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最終話 午後三時
午後三時だった。
モールは、
それ以上でも以下でもない。
照明は一定。
空調は一定。
床は冷たくも暖かくもない。
俺と彼女は、
同じ場所に立っている。
動かない。
動けないのではない。
動く必要がない。
出口は、
そこにある。
近い。
使える。
使われない。
空中には、
もう何も浮かばない。
予言も、
制約も、
警告もない。
ただ、
空間だけがある。
俺は、
何かを考えた気がする。
だが、
それは形にならなかった。
彼女の表情も、
変わらない。
恐怖でも、
安堵でもない。
配置された顔だ。
遠くで、
何かが鳴ったような気がした。
だが、
音は届かない。
雑音も、
沈黙も、
区別がつかない。
時間は、
進まない。
止まってもいない。
午後三時は、
午後三時として、
ここにある。
物語は、
続こうとしない。
終わろうともしない。
ただ、
書かれなくなった。
俺と彼女は、
生き残る必要がない。
だから、
何も起こらない。
出口は、
最後まで開いたままだ。
誰も、
使わない。
午後三時は、
終わらない。
《これは、誰も生き残る必要のない話である。》




