし、角砂糖を三つ置き、もう一つはそのままスターバックスのマグカップに注ぎ、残りは信楽の湯飲みに注いだ。

 かなではこっちに来ると湯のみを持ち、純一郎のいる二階に持っていった。純一郎は治の母方の祖父で、地元の政治家と同じ名前だ。かなでは純一郎を自分の祖父のように慕っている。

 治は父母と別れて純一郎の世話になっている。それは治のわがままであるが、治にはこの横須賀を離れられない理由があった。

 治は椅子に座ると、庭を見ながら、コーヒーを飲んだ。

 かなでが二階から戻ってくると、サーっという音と共に、雨が降り出した。


 ゆったりとした時間が流れている。

「ふってきたね」

「うん、予報だと夕方まで降るらしい」

「髪きったね?」

「ああ、昨日、床屋行ったから」

「スポーツ刈り?」

「うん、今度は三島みたいにするんだ」

「三島?」

「三島由紀夫だよ。彼のリアリズムを僕は学ぶんだ」


 治は物書きを目指しているが、実は何も書いた事はない。でも、いずれは本気で大作を書くんだと思っているのだが。

「あはははっ、なるほどなるほど、今度は三島さんか。『金閣寺』のね。でも、この間までは芥川龍之介の真似をしていたね、でも、治君はジャニーズ系の顔しているからどっちも似合わないけどね」

