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僕らのオンラインRPG!  作者: 小石 汐
閑話、SS集。
17/25

SS:師匠と弟子。

 もう、この人しかいない、思いました。と言うか、私の目の前に残った人は、その人しかいなかったんです。もう何が何だか分からない状態で、必死に剣を振るっていました。絶対に死ぬと確信していました。けれど、私は生き残りました。今、目の前で凄まじい存在感を放つ人のお陰で。

 きっかけは些細なことでした。学校でこのオンラインゲーム、ロストワールドのウワサを聞いて、リア友と一緒に始めたのです。私が中学校に入学したときに、親戚の方が入学祝として機器となるヘッドギアを送ってくれたので――まぁ主に勉強目的で使えよ、と言われていたんだけれど――ソフトの購入だけで出費は済みました。まだ中学生の私がバーチャルリアリティにフルダイブする(つまり、簡単に言えば、仮想世界に意識と五感を送り込む、みたいな感じ)機器を揃えるのは厳しかったので、非常に助かりました。

 一切触れていなかった、それは埃をかぶっていて、最初は動作するのかですら不安でした。埃をはたいて、電源を繋ぎ、スイッチを入れると、僅かにファンが回る音が聞こえてきて、私は歓喜したのを昨日のことのように思い出すことができます。ロストワールドを始めたときの喜びと言ったら、これから一生忘れることがないでしょう、恐らく。

 そして私と二人のリア友は晴れてロストワールドデビューを果たしました。

 けれど、はっきり言うなら、タイミングが悪かったとしか言いようがありません。もう、それは凄まじく酷いタイミングでした。

 私の左右にいたはずの二人はダンジョンに入った途端、消え去りました。もとい、襲われて、現実世界に帰されてしまったのです。ほんの少し前にプレイヤーキラーは駆逐されたと聞いていたので、安心してダンジョンに向かったのですけれど、私は予想外の事態に、ただただ剣を振るうことしかできませんでした。周りの二人を助ける余裕なんて、全くと言っていいほど無かったのです。

 両手で握り締めた剣の柄は汗で滲み、今にも剣がすっぽ抜けそうでした。また、すっぽ抜けたら、それが私の最後だと思うと冷や汗がだくだくと流れて、更に剣が滑りそうになるのでした。

 それでも私は三人のプレイヤーキラーに対し、奇跡的に延命を成功させていました。襲い掛かる剣を剣で受け流し、魔法が飛んできたら身を捩って躱しました。それでも、相手とのレベル差、人数差は絶望的で体力は確実に削り取られ、なぶり殺しという言葉が頭に浮かびました。

 相手の攻撃が、私の腕や足を掠めるたびに僅かな痛みが走ります。ゲームの世界なのですから、ここまでリアルに再現する必要なんてないじゃないですか、と思わず突っ込みたくもなります。もし剣が胴体に深々と刺さってしまったらと想像すると、私はただがむしゃらに剣を振るい続けることしかできませんでした。

 ただ、一定の痛みを超えるとショック死を防ぐためのセーフティが働いて、痛みを熱に変換するシステムがあると知ったのは、その直後のことでした。それも目の前の人に教わることになります。

 鉄の臭いがあたり一面に漂う、何とも居心地の悪いダンジョンの中で、私は呆然とその背中を見つめていました。腰の辺りに備えられた剣の鞘――しかし、それは二つありました。敵によって武器を選ぶのかと考えました。しかし、彼は両手に剣を握り締めていました。

 二刀流という言葉が頭を過ぎりました。それは私もゲーム開始直後に考えたから、即座にその言葉が思い浮かんだのでしょう。しかし、二刀流には適用される攻撃スキルやアシストスキルが一切無く、そのプレイヤー自身の剣術や技量が問われることになるのです。

 それを知って、私は諦めました。いくら憧れがあるとは言え、この世界に来るまで剣を握ったことなんて皆無な私が――と言うか、現代を生きる大半の人は、もはや剣を握る機会など、あまり無いと思うのですが――そんな複雑な動きを習得できるとは思えなかったからです。

