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三十四話・創世

   

 遥かなる昔、神人が火星と地球に降り立った。 

 目的は有用鉱物資源(特に有害な宇宙線から有機生命惑星をシールドするのに必要不可欠な金)の採掘だった。


 神人にとって、緑なす豊かな火星と地球は移住予定地として検討されていたが、当初は獄囚星として用いられた。


 囚役である地下深くに入り込んでの発掘作業は過酷極まりなく、我々は伝えられる神話に残された円筒印文にその様子を垣間見る。



 人間のように、神々が仕事を負って

 その労苦に耐えた

 神々の骨折りは、大きかった

 仕事は厳しく激しかった

 苦痛が、多くあった



 苦役の神々の反乱。

 それは地球から火星、火星からヒュウマノイド支配の宇宙全域に及ぶ。


 しかして、神は苦役からの解放と労働力確保のため、亜神類つまり人類の創造に踏み切ったのだ。

 類人猿に労働作業用知能を付加するため、ヒュウマノイド(神人)のDNA混入操作が進められる。

 そして、遂には神々に相似の外見と知能を備えることになり、人類は作業用家畜から奴隷にと改良された。


 更にその上、錬金術の確立が、採掘作業を過去のものにしてしまう。


 やがて、神々の完全な労働放棄と人類の神への奉仕、つまりは搾取形態へ移行する。

 人類が自己増殖(セックスによる繁殖)システムへと手が離れていくと、DNA操作は趣味的嗜好を帯びて行った。



 地軸が太陽に対して垂直で、沈むことない太陽は地平線にリングを描きながら移動する。

 大気は濃密、気候は常に温和で、暖かく、重力が軽く、生命に満ち溢れていた。


 想念体は物の快楽に囚われ、原種人(桃色人)に加えて、四色人種の再現。

 理想を具現化した夢と幻想の世界へ次々と放射する。

 同時に従順型人類ネアンデルタールタイプの他、巨人や小人、人魚、ハービー、ケンタウロス等、種々様々な妖精と妖怪、動物や昆虫とのキマイラ、巨獣や不思議生命体が我が世の春を謳歌していた。


 神と人類は近縁ではあったが、依然として異種であり、馬と驢馬のミックスの騾馬、山羊と羊のガ―プ、獅子と虎の子供のライガーのごとく、F1半神半人の混血は生まれたが、それ以上の繁殖は不可だった。


 しかしながら、地球適合のための便宜的にベースとされた猿類の遺伝部分子の排除が行われると、禁忌とされていた、神と人間の混血の子孫継続体が創出される。

 不老不死の神々と、有限な命の人間が綾なす伝説の物語が天体の事象と共に神話となった。 


 人間の直接統治者は、あくまで有限の命を課せられていたが、神に近い遺伝子を持つ皇族が政(祭)を司った。


 スメラギは、指定の遺伝子保有体と女神イアンナ(イシュタル)との間に産まれる男子である。

 皇位を引き継ぐ際には、不老不死の生母である女神と短命の実子は婚姻(生殖)を結ばねばならなかった。


 母神は世代を越え、繰り返し、神の家(神殿)で己が息子の皇と交わり、次期の皇を生み続けた。


 日本の皇位継承の認証儀式として、大嘗蔡における皇位継承皇子の寝床へ、女神である天照大神が天降る真床追衾(御床入り式)は、残された大古の記憶であろうか。



 神火による人類清浄化。


 人類が神々を凌駕し、頸木を脱して解放と自由を主張した時、神人と竜人は結託して人類の文化を破壊し尽くす。


 天まで届く巨大塔を打建て、無数のビルが乱立する繁栄を誇った偉大な都市群は、飴細工のように高熱でドロドロに溶けて廃墟と化した。


 神々は生き残った人類に、忠誠心を見失わないよう割礼の印を強要し、崇拝・奉仕の隷属遺伝因子を命の樹(DNA)に刻み込む。

 そして、人種間のコミュニケーションを断つべく、共通神聖遺伝言語・DNAプロトアースルを禁止し、言葉を分けた。



 創造の時は流れ、銀河系全域に大異変があった。

 大いなる意思がもたらす空前絶後の磁気嵐!

 太陽の伴星にして母なる木星が、銀河を乱れ飛ぶ流星群の直撃を受けた。


 流星の凄まじい一撃が星中にめり込むや、木星における偉大なる子宮口、太陽系惑星最大の超巨大火山が爆発噴火して、縞目の大赤斑から燃え盛る溶岩・巨大彗星を弾き出した。


 巨大な溶岩は吹き出す炎を眩い黄金色の角状に振りかざして、縦横無尽に惑星とニアミス・衝突を繰り返し暴走する。

 灼熱の火球は火星を掠めて濃密な大気と水分の大半を奪い取り、緑なす命の星を文明ごと灰燼に帰し、乾いた不毛の地に貶めた。


 周回の猛威は休むことなく、太陽系第五惑星軌道上の惑星・エデンを猛り狂う牡牛の黄金角に掛け、粉々の星屑に粉砕する。

 第九惑星軌道は直角に変位し、神人と竜人の住める第十惑星は巨大な楕円となって闇に潜める。

 狂える暴星の舞踏は第二惑星軌道の惑星をピンボールのように第三惑星地球の衛星軌道に弾き飛ばし、やがては自らがその第二惑星として長楕円の彗星から次第にテティウス(ボーデ)の惑星軌道上を回り始めるのだ。


 ビーナスの誕生である。


 鳴動は止むことなく、銀河宇宙全域に強烈な磁気の嵐が吹き荒んだ。

 第二惑星軌道から地球の衛星軌道に嵌まり込んだ、巨大な水の星は、地球に近づき過ぎてロッシュの限界を越え、破れた水風船のごとくその外殻の一部を吹き飛ばし、水の橋を架けるように内包する全ての燃え滾る超熱砂水を地球に注ぎ込み、辛くも衛星として引力と慣性のバランスを保つのだった(当初衛星アルテミス〔月〕は現在の地球との距離の半分にその雄大な姿を誇示していた)。


 地上には天が破れたかに、凄まじい砂交じりの豪雨が地表へ隈なく、絶え間なく降り注いだ。

 地表は水に覆われ、命有るものは天空に漂う神とその眷属、選ばれし何艘かの特殊船の脱出者を残すだけ。


 濃密な雲のシールドを取り払われ、核融合を繰り返す地球は、地殻にたっぷりと水を吸収し、再び地が表に現れた時、地球は二倍大に膨張して、超大陸パンゲニアは引き裂かれ、漂流する。


 天や船に逃れしものと、種の保存のために積み込まれた遺伝種子は再び地に満ち、新たなる神と人類の挑戦が再開された。


 レムリア世界とアスの世界に繰り広げられた神人・竜蛇人と巨人・新人類における闘争と冒険の伝説。

 そして、一連の強烈な磁場と時空の歪みは異なる次元の二つの地球を月ごと太陽あるいは大銀河を挟んで、時として同一の次元に現出した。


 テラとガイア(地球)。

 テラとガイアは元来同一であるが故、当初は全く寸分変わらぬ相似であったが、互いに影響し合い、微妙なズレが生じては同一に補正されて行く。



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