『誠、健康談義の午後』若者は ファジーな誠に笑う
昼下がりの屯所。
稽古を終えた四人が、縁側に腰を下ろして麦茶をすすっていた。
風が心地よく吹き抜け、遠くでは近藤と土方がなにやら真剣に言い合っている。
沖田が、にやりと笑って言った。
「局長たち、また“健康偏差値”の話してるよ」
永倉が吹き出した。
「まだやってんのか! この前、表彰までやったろ」
原田が、団子をかじりながら肩をすくめる。
「“健康こそ誠”とか言ってたな。俺、まだあの点数表、意味がわからねえ」
斎藤は無言で茶をすすり、ぽつりと呟いた。
「“風呂で溺れず九十点”とか、あれは何の基準だ」
「そうそう!」と沖田が笑う。
「僕、あれで一位になったんですよ。“溺れかけたけど誠に快調”って。褒められていいのか悪いのか……」
永倉が笑い転げた。
「局長の基準は“誠っぽいかどうか”だからな! 俺なんか“飲みすぎたが楽しそうで誠”だぞ!」
原田も団子を持った手でうなずいた。
「俺は“稽古中に転んだが元気だから誠”だった」
「もはや何でもありだな」と斎藤。
沖田が少し首を傾げて言う。
「でもさ、局長、ほんとに信じてるんだよー。健康も剣のうち”って」
永倉が腕を組んだ。
「まあ、あの人、そういうとこあるよな。何でも“誠”で括れると思ってる」
「副長が気の毒ですよね」と沖田。
「昨日なんか、“笑顔の少なさマイナス五点”って書いてありました」
「そりゃ副長の偏差値、毎回五十台だわ」
「誠の平均値だな」
四人の笑い声が重なった。
しばらくして、縁側の向こうから近藤の声が聞こえてきた。
「土方! “誠の柔軟体操”も項目に加えようと思うのだが!」
「加えるな! 偏差値はもう廃止だ!」
四人は顔を見合わせ、吹き出した。
「ほら、始まった」
「いつもあの調子だな」
「でもまあ、あの二人が元気だと、屯所も静かじゃなくていいや」
原田が空を見上げる。
「健康こそ誠、か……。
ま、俺らはとりあえず飯食って風呂入って寝れば誠ってことでいいだろ」
「異議なし」と永倉。
「健康偏差値、自己採点八十点ってとこだな」
「僕は九十五点です!」と沖田が笑う。
「なぜだ」
「今日も溺れませんでした!」
斎藤が小さく笑って言った。
「……それは、確かに誠だ」
風が、四人の笑い声をさらっていった。
遠くでまだ、近藤と土方の声が聞こえる。
“誠の湯桶”の音が、どこかでからんと鳴った。
沖田総司,斎藤一 永倉新八 原田左之助、彼らが 身も心も
健康なのは 間違いないように思います^_^
次回もお楽しみ