 しかし、目の前のその人はまさに私の理想でした。両手の剣は滑らかに動き、敵の攻撃を受け流しながら華麗に攻撃を叩き込んでいきました。一撃の威力は低いのか、一人当たりにそこそこの時間をかけていましたけれど、それでも三人を相手にして素晴らしい動きだったとしか言いようがありません。だって、複数人から繰り出される攻撃を、一度たりとも受けていなかったのですから。

 二人に挟まれて、両側から攻撃を受けた際も両手の剣でしっかりと受け流しながら、身を安全な位置に捩りながら回避します。それはいかにも無理な動きのようにも見えましたけれど、彼は体勢を崩すことなく、細く切れ長の目で敵を見つめています。その瞳に宿す光は冷たい熱意のような――自分でも矛盾しているのは分かっているのですけれど、何と言うべきか適切な言葉がなかなか見つかりません。

 ともかく、その人は溢れんばかりの熱意を無理やり、その身に抑え込んでいるような、野望を悟られまいと必死に堪えているような、そんな印象を受ける瞳でした。

 そして、その人は一人、また一人と確実に数を減らしていきました。最後に残った一人は背を向け、一目散に逃げ去っていきました。そんな光景、一部始終を私はただ呆然と見つめていました。しかし、この胸に込み上げる熱い想いは何でしょうか? 私はこの感情をどう言い表せば、いいか分かりませんでした。ただただ興奮している、そう言うしかありませんでした。仲間を失った直後だと言うのに、そのことですら綺麗さっぱり忘れ去っていました。

 その人は私に背を向けたまま、剣を鞘に収めて、少しだけ背をすぼめました。

「ふぅ……」

 少し離れている私にも聞こえるほど、その人は大きく息を吐いて、ゆっくりと私の方を振り返ります。もう心臓の鼓動が酷いです。暴れていると言っても過言ではありません。早鐘を打ち続ける心臓に少し痛みを覚えながらも、私はその人から視線を逸らしませんでした。もとい、逸らすことができませんでした。

 褐色肌に眉ほどまで伸びた黒髪、細く切れ長の目は先ほどのような光を宿してはいませんでした。装備は見るからに軽装で、防具らしい防具は胸当てだけでした。今更ですけれど、そんな装備で戦っていたのですか? と冷たい汗が頬を伝います。

 その人は動かない私を見て、少し訝しむように首をかしげてから歩み寄ってきました。そして彼は口を開きます。その低く落ち着いた声色で、私の心臓も少しペースダウンしました。

「大丈夫かい?」

 そう言って、その人は私に手を差し伸べます。しかし、それを握る前に、返事する前に、私の中で渦巻いていた感情が突然、形を成し、口からこぼれたのです。

「……ししょー」

「ん?」

 その人は言葉の意味を理解できなかったようで、小さく声を漏らして首を更に深く傾げました。しかし、次の瞬間、私は自分の気持ちをはっきりと口にすることができました。

「私の師匠になってください!」

 こうして私と師匠は出会ったのでした。


*


 その出会いは本当に素晴らしいもので、私は師匠の下で修練に励みました。最初は必死に教えようとしてくれる師匠だったのですけれど、しばらくすると「俺には教える才能がない」と悲嘆し、あまり教えてくれなくなりました。けれど、私を見捨てるようなことはしませんでした。

「実践から見て学んでくれ。俺ができることは、それぐらいだ」

 そう言って、師匠は剣を両手に獣の群れへと突進するのでした。獣の間をすり抜けて剣を叩き込んでいく師匠の姿は、まるで踊り子のように見えます。舞の優雅さとダンサーのキレを併せ持ち、獣の大群は圧倒的であったはずの数をあっさりと減らしていきました。

