七十九話・偉大なる旅
ミナカムイ空港は大変な人出だ。
タラップを降りる一平を認めるや、万に及ぶ出迎えが一斉に跪く。
「これをもって、ササキ・イッペイは、甦りのラーマ羅門の一平、ゴンガ・ラーマ・ラモン・イッペイよ」
リリトが芝居けたっぷりに膝を折って道を譲った。
弥勒会の歓迎晩餐会は、作戦会議の様相を帯びている。
ミナカムイ領区責任者のヨシワライは乾杯も早々に、ヨミシャセ自由独立戦線からゴンガ・ラーマの電映像討論番組招待についての論題を取り上げた。
「全世界放映の生番組出場要請ときた。これは罠以外の何物でもない!メディアのチョサンヒと、亡国のハンカ教は権謀術策と強大な宣伝力を有している。
噂のゴンガ・ラーマに赤っ恥をかかせ、ムセイオン大学院公国とミロクを排除し、利権を守ろうとしている」
「飛んで火に入る夏の虫よ」ボッチョは笑った。
生番組出演は、四日後の夜の高視聴率時間帯となる。
… … … …
ヨミシャセの首都であるムサシは、内乱と外国からの絶え間ないテロに荒廃してはいたが、直接の核攻撃を免れたため、最盛期の二千万には及ばずとも、今だ四百万の人口を有する世界最大の大都市だ。
ムサシ湾の埋め立て地に屹立する白亜のチョサンヒ放送局の威容は他を圧していた。
出演者の一平とヨシワライ、観客席に控えるリリト、イムヨウのスーパーシックス、ボッチョ・マコ等で構成されるチームゴンガは周到な準備のもと、颯爽と御披露目の舞台に乗り込んだ。
ボッチョが耳打ちする。
「彼等は大衆が大局とかポリシーには興味が無く、下世話な噂話にしか興味が無いのを知っています。で、最初は身近な揚げ足取りから始まりますので、逆に奴等の衝かれたくない秘密等を暴いてやりましょう」
丹田に息を沈めると、一平は別人格とも言える超越的な自らが、ゆっくりと入り込んで来るのを感じた。
「側らに座るサクヌマ・イウカ女史は愛国者で、中々の論客です」
「対する三人は?」
「オルマヤ人プロデューサーで辣腕のスックピ・トートン、在ヨミシャセ・キハン人でムサシ大学の政治学教授のヒャン・キョンボ、ハンカ教のムサシ支部長のトイケ・スクケソで、司会のタチクラ同様ヨミシャセのVIPで、何れも裏で繋がっている統一連合の太鼓持ち」
(ダールラハアマ・ムング、ダールラハアマ・ムング)