「そうかな」


 かなでは治の顔を覗き込むと、瞬きをしてこう言った。

「でも、確か三島はゲイじゃなかった?」

「確かに、彼がそうだったという話は知っている。しかし、それは彼の芸術とは関係ない」

「でも、私は私の都合で、治君がそれであってはこまるなあ。それに、私は彼の芸術はやっぱりそれと切り離せないと思うけど」

「いや、それは違うだろう。作品と個人は別さ」

「それは、どうだろうね。彼の感性や言葉への感覚は彼自身の個性から来ていると思うわ」


 かなではいわゆる天然さんだが、時々、脈絡がなく、とんでもない事を云うし、毒も吐く、それにのんびりとした口調だが、頭の回転は速く、口ではとても敵わない。

「まあね。いつも君はそういうけど、僕はそうは思わない」

「そう、治君がそういうのなら別にいいけどね。でも、リアリズムって治君の口癖だけど、一体なんなの?ひょっとして遅れて発症した中二病?」

「失敬な、僕の見ているリアルのことさ」

「うーん?まあ、いいわ。でも、言って置くけど、三島も芥川もリアリズムの作家じゃないよね」

「それは分っている。リアリズムは僕の想像力のことであり、ビジョンなんだ」

「まあ、その前に治君はボディビルでもやった方がいいわ。三島みたいになるんなら筋肉もつけなきゃねー」とかなでは笑った。


***


 雨が強くなった。治は立ち上がって戸を閉め、蛍光灯を点けた。湿っぽい匂いがしていた。

 かなではリモコンのボタンを押してテレビを点けた。ワイドショーをやっている。

「治君、今日、学校は行った?」とかなでが思い出したように言った。

「もちろん行きましたよ」


 その瞬間、治はリモコンでかなり強く叩かれた。角で。目の後ろに星が瞬き、激しい痛みが襲う。

「嘘はだめだよ治君、君のクラスには理子がいるんだからね」

 理子はかなでの友人で、治と同じ学校で同級生だ。だから、少なくとも学校の事で隠し事は難しいのだ。


「そうだよな。理子からわかるもんな」

「治君はどうして学校行かないの?」

「つまらないから、二年生になったばかりで、今日は5月の21日だぜ、出席日数も足りているからね」と治は言った。

「私はね。治君が心配なんだよ。確かに足りていれば進級は出来るかもだけど、進学や就職はどうするの?」

「別に、そんなの・・・・・・おまえには」治はそこから先が言えなかった。


 関係なくは無い。関係なくはないのだ。治にはかなでにそれを言えない理由があったのだ。

「まあ、明日は行くよ」

「うん、行かなきゃだめだよ。ホントは迎えに来たい位だけど」

「それはやめてくれ。それにカナは横浜まで行っているだろ?家まで来させたら悪いよ」

「私は部活やってないから、少し早く起きれば来れるよ」


 治は立ち上がると「いや、それはさすがにな。あ、そろそろ、もう遅いから、駅まで送っていくよ」とかなでに言った。

 時計が五時をまわっていた。


「そうね、もうそんな時間?」

 治は二階の純一郎の部屋に行き、かなでを送っていくことを伝えた。

 二人は玄関を出て、急な階段を上がり、道路に出る。

 雨はあがり、夕闇が迫っていた。

 かなでと歩く。


***


 大きな崖の縁に来ると、横須賀の基地が見えた。海と山の間の狭い平地にぎっしりと家が立ち並んでいる。手前にある公園の向こう側の湾に、潜水艦が2艘並んで泊まっていた。

「そういや、お前の親父さんどうしている?」

「お父さん?うん、元気、時々会うよ」

「今も船に乗っているの?」

「もう乗っていない。今は基地にいると思う」


 かなでの父親は軍人だ。アメリカ人のトーマス・グレン少佐という。しかし、かなでは母親似で、そんな感じは全くしない。親しい友人でもかなでが自分から言わなければ分からないほどだ。それに、名前も今野かなでと言う名前だ。


 かなでの両親は治とかなでが小学生の時に離婚したが、今でも時々、会っている。その場にいたこともあるが、すごく仲がよく見えた。治は大人は不思議だと感じた。それほど仲が良いのなら、別に別れたりしなければ良いのにと。それをかなでに言った事があるが、かなでは困ったような笑顔を浮かべて仕方がないんだよと言うのだ。

 階段を降り、京浜急行の汐入の駅へと向かう。かなでは浦賀に住んでいるので、電車で帰るのだ。


 酒屋のヒデヨシの前を通る。もう夕方なので、チューハイを立ち飲みに来た米兵たちで混み合っている。彼等は路上で乾杯をして、陽気で楽しそうだった。

 駅の下をくぐりコンビニの横を左に折れて、改札までかなでを送った。

「治君、ちょっとでいいから家に来ない。おいしい冷凍食品をごちそうするよ」

「冷凍食品ね。まあ、腹が減っていればなんでもおいしいけどね」


 かなでが家に誘ってきた。最近、よくかなではこう事をいう。

 治はそれがもちろん微妙な誘いであることは分かっていた。治はかなでに向かって微笑むと「いや、まあ止めておこう。明日は学校行くし、予習の一つでもしておきたい」と断った。一瞬、かなでがすごく悲しそうな表情をした。治は申し訳ないと思う。


 治はかなでの肩をたたくと行かせた。

 別れ際、治はかなでを見た。かなでは美しい少女だった。黒く長い髪に、均整のとれた手足、つつましくない胸、それに、印象的な濃い茶色の大きな目、治はそれを見ていると、不思議に落ち着かない気持ちを感じた。


***


 実は治とかなでは付き合ってもいないのだ。

 もちろんそんな色事の関係もない。

 良くわからない友だち以上、恋人未満?の宙ぶらりんの関係といえるだろうか。

 だが、回りはそう思っていないようだ。

 友人たちは治とかなでは交際していて、そういう関係にあると思っているようだった。


 おとといもこんな事があった。

 横須賀中央駅の前で、学校での知り合いに「お前、フェリスのボインちゃんと付き合っているだろ」といきなり出会いがしらに聞かれた。

 そいつは同じクラスの不良を気どったやつで、時々、治に話しかけてくるやつだった。

 そいつも治も学校をよくサボるので、その線で勝手に親近感を持たれているようなのだ。


「ボインちゃん?」治は聞き返した。

「ええと、あの子、よくお前と一緒にいる子だよ。いやみんな俺の仲間、すげー胸だって、噂しているんだよ。それにむちゃくちゃ可愛い子だろう。有名なんだよ。お前、あの子とやっているんだろう?」


 治はかなでの事を言われている事に気がついた。治は無性に腹が立った。下品で、貧困極まる表現で自分の友だちが言われている事に、下卑た好奇心に、言葉が出ないほど怒りを感じた。