 時折、私にも数匹襲い掛かってきますけれど、師匠に鍛えられた私を見くびらないでほしいものです。私も背中にかけた二本の剣を抜くと、相手の勢いを上手に利用してカウンターを叩き込みました。それだけで充分だったようで、敵はそのまま動かなくなりました。

 そして再び師匠の戦闘をじっと観察します。もはや見守るという言葉は適切ではありません。何故なら守る必要性など皆無だからです。それほど師匠は圧倒的な強さを誇っていました。

 やがて、周囲から獣の気配がなくなると、師匠は大きく息を吐いて、剣を片方だけ鞘に納めました。

「お疲れ様です。さすが師匠、お見事……?」

 私が歩み寄ろうとすると、師匠は先ほど剣を納めて空いた手を私の方に突き出しました。手のひらを私に見せ、まるで来るなと言っているようでしたので、そこで足を止めます。

「ボスのお出ましか」

 師匠は私に背中を見せたまま、小さく呟きました。それを聞いて、私の背筋を戦慄が駆け抜けていきます。もしかすると師匠の本気が見れるかもしれない――そう思うと速まる鼓動を抑えることなどできません。ここからは一瞬たりとも目が離せません。

 鞘に納めた剣を再び抜き、師匠は構えます。通路の奥を見つめたまま微動だにしません。あれほど強い人なのに、油断は一切見せませんでした。先ほども雑魚を一蹴した後は気を抜いてもおかしくありません。なのに、師匠はずっと警戒を続けていました。だからこそ、いち早くボスの気配に気づけたのでしょう。さすが師匠です。

「花梨、もうちっと離れてろ」

「あ、はい!」

 そんな状態でも、私のことを気遣ってくれるなんて、本当に凄い。と言うか、一度もこちらを振り返っていないのに、私の立ち居地を把握しているとは思いもしませんでした。

 私は数歩どころか、一気に飛んで師匠をギリギリ見える位置まで退きました。それが未熟な私が師匠にできる唯一のことですから。邪魔にならないように努めることしかできませんから。

 通路の奥に現れたのは、見たこともないモンスターでした。身長は師匠の二倍近くでしょうか。その上、ただ背が高いだけではありませんでした。隆々たる筋肉は、その骨格に搭載できる限界量を軽く突破しているのではないでしょうか。二の腕なんて私の頭二つ分ぐらいありそうでした。太いです、大きいです。鋼のような肉体とは、こういう体のことを言うのでしょう。腹筋は綺麗に六つに割れ、その上に突き出す大胸筋が凄まじいです。私ごときの攻撃では心臓に届きそうもありませんでした。そして頭を見ると、それはそれは異形でした。山羊さんです。可愛い可愛い山羊さんです。山羊さんがゴリマッチョの肉体を手に入れて、二足歩行を始めたと言えば、適切な説明だと思われます。

 異形はずしんと通路を揺るがしながら、一歩一歩師匠に迫ります。手にした巨大な斧が薄暗い中、僅かに揺らめく松明で照らされ、不気味に光ります。またずしんと一歩踏み込んで、山羊さんは足を止めました。そして斧を師匠に向けて突き出し、静止しました。師匠の攻撃を待っているのでしょうか? 師匠の放つ緊張感と山羊さんの放つ殺気が混ざり合い、周囲を満たしていました。それは私の肌をじりじりと焼くようなプレッシャーをはらみ、気づけば私は一歩後ずさっていました。

 次の瞬間、山羊さんが吼えました。「メェェェ」とは言いませんでした。ぐおおおとダンジョンを揺るがすほどの咆哮に私は両手で耳を塞ぎました。ビリビリと肌に伝わる振動は近距離で受ければ、それが充分に兵器となるのではないかと思うほどでした。

