『また明日』
「ね、知ってる?」
後ろの席に座る俺へ振り向き、『彼女』は尋ねた。
いきなり何を言い出すんだ、この女は。
「『さるすべり』って、こう書くんだよ」
彼女は俺のノートの隅に『百日紅』と書いた。
「なんか格好良くない?」
そう言って悪戯っぽく笑った。
俺の大好きな、彼女の笑顔。純粋で、しかし何処か妖美なその微笑み。
開け放した窓から風が吹き込む。
それは俺と彼女の髪をゆらし、他に誰も居ない教室の中を虚しくかけていった。
外からは部活をしている奴らの声。
夕日が眩しい。
「そろそろ帰らねぇ?」
俺が言うと、「ん、良いよ」と立ち上がって、彼女は帰る仕度を始めた。
「じゃ、ね」帰る道が反対なので、俺らは校門で別れる。
前に家まで送ろうとした事があるが、彼女の「悪いよ」って言う猛反対によってやめさせられた。
それ以来俺らが一緒に帰るのは、ここまで。
「じゃあな、また明日」
『さよなら』なんて言わない、言えない。もうずっと会えなくなる気がするから。
だから、『また明日』なんて言葉を使うんだ。
―また明日、会えるように。明日もあの笑顔が見れるように。
記念すべき第一作目は夏休みの課題からの現実逃避という駄目人間っぷり。(爆)
『百日紅』、好きです。