「いや、付き合ってないよ」と治は言ったが、そいつは信じなかった。

「そう、にらむなよ。教えろよ」と食い下がる。

「だから、別にあいつは・・・・・・」と言いかけ、あいつは何なのかと治は思った。


 あまりにしつこかったので、そう思うのならそう思えと「まあまあだよ」と治は自棄になって言ってしまった。

 するとそいつは満足したのか、いいなと羨ましがって、治の横腹を軽く殴ると去っていった。

「俺は大馬鹿者だ」と治は思った。

 治はかなでのことを深く愛していた。しかし、その想いを伝える事は出来なかったし、想いを受け取る気もなかった。

 それには訳があった。


 治はある女の子を今でも強く想っていた。それは、西遥という子だ。

 遥は今から、三年前に、居なくなっていた。失踪したのだ。

 かなでは治の心に遥が居る事を知っていた。かなでもまた、遥と友だちだったし、三人は物心がついた時からお互いを知っていた。


 治は過去と現在の間にあって、戻る事も進む事も出来なくなっていた。

 治が横須賀を離れられない理由もそこにある。

 治はかなでを傷つけていると自分を責めた。


***


 治は明日の食料を調達するために、歩道橋を渡って向かいにあるショッピグセンターに向かった。

「よし、俺は明日、本気で学校へ行く」とつぶやいてみた。

 もちろんかなでを心配させたくないと思うからである。

 治は店内のスーパーマーケットで弁当と菓子パンを買った。それから、店内にある本屋で週間のマンガを立ち読みして、外に出るとすっかりと暗くなっていた。


***


 春の若葉の匂いがした。

 治は鼻歌を歌い。ウェルニー公園方へ歩いた。横須賀駅まで行って、帰ろうと思ったのだ。

 横目で見ると、公園の水面に大きな満月が浮かんでいた。


 さざなみ一つ無い。まるで、真っ黒な墨汁を張ったような水面に、浮かんだ月は白く、美しかった。

 治は足を止めて、思わずその月に見入ってしまった。月の光は治の心の奥を撫でるようにくすぐった。

 小さな鐘を鳴らす音が微かに聞こえた。僧侶がいるのだろうと思った。しかし、治はその鐘の音にどういう訳か動く事ができなくなった。金縛りを受けたように。

 水面の月が、色を変え始めた。白い色から、青みを増し、紫へと変わり、赤くなっていった。

 振り返って、治は空にある月を見た。そこには何の変哲も無いいつもの月が浮かんでいた。


 そして公園にいる人々を見た。

 まだ七時前で、ジョギングをする人、犬を散歩させる人など、歩いて駅に向かう人などが、幾人もいた。みな各々の向かう方向へと歩いている。いつもの情景だった。

 しかし、誰一人、水面の異変に気がつくものはいなかった。

 治は紅い月の異様さに、思わずそこから離れようとしたが、どうやっても地に足が釘で打ちつけられたように動けなかった。治は強い恐怖を感じた。


 紅い月は、そのまま、水面全体に広がると、無数に分裂し、ドロドロと形を歪め水に溶け一瞬光ると、消えた。治はもう一度、頭上を見上げ、月を見たが、月に変化は無かった。そして、水面の月はいつもの普通の月に戻っていた。

 治は思わず顎を右手で触れると、混乱を抱えたまま、歩き始めた。


 治は汐入の駅前にあるベンチに腰を下ろした。そして、コンビニでスポーツドリンクを買うと飲んだ。

「アレは何だ?」と治は廻りに聞こえないように、小さく独り言を言った。

 心霊現象か?それとも何かの自然現象なのか?治は、脳裏に焼きついたその映像を思い出しながら。先ほどの出来事を整理しようとした。

 幻を見たのかもしれないとも思った。それとも本当に怪異現象なら何か悪い事が自分に降りかかるのではないかとも思った。


 でも、俺にはリアリズムがある。色々な本を読んで培った想像力があると治は思った。治は遥の失踪後、あまりの動揺と悲しみの中で、超越した人間は現実を超現実で乗り越えられると考えるようになった。


