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三十五話・閑話(浪江駅にて)

  

 構内アナウンスが響いた。 

 『――浪江!浪江!ただ今より上り線上野行きと待ち合わせのため、二十分間浪江駅に停車致します!』


 牧野は語りを一旦中断する。


 「加奈子や君のお祖母ちゃんのユメさんは、ここの旧制浪江女学校(浪江高校の前身)に通っていたんや」

 牧野は懐かしそうだ。


 「一平君のお母さんは浪江の何処に居ったの?」

 「大堀の里、と聞いてますが」

 「おお!椿が茂り清流の流れる桃源郷。陶器(相馬大堀焼き)の産地で、羅門兄や可奈子との思い出の場所や」

 一頻り、牧野は浪江の思い出を話した。


 「そうそう、浪江は鮭が獲れるのや。浪江にある請戸川は鮭の登る南限やないかな。秋口、登流する鮭を眺めながら食べる鮭料理は風情がある」


 「生唾っすね」

 「シンプルに獲りたてのイクラに紅葉卸醤油をぶっかけて、炊き立ての飯とかっ込むのが一番やな。その上、氷頭の三杯酢があれば申し分なしや」


 「高尚なお話中に何ですが、お話しを戻して、テラとガイアについてお伺いしたいわ。お祖父様の仰る微妙なズレと言うのは?」

 ヒロコには、懐古趣味や、食い物風物には関心が無い。


 「歴史的に分岐点になったのは、ローマとカルタゴの第二次ポエニ戦争や」

 「ハンニバルの戦いですね」


 「テラではカルタゴがローマを制圧する」


 「じゃあ、ローマがカルタゴのように滅びたんですか?」

 「いや、カルタゴはローマほど苛烈でなかったので、個性的な植民地として生き残った」

 「ローマが地中海の覇者に成らないとすると、以後の世界は如何成っちゃうんだろう…?」


 「フェニキアの後継者・海洋民族カルタゴの中東・ヨーロッパ支配は、単に歴史の中でローマの代わりと言ったことだけやないんや。ガイアにおけるカルタゴの抹消された歴史が正道となり、以後ローマン・センチュリーが広域なフェニキアン・センチュリーに取って代わる」


 「カルタゴの抹消された歴史?」

 「消え去ったカルタゴ大図書館と、アレキサンドリア大図書館の記録や」

 「と、言うと?」

 「太陽エネルギーの暴発から海底に沈んだアトランティス。取り分けアトランティス(アス・ガルト)は赤色人を自認するフェニキア人・カルタゴ(カルト・ハダシュト、テュロス)のルーツであり、同祖であるネイティヴ・アメリカンの国々の歴史でもあるんよ」


 「アトランティスですか?」

 「アトランティスの避難民と古代セム族が混じったと言われるレバノンのカナン人がフェニキア人の主な祖先らしい」


 「カルタゴはアメリカを知ってたんですか?」

 「知っていたも、何も。沈んだ大陸をルーツとする同色人であったアメリカの国々は、広域海洋国家・カルト・ハダシュト(カルタゴ)における貿易のお得意さんであり、カルタゴ人公国のハンノを中心に沢山のフェニキア人がアメリカに住みついておった。

 我らが地球ガイアではポエニ後、カルタゴと言う最大の情報拠点を失ったアメリカ大陸とユーラシアやアフリカとの交流は天変地異(巨大隕石のアメリカ直撃)と、互いに内向きな事情で途絶してしまう。そして、アレキサンドリアやムセイオンの図書館の焼失と地盤沈下で、完全に歴史からも消え失せてしまったのや」


 牧野は話を引き戻した。

 「以後テラでは、旧大陸には恰もガイアの新大陸のように、アフリカやヨーロッパに赤人たちが移住して来るようになった」

 「何故ローマが敗れたのですか?」一平が質問する。


 「神人の干渉や」

 「ハンニバルの遠征が勝利するように?」

 「違う、違う。全くの逆で、遠征が失敗するようにカルタゴ本国がハンニバルを支援しないように工作したのや」

 「それは……?」

 「商人・官僚文化のカルタゴに目先の儲け話や面子をちらつかせ、ハンニバルに対する嫉妬を煽った。捻じ曲げられたのはテラではなく、我々ガイアの方や」


 「正統じゃ無いのは我々の方だと?」

 「歴史に正統云々はナンセンスやが、テラの歴史が我らガイアの歴史に先行するようになる」

 「歴史の先行って?」

 「テラで起きることはガイアでも起きる……」


 「と言うことは、……テラを知れば、未来予見も出来る?」

 「霊界で起きることは現世でも起きる、言うのは満更の出鱈目やない」


 ヒロコの目が輝く。「じゃあ、預言史としても、是非ともテラの歴史を知りたいわ」


 牧野はテラの近代までの歴史の変遷を掻い摘んで語る。



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