銀髪艦長
銀河の戦場は、連星国家スタージアスと超帝国エンペンツォが激突する「赤の星雲」に染まっていた。スタージアス旗艦「ルミナ」の艦橋は、光子砲の閃光とクルーたちの爆発的な熱気で満ちている。
艦長アイリス・ラフィエルは、まるで銀河そのものが形をとったような存在だった。
肩までの銀髪は、夜明け前の静寂を切り取ったかのように淡く輝き、艦橋の照明を受けて星屑のように光を散らす。その髪の一筋が頬にかかるたび、周囲の空気が緊張するほど、彼女の一挙手一投足には「指揮官」としての重みが宿っていた。
制服はスタージアス正規艦長用の礼装――白と深青のコントラストが、清廉と決意を象徴する。肩章の金糸は、過去の戦歴を物語るが、彼女の動きには一片の驕りもない。
腰に軽く添えた白い手袋の指先は、戦場の空気を読む触角のように繊細で、指揮卓に触れれば即座に全艦の命運が動く。
その顔立ちは、まだ若く、あどけなさをわずかに残している。だが、銀色の瞳だけは異様なほどに冷たく、燃えるように明晰だ。
まるで氷と炎を同時に湛えたようなその双眸には、「恐怖を見据える勇気」と「誰よりも先に折れそうな心」の両方が映っていた。
彼女が眉を寄せれば、艦橋全体の空気が締まり、わずかに口角を上げれば、全員の背筋が伸びる。
その小柄な体に宿るのは、権威ではなく――信頼と、圧倒的な覚悟だった。
(史上最年少艦長?もう知るか!吐くな私!ここでゲロ吐いたらげろ吐き艦長になる!)
彼女は心の中で叫びつつ、その完璧な制服姿からは想像もつかない凄まじい気迫で叫んだ。
「敵影、左翼45度!光子砲、船体負荷をブチ抜いて最大出力で撃て!」




