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六十九話
朝霧棚引く早朝、一行はアテンの園に別れを告げ、再びトンネルに入った。
そして、一昼夜の時間を労して、最終分岐点の広い空洞に辿り着く。
ここからテラへの出口は六ヶ所あり、一行はヨミシャセのミナカムイ出口を選択する。
目的地である大図書館大学院に最も近いのは、ヒマラヤ・カイラス山の麓に開く梟の森にある洞窟だが、水晶髑髏は強い拒否反応を示した。
「カイラスは、骸骨様が御気に召さないようや」
一平は笑った。「まるで、水晶に意思があるみたいっすね」
「いや、ほんまに水晶髑髏は自己判断機能を持つ高性能な情報伝達機器なんや」
額中央が突き抜けるように痛み、内なる声が湧き起こった。
(ダールラハアマ・ムング、ダールラハアマ・ムング……)
光苔に覆われた巨大な鍾乳洞を抜けると、暗黒の彼方に陽光が点となって現れた。
「テラの光ヨ!」