 しかし、師匠は相変わらず剣を構えたまま微動だにしません。あの距離で咆哮を受ければ、それこそ体力を削られかねないはずなのに。

 その次の瞬間、師匠の体がぐらりと揺れました。まさか、と私は息を呑みました。

「し、師匠!?」

 倒れそうになる寸前で、師匠は剣を地に突き刺し、何とか体を支えました。やはり、あの咆哮の影響は免れることができなかったようです。しかし、山羊さんはそんな師匠を前にして、ゆっくりと斧を振り上げました。山羊さんは師匠が回復するまで待つつもりなど無いのでしょう。それを見て、私の体は自然と動いてました。強く地を蹴り、師匠の下まで数歩で駆けつけます。

「師匠、すみません!」

 私は一言断りを入れると、師匠の体を両手でがっちり捕まえ、そのまま強引に投げ飛ばしました。その勢いを利用して私も師匠の横に転がります。すると、先ほどまで私たちがいたところに、斧が振り下ろされて、地面に突き刺さりました。びしりと音を立て、一瞬体が浮くほどの衝撃が走ります。あんな一撃を食らったら、一発でお仕舞いです。額ににじみ出た冷や汗を拭う暇もなく、私は師匠の体を引きずって、山羊さんから距離を取ります。

「し、師匠、大丈夫ですか!?」

「な、何とか……すまん」

 いまだ焦点の定まらない師匠の目を見ていると、どう考えても大丈夫に思えません。仕方ない――この場を切り抜けるには私が戦って、師匠が回復する時間を稼ぐほかないようです。私は師匠を引きずって、山羊さんから距離を取ろうと必死に走りました。しかし、山羊さんは余裕なのか、ゆったりとした足取りで私たちを追ってきます。そのお陰で、山羊さんから師匠を引き離すことに成功した私は、師匠の背中を撫でて言います。

「師匠は、ここで隠れていてください」

「ま、待て、花梨。お前は一人で逃げるんだ。お前のレベルで何とかなるような相手じゃ――」

「分かってます」

 その一言で師匠は、目を大きく見開きました。私はそんな師匠に微笑みかけて、立ち上がります。そして山羊さんを睨み付けます。そして、じっとりと汗を握りこんだ両手で剣を抜きました。もう後には引けないでしょう。山羊さんはゆったりとした足取りを止め、斧を真上に振り上げます。

 躱す、絶対に。受けることは絶対に不可能ですから、私は早めに横に飛びました。真下に振り下ろされた斧が空気を切り裂き、甲高い音が響きました。地面に突き刺さった斧は地面を砕き、足場を不安定なものへと変えましたけれど、私は何とか踏みとどまり、山羊さんのわき腹に二本の剣を同時に薙ぎました。

「っああ!」

 叫びながらの渾身の一撃――しかし、その刃は山羊さんの肉体にかすり傷を負わせることすらままなりませんでした。鋼のような肉体ではなく、まさに鋼の肉体だったようです。金属同士がぶつかり合うような音を奏でて、私の剣は弾かれました。

 私は、やむなく山羊さんの後ろに回りこむようにステップを刻みます。攻撃は失敗したのですけれど、山羊さんは地面に突き刺さった斧を抜いているところで、私は難なく離脱に成功したのでした。

 しかし、これでは活路が見出せません。本当にどうしたものでしょうか? 思わず苦笑が漏れるほどの絶対的な差を感じました。私が山羊さんを倒すには、弾かれようとも攻撃を重ねるしか方法はありません。それに対し、山羊さんは私を一撃で葬り去れることでしょう。そんな分の悪い戦闘はできることなら逃げ出してしまいたいものです。

 私はそっとため息をつきました。その刹那、斧が私の胴体を真っ二つにする軌道で薙がれます。それを飛んで躱しながら顔に一撃放ってみますけれど、やはり硬く、刃が通る気配はありませんでした。

 今すぐ回れ右をして、ダッシュで逃げ出したいです。けれど、私は相変わらず山羊さんと向かい合っています。逃げることなどできるでしょうか、師匠を放っておいて。いえ、私にはできません。身を挺して私を守り続けてくれた師匠だからこそ、私は師匠のために命を捧げることに悔いはありませんでした。

