ライブ 2
「取り乱してしまって申し訳ない……」
ポロシャツ姿のご老人は、なんとも申し訳のなさそうな貌をして、深々とわたしたちに頭を下げた。
「もぐちゃんから聞いてはおったのですが……、いやしかし、実にそっくり。生き写しのようで……」
ご老人が、わたしを見ながらそう言った。
「もぐちゃん……って、誰ですか」
わたしが思わず口にした言葉に、
「お母さんの事よ」
と、お母さんが補足した。……えと、つまり、おばあちゃんの事なのね。その、もぐちゃん。
「あなたのお祖母様は、昔、アイドルだったんです」
「は?」
突然過ぎるご老人の言葉に、わたしは思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
「ちょうど、今のあなたくらいの年齢でした」
続けられるご老人の言葉を、わたしは、ただただ呆けた貌で聞くことしかできなかった。
おばあちゃんが、アイドル?
わたしが、生き写し?
一度に発生したいろんな情報を、わたしの脳が理解できていないその隙に、
また、玄関先から、
「ごめんください」
と、いう声が響いた。
呆けた貌で座り込んだままのわたしを尻目に、お母さんが、訪れた客人を応対した。
そこには、なにやらお高そうな黒いスーツをパリッと着込んだ、如何にも「シゴでき」っぽい風貌の、四十絡みな男がいた。
「この度は、ご愁傷様でございます」
男の人は、そう言って頭を下げつつ、胸元から、スッとなにかを差し出した。
お父さんが受け取ったのは、名刺だった。
「わたくし、お母様からの遺言状をお預かりしております。弁護士の古原と申します」
シゴでき男は、もう一度、深々と頭を下げた。




