誠の点数!ポイ活に勤しむ隊士たち
翌朝、屯所の壁には、隊士全員の「誠点数獲得票」がずらりと貼られた。
各項目ごとに、理由のわからない加点や、納得のいかない減点が並ぶ。
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「なんで俺が“早起きマイナス5”なんだ!」
「副長、俺なんか“間食が誠っぽい”で加点されてます!」
「“風呂の入り方:可”ってどういう評価だよ!」
結果を見た隊士たちは、一斉に文句を言い始めた。
採点はやはりファジーそのもの。
中には「くしゃみが誠すぎる」と書かれて満点を取った者までいる。
「誠すぎるってなんだよ!?」と原田が叫んだ。
近藤は胸を張り、晴れやかに言い放つ。
「健康とは、人それぞれの誠の形である!」
「つまり、評価が適当ってことですねえ」
「誠に柔軟な判断ということだ」
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適当極まりない評価ではあるが、
“誠の湯桶”を目指し、隊士たちは奇妙な競争を始める。
健康月報が始まって十日目。
屯所は、もはや武士の集団とは思えない騒がしさだった。
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■食堂にて
永倉が白米を噛みしめ、顔をしかめていた。
「……副長ォ」
「なんだ」
「三十回数えながら噛むの、地味にツラいんですが」
「健康のためだ。文句言うな」
「いや健康より精神が死にそうなんですよね……
“いーち、にー……”って数えてたら、隣の原田が笑うんですよ」
向こうで原田が腹を抱えて爆笑していた。
「おい永倉。噛むのはいいが声に出して数えるな。恥ずかしいから」
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■風呂場前
土方が斎藤を呼び止める。
「斎藤。昨日、おまえ……風呂で桶を沈めたそうだな」
「……誤解だ。桶が勝手に落ちただけだ」
「溺れかけたと聞いたぞ」
「沈んだのは桶であって、私ではない」
「どちらにせよ−10点だ」
「桶だぞ。生き物でもない。縁に置いたら落ちただけだぞ」
「湯道の掟を守るのが誠だそうだ」
「はー……」
斎藤の表情が限界ギリギリに曇る。
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■食堂・別のテーブル
「なぁ聞いたか? 顔色悪いと減点だってよ……」
「え、今日徹夜したんだけど……」
「おい早く頬つねれ! 血色よくしろ!!」
「おー!」
「くしゃみの点数もあるらしいぞ」
「どうやって鍛えるんだよ!!」
「唐辛子吸えばいいんじゃね?」
「それは拷問!!」
「ふぁっしょーー!!」
「副長! 今のくしゃみ、どうでした!? 誠の響きでした!?」
「見ててください副長! 今日は湯船に頭を沈めても溺れませんから!」
「やめろ」
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その様子を見た近藤は、少年のように目を輝かせた。
「見ろ土方! これだ! これぞ新選組の心の統計だ!」
「……統計って言葉、泣いてますよ」
だが近藤は満足げにうなずく。
「この偏差値をもとに、健康表彰を行う!
上位者には“誠の湯桶”を授与だ!」
平和なのか、カオスなのか。
だが確かに、誠湯桶の力はすごい。
――健康こそ、誠。
こうして誠ポイントの争いは、ついに最終局面へ。
次回――『誠の湯桶の朝』。