 とは言え、まだ諦めるつもりはありません。最後まで足掻き続けてみせます。

 私には希望の光がありますから。

 師匠があのまま倒れているとは思いませんから。

 両手の剣を一層強く握り締めて、私は山羊さんの動きを待ちます。斧を振らせて隙を作り、少しでも安全なタイミングでダメージを与えるためでした。

 案の定、山羊さんは斧を真上に振り上げます。そこから予測できる軌道は真下に振り下ろすぐらいでしょう。私は斧がぴたりと静止したタイミングで既に山羊さんの側面に回り、剣を連続して振るいます。

 しかし、それはキンと軽い音を立てるばかりで、叩き続ける度に絶望を覚えました。どれだけ剣を一点を狙って振るってみても、傷一つ付かないのです。

 勝てない――思わず呟いてしまいました。しかし、それは次の瞬間には希望の光が射し込み、私の中に芽生えた闇を駆逐します。

「花梨、引け!」

「し、師匠!」

 私の視界には山羊さんの背中に向かって突進する師匠の姿がありました。切れ長の目には強い光を宿し、完全な復活を遂げていました。

「っらああ!!」

 両手の剣を力の限り振り下ろすと、今まで私が傷一つ負わすことができなかった山羊さんを肩口から胸まで大きく斬り裂きました。単純にレベルの差とは言え、やはり師匠は凄い。そのまま流れるように手を動かして、傷口に剣を何度も叩き込んでいきます。胸までだった傷は腹部に到達し、やがて反対側の胴体に達しました。ずるりと山羊さんの体がずれます。

 そう、師匠は目にも留まらぬ凄まじい連続攻撃を重ねることで鋼の肉体を真っ二つにしたのでした。やがて、山羊さんのポリゴンは砕け、ドロップアイテムだけを残し、静寂が訪れました。緊張感が解けたと同時に足からも力が抜け、すとんと腰から地面に落ちてしまいました。

「大丈夫か?」

 そんな私を見て、駆け寄ってくる師匠に頷いて見せながら、微笑みます。最初に語りかけられた言葉とは少し違いましたけれど、今も手を差し伸べてくる師匠の姿は初めて出会ったときと重なったのでした。

「ありがとうございます、師匠」

 私は師匠の手を取って、ゆっくりと立ち上がりました。

「逃げろと言ったろうが? 無事だったから良かったが……まったく、無茶しやがる」

「あの場に、あの状態で師匠が一人残ることも無茶でしょう?」

 そう言うと師匠は渋い顔で、そっぽを向いてしまいました。でも純粋に師匠の気持ちは嬉しいです。いつでも私を守ってくれる、そんな師匠と出会えたことが本当に幸せなことなんだなぁと実感するのでした。


*


 今回のお話に落ちらしい落ちなどございません。ただ、私は師匠のことを自慢したかっただけなのかもしれません。語り部をさせてもらったのに申し訳ない限りですけれど、それが事実なのです。だから言い訳もしません、お怒りの方がいらっしゃいましたら、ただひたすら頭を下げることしかできません。けれど、本当に師匠は凄いのです。

 今回の話のように、たびたび危険に陥ることもあるのですけれど、よくよく話を聞けば、そのようなことは日常茶飯事だったようです。あの時の私は師匠を守るために飛び出しましたけれど、実際は師匠一人でも何とかなったのかもしれません。だから、これからは何かあったら、ちゃんと逃げるよう師匠に怖い顔で迫られ、約束させられました。

 けれど、再びそんな状況に陥ったとき、私は師匠を置いて逃げることができるでしょうか? 答えは言うまでもありませんね。今回の師匠との約束は嘘も方便と言うことになるのでしょう。

 つまり、私と師匠はお互いを守るために、その身を呈してゆくのでしょう。そう考えると、弟子である私を守ってくれる師匠に巡り合えたことを、ただただ感謝するだけなのでした。

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