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三十六話・テラの歴史

 

 原種(桃色)人が,海洋沈没のアトランティスからの移住後、エジプト・ヒッタイト支配のエクソダス(大脱出)。

 カナンで分派し、その大半がアフガン、タリム、チベット高原を越えアムール河、中原を経て、分裂と融合(混血)を繰り返しながら極東半島突端のカヤに至る。

 やがて半島から、世界の雛形と言われる行き止まりの列島にヨミシャセを立ち上げる。


 一方、ウラルのヤペテ人種(白色アーリア)は黄色騎馬民族に追われ、民族大移動のうねりがエウロパ、カルタゴ諸国と地中海沿岸の国々を襲った。


 そして、東西世界は混血シャッフルされ、奴隷制度を基盤に近代工業化(産業革命)を収め、帝国主義の幕開けとなる。

 特に、ガイアのアメリカに当たる赤色人オルマヤ国群は、南北オルマヤ戦争を経て統合され、アフリカ人奴隷狩りを国策として推し進めた。


 既得権を持つ植民地主義の赤色国家群に対して、遅れて帝国主義に加わった白人国・ゲルマーナ、カルタゴの後裔チェグレブ連合国、桃人・ヨミシャセ帝国、それらが同盟による新旧世界規模の闘争。


 ゲルマーナはアーリア人の血の純粋性を御旗に、超人の支配する白色ヤペテ大帝国を夢みる。

 ヨミシャセは唯物・金権思想に対する精神文化の挑戦を掲げ、人種平等、奴隷解放、植民地解放のスローガンを。

 チェグレブはカルタゴ・フェニキア大帝国の再興を。

 それは同床異夢の共同戦だった。


 ゲルマーナはエウロパを制圧し、全域から有色人(特に赤色人)の強制排除に踏み切り、理想超人国家の礎としてゲルマニア連邦帝国(白色アーリア連邦)の宣言を発する。

 チェグレブはバルカン半島から中東、アフリカに版図を広めてハダシュト・フェニキア帝国と名を改める。

 ヨミシャセは人種平等と植民地解放を旗印に、黄人の大国・ヤンゴルモア、唯物主義を掲げるチャガタイ連邦との戦いに勝利し、エイジア全域を独立解放し、支配権を確立した。

 そして、皇の正統種として、トーラのラッサ・リンポー宮の法統を受け継ぎ、アレキサンドリアとペルガモンの粘度板書物を含む膨大な図書を買収し、ラッサへ移す。

 敷地八十万坪、建坪数万坪に及ぶ世界最大の智の集積所、スメラ・ムセイオン図書館大学院を設立。


 しかしながら、時は新帝国主義同盟に利あらず、オルマヤ連邦共和国、大ケルト帝国及びチャガタイ連邦による反攻は功を奏し始めるのだ。


 ゲルマーナのチャガタイ攻略の大敗戦を皮切りに、パルミラック大海戦でオルマヤは、ヨミシャセ連合艦隊を叩きのめして戦局の大勢を決した。


 そして、ハダシュトの統一戦線離脱を経て、ゲルマーナ、次いでヨミシャセの無条件降伏となる。


 戦いの終局にオルマヤはライバル国のチャガタイに対する威嚇・牽制のために、実験段階にあった核爆弾を降伏寸前のヨミシャセに急遽六発実験使用し、市民百二十万の虐殺を行う。


 さらに陰惨を極めたのはヨミシャセの戦後処理で、占領政策の便宜上、国家統制の象徴としての皇王スメラギをかろうじて残してはいたが、報復裁判による公開処刑が数年間に亘って荒れ狂った。


 ヨミシャセの精神文化の象徴であったトーラのスメラ・ムセイオン図書館は、連合軍管理の名に接収され、以後、トーラ・ムセイオン大図書館大学院公国と銘打って再発進することとなる。



 ヨミシャセにおいては、その文化伝統を抹殺すべく、歴史の全否定・改竄のみならず金権主義と唯物思想に誘導するように推し進められていた。

 ヨミシャセ劣化プロジェクトの一環として、フリーセックス、遊戯、刹那的快楽、利己主義、反自然主義、そして愛国心放棄等を煽りあげる教育が施行された。

 無抵抗憲法(永久武力放棄)、警察権放棄、階級別権威制度の推進、細分化された学校受験制度、青少年少女犯罪刑罰免除、ジェンダーフリーを掲げた幼児からの無制限性教育、歴史教育の否定や伝統思想の放棄等々。


 そして、国際連合軍の旗の下、主従逆転のキハン官民国にヨミシャセの警察権を委託することとなった。

 嘗てヤンゴルモアの属国であったキハン官民国は、ヤンゴルモアの国教であるプイ教を信奉しており、絶対的上下関係の官尊民卑、血族重視、男尊女卑、宗教的に固定化されて細分化された規範や習慣を宗としていた。


 ヨミシャセにもキハンに迎合する運動として、光の家、仏教、クリスチャニズムとプイの混合統一を教義とする宗教団体『統一原理ハンカ教会』が設立され、国教にするべく教育、情宣が進められる。


 ところが、これらの指導に反比例するかに、無制限自由(特に無制限相互情報完全公開)、と戦前から引き継がれた技術レベルの高さと合いまって、狂い咲きとも言える経済的発展復興を遂げるのだ。


 ヨミシャセ最大の首都湾ムサシに増設された面積三万ヘクタール、居住人口八百万を超える奇跡の人工首都・新島サイバー・テクノポリス。しかも、中心をなすのは想像を絶する巨大な高層ビルが一つの都市となる縦型電脳都市で、地上一千百メートル、百九十六階建て、ムセイオン大図書館大学院を凌駕する。

 それは、まさに天まで届くバベルの塔である。



 世界は金権至上主義のオルマヤ同盟軍と、唯物官僚主義を掲げるチャガタイ連邦同盟軍に移行していた。

 そして、八十年に及ぶ冷戦の末、唯物官僚国家チャガタイ連邦の経済破綻による崩壊。

 テラは超大国・オルマヤが覇権のパックス・オルマーヤと成る。



 時は流れ、テラの耳目を破るキハン官民国と統一原理ハンカ協会の共同発表が行われた。


 相次ぐ失政と天災により、国土資源の権利売却、麻薬、贋札、臓器売買、誘拐、人身売買、闇の兵器売買等で生計を得る破綻国家、その上、回復不可の自然破壊・沙漠化に陥っていたキハン。

 飢餓窮余の策として、それまで経済破綻を肩代わりしていた経済繁栄国・ヨミシャセの主要都市を国際連合軍の支配下の元、キハン官民国への編入を宣言したのだ。



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