 他人から見れば、病気に一歩手前の奇妙な考えだが、治にとってはこのリアリズムと言う言葉は自分を救う魔法の呪文だったのだ。

「リアリズムだ。リアリズム、リアリズム、目の前の事だけ考えろ」治は自分に言い聞かせた。

 そうして、しばらくすると落ちつき、忘れて早く切り替えようと言う気持ちになった。治は残りのスポーツドリンクを一気に飲むとコンビニのゴミ箱に捨て、再び歩き出した。


***


 京浜急行の改札前を通る。電車が出て行ったばかりらしく、混んでいる。治はその人の流れを縫うように歩いた。そして、自分が今日学校をサボっていた事を思い出して、いまさらながら、知り合いか担任の教諭にでも出会ったらやっかいだと思った。下を向きなるべく気配を消して駅の向こうへ行こうと思った。


 改札前を抜け、交差点に立つ、赤信号だ。バスがディーゼルの排ガスを治に吐きかけ、通りすぎて行く。そこで、通りの向こうを見たとき、治は心臓を攫まれるような、感覚を受けた。

 それは通りの向こう側を走る少女を見たからだった。かなでよりもだいぶ低い身長、治とかなでの前から失踪したはずの西遥だった。治はその姿を忘れようも無かった。


 けれども何かの見間違い。他人のそら似だろうと期待するなと思った。それは、遥がかなでと治の前から姿を消してから、幾度と無く、この横須賀の街中で繰り返してきた、些細で、個人的な、いつも哀れな間違いを犯し傷を抉ったからである。


 しかし、バス通りの向こうを茶色のツインテールの髪を揺らしながら走る、少女は、間違いなく西遥だった。西遥は制服を着ていた。治と同じ学校の制服だった。

 信号が変わり、治は向こう側へ渡り、遥を探した。

 治は遥の名を呼ぼうと思ったが、遥はどこに行ったのか見当たらなかった。治は走り出した。ここで見失ったら二度と合えないと思った。

 しかし、遥はどこにもいなかった。治は気が変になるような焦りを感じた。


 バス通りから、もしかしたら逸見の方へ行ったのかもしれないと思った。遥の家があった方角だ。でも、すでに遥の家族はそこにはいない。遥の祖母が独りで暮らしているだけだ。

 通りを右に折れ、山間の、谷間を進む、両脇には家がへばりつくように建っている。

 このあたりは迷路みたいになっているのだ。


 坂を上りきると、両側にトンネルがある踏み切りに出た。その先に遥が歩いて行くのが見えた。だが、すでに遮断機が閉まり、遥は向こうにいた。

 治は遮断機をくぐろうとした。しかし、電車がそこに来ていて、警笛を激しく鳴らされた。

 治は聞こえて欲しいとあらん力をこめて「遥あああ」と叫んだ。

 赤い快特電車が轟音をたて通り過ぎた。


 遮断機があがり、治は、遥を探すが、遥は消えたようにいなくなっていた。

 それから治は遥の家にもいってみたが、そこには新しい家が建っていた。

 治はしばらくあたりをぐるぐると歩き回ったが、遥はどこに行ったのかわからなかった。

 さっきの踏切まで戻ってくると、治は電話を取り出し、このことをかなでに告げなければと思った。

 しかし、どう告げれば言いのだろう。治は歩きながら思った。


 遥にすごく似た女の子にあった。

 遥がいた。遥が帰ってきた。

 治は電話を取り出したまま、どう説明しようと思った。

 だが、治はあまりに混乱していたし、どうして良いのか正直わからなかった。


 結局、諦め治は電話をチノパンのポケットへ突っ込んだ。

 そして、もと来た道を戻った。


 治は遥の姿を思い浮かべ、歩いた。

 もうリアリズムという呪文を唱える事は忘れていた。

 頭上には煌々と満月が昇り、白く柔らかな光をはなっていた。


 つづく




久々、頑張って書きました。四回位の連載になると思います。よろしくお願いします。


訂正 5月の17日→21日

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