ルナ&ソレイユ ⑥ 絶体絶命、本命殺の二人 ~ 月も太陽も隠れる日 避けられない 魔の刻が 二人を襲う ~
物語概要)
謎の敵ディザスターから地球を守る、月と太陽の戦士 ルナ&ソレイユ の友情物語
主要キャラ)
ルナ =上月 葵 15歳
月のチカラを託された超能力少女。
(ソレイユと同じ)シェアハウスに住み、同じ学校に通う、夜型の少女。
ルナの超能力)
月のチカラ(重力と月齢)を操り、津波などの天変地異を起こし 敵を駆逐する。
力の使い方を誤れば、人に被害を与えてしまう。それでも構わないと考えている。
ルナの必殺技)
ルナクラッシュ‥‥月の重力を変化させ 地球との距離を変え、天変地異を起こす。
ルナの弱点)
新月の日は、チカラを発揮できない。
ソレイユ =日向 南 15歳
太陽のチカラを託された超能力少女。
(ルナと同じ)シェアハウスに住み、同じ学校に通う、朝型の少女。
ソレイユの超能力)
太陽のチカラ(日差しと黒点活動)を操り、熱波寒波を引き起こし 敵を駆逐する。
力の使い方を誤れば、人にも被害を与える。それは絶対したくないと考えている。
ソレイユの必殺技)
ソーラーシフト‥‥太陽黒点活動を操り、ニュートリノ―量を左右し、敵を倒す。
ソレイユの弱点)
日没後は、チカラを発揮できない。
両者に共通の弱点)
日没後で、しかも新月の時は、ルナもソレイユも、チカラを発揮できない。
その他のキャラ)
星野 司 15歳
古代マヤの旧人類の子孫で、火星の意志に肉体を乗っ取られたエスパー。
謎の敵:ディザスターの使徒。葵と南が通うスクールに 転校して来る。
紺野シュウジ 29歳
葵と南が住むシェアハウス「ラルク」の管理人。
第六話 絶体絶命、本命殺の二人
2063年8月24日、新月の夜が来た。
星野 司は、不気味な古城のテラスから、月が出ていない夜空を
見上げていた。その顔に 勝利を確信した、冷たい笑みが浮かぶ。
「このタイミングなら、奴らは、共にチカラを発揮できない」
彼の言葉に呼応するように、再生&強化された火山獣と雹獣が、
地の底から現れた。司はモンスターに命じた。
「お前たちは先に行け! ルナとソレイユを叩きのめせ!」
二匹を先行させた 司は、自分も 下僕 スコルピオンの背に跨り、
この日本にある “火星開発総合センター” 攻撃に向かった。
✻ ✻ ✻
ルナとソレイユは、火星開発総合センターの近くの平原で、
火山獣と雹獣に対峙していた。
強化された火山獣と雹獣は、とても強かった。二匹の猛攻に、
二人は苦戦した。必殺技を使いたくても、ルナは 新月なので、
ソレイユは 日没後なので、チカラが 湧いてこない。
「最悪っ! チカラが、まるで 発揮できない!!」
ルナの顔に、見せたことがない焦りが浮かぶ。彼女の冷徹な
頭脳は、この絶望的状況の深刻さを、正確に受け止めた。
「まだ負けてない! チカラを合わせれば、何とかなる!」
ソレイユは、そう言って雷獣に立ち向かうが、彼女の熱意は
空回りするばかりで、どんどん窮地に追い込まれていく。
ルナもソレイユも 徐々に気力を奪われ、目から死んでいく。
二人の眼光には、さっきまでの輝きが、もう無かった。
その時、ルナの守護獣 クレッセントが、ソレイユを庇おうと、
火山獣の攻撃を、全身で まともに喰らった。雪と氷の化身の
クレッセントは、その場に苦しそうに倒れた。
「クレッセントー!!」 ルナが叫んだ。
ソレイユの守護獣フレアも、ルナを庇い、雹獣に体当りした。
光と炎の化身のフレアも、激しいダメージでその場に倒れた。
「フレアー!!」 ソレイユが叫んだ。
無私無欲な守護獣が、共に 主人を守るため、犠牲になった。
その瞬間、ルナとソレイユの目に、ようやく光が戻った。
「なんて……なんて、バカな」 ルナが、思わず呟いた。
人間を『守るには値しない』と切り捨ててきたルナの心に、
守護獣たちの、自らを省みない勇気が、強く響いた。
ソレイユも、直面する困難は『元気だけでは越えられない』、
自分は甘かった…と、守護獣たちの犠牲で、目が覚めた。
地球人類が 未来において火星を台無しにする、と決まった
わけでもないのに、ディザスターは、人類を悪と決めつけ、
使徒・司を使い、本気で絶滅しようとしている。
ルナとソレイユも、自らの愚かさに、ようやく気がついた。
自分たちには、月と太陽から与えられたチカラがあるのに、
互いに反発し合い、目の前の悪意から人間を守れずにいる。
だが、すでに遅かった。雹獣と火山獣により引き起こされた
雪崩まじりの土石流が、容赦なく二人に襲い掛かった。
スコルピオンの背に乗った司が、近くの高台に降り立った。
司は、ルナとソレイユが、雪と土砂に飲み込まれていく様を
眺め、満足げに勝利を宣言した。
「これで、お前たちの愚かな戦いも終わりだ。人類は火星を
汚す前に、地球上で すべて滅び去るがいい、ははは・・・!」
司の笑い声が、冷たい夜空に響き渡る。
しかし、その声は、すでに二人の耳には届いていなかった。
ルナとソレイユは、揃って 雪崩と土石流に飲み込まれた。
絶望的な状況下で、二人は、月と太陽の光を求めるように、
空へ向かって 手を伸ばした。
だが、雪崩と土石流は、轟音と共に、すべてを飲み込んだ。
数分後、辺りに、静寂が戻った。
司は、ルナとソレイユが、土石流に完全に埋もれたことを
確認すると、再び スコルピオンの背に跨り、雹獣と火山獣を
連れ、火星開発総合センターに向き直った。
司は、センター近くの高台に降り立ち、そこからセンターの
建物内の生存者たちに、聞こえるように大声で命令した。
「抵抗は無駄だ… 出て来い! 全員、命だけは助けてやる」
ややあって、センターの建物内から、生き残った職員たちが
両手を挙げ、建物外へと出て来始めた。
それを見て、司は、傍らの火山獣と雹獣に 小声で命令した。
(全員が外へ出たら、また雪崩と土石流で 生き埋めにしろ)
センター前の広場に、建物内から続々と職員が出てくる。
その彼方の荒涼とした大地に、二本の小さな枝のような物が
突き出ていることに、司は、気づいていなかった。
それは 二本とも、少女の物らしき、人の左腕だった。
一本は 薬指に、アクアマリンのリングをしている。
もう一本は やはり薬指に、トパーズの指輪をしている。
二本の腕は、ピクリとも動かず、ただ天を 指し続けていた。
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次回はいよいよ ⑦、最終話です、どうぞ おたのしみに。
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