地球防衛少女 ルナ&ソレイユ ➂ ルナ、新月に泣く
物語概要)
謎の敵ディザスターから地球を守る、月と太陽の戦士 ルナ&ソレイユ の友情物語
主要キャラ)
ルナ =上月 葵 15歳
月のチカラを託された超能力少女。
(ソレイユと同じ)シェアハウスに住み、同じ学校に通う、夜型の少女。
ルナの超能力)
月のチカラ(重力と月齢)を操り、津波などの天変地異を起こし 敵を駆逐する。
力の使い方を誤れば、人に被害を与えてしまう。それでも構わないと考えている。
ルナの必殺技)
ルナクラッシュ‥‥月の重力を変化させ 地球との距離を変え、天変地異を起こす。
ルナの弱点)
新月の日は、チカラを発揮できない。
ソレイユ =日向 南 15歳
太陽のチカラを託された超能力少女。
(ルナと同じ)シェアハウスに住み、同じ学校に通う、朝型の少女。
ソレイユの超能力)
太陽のチカラ(日差しと黒点活動)を操り、熱波寒波を引き起こし 敵を駆逐する。
力の使い方を誤れば、人にも被害を与える。それは絶対したくないと考えている。
ソレイユの必殺技)
ソーラーシフト‥‥太陽黒点活動を操り、ニュートリノ―量を左右し、敵を倒す。
ソレイユの弱点)
日没後は、チカラを発揮できない。
その他のキャラ)
星野 司 15歳
古代マヤの旧人類の子孫で、火星の意志に肉体を乗っ取られたエスパー。
紺野シュウジ 29歳
葵と南が住むシェアハウス「ラルク」の管理人。
第三話 ルナ、新月に泣く
翌朝、シェアハウスのリビングで、葵は朝食をとっていた。
そこに、ふらふらと入ってきた南の姿を見て、葵は思わず息をのんだ。
南の顔色はひどく青ざめ、全身に痛々しい痣が残っていた。昨夜、
雹獣と戦ったソレイユが、どれほど無茶をしたかは 一目瞭然だった。
管理人のシュウジが、疲れ切った南の前に、朝食のプレートを置く。
「……サンキュ」 今にも倒れてしまいそうな表情で、南は席についた。
葵の口から、無意識に心配の言葉が漏れた。
「…… ちょっと、無理しすぎじゃない?」
南は、冷ややかな視線を、葵に向けた。
「関係ないでしょ…… 巻き添えを出さないためには、これくらい想定内よ」
葵は、南の言葉を、まるで自分への当てつけのように受け取った。
「私が言ったのは、そういうことじゃない! 昨日、言ったでしょ!?
誰かを守るためには、多少の犠牲は仕方ないって。結局、誰かを犠牲にするか、
自分が傷つくかの、どっちかなのよ。誰も傷つけずに勝つなんて、無理だって、
いくらアンタが能天気でも、分かったでしょ!?」
葵は、南のやり方は ちょっと無謀すぎる と指摘したつもりだった。
しかし、南には、自分のやり方を全否定されたように聞こえた。
「だからって、一般人を犠牲にするなんて、私には絶対にできない!
葵みたく、人間をただのモノみたいに扱うなんて、私はしたくない!」
「モノじゃない! 必要悪だって言ってるの! 南にだって、いつか
私の言ってることが正しいって、きっと分かるハズだよ!」
「一緒にするな! 私は、アンタみたいに、地球を守るため……とか言って、
人間を地球と分けて、簡単に見捨てるような冷血女とは、全然ちがうの!」
二人の口論は激しさは、昨日と同じだった。
しかし、昨日と違うのは、葵も南も自分たちが、月と太陽の使徒として、
地球のために戦う使命を担わされた者同士であるということに、
気づいている点だった。二人は、口に出さなくても、本能的にその点に
気づき合っていた。
葵と南は、お互いに背を向けて、まるで敵同士のように睨み合ったまま、
朝食は手をつけられることなく、冷めていった。
見かねたシュウジが、二人の空のグラスを手に取り 言った。
「朝の喧嘩はこれぐらいにして、本日のシュウジ特性アサイーはどうよ?」
葵と南は 揃って席を立ち、黙ってそれぞれの部屋へ戻って行ってしまった。
「……うまいのになぁ」
仕方なく、シュウジは自分でアサイーを飲み干した。
✻ ✻ ✻
その日の夕方、
オーストラリアの “火星移住訓練センター” が、数日前 ソレイユから逃げた
雹獣に襲われたというニュースが飛び込んできた。
ルナは、迷うことなく出撃した。
今度こそ、ルナクラッシュで一気に決着をつけてやる。そう考えていた。
だが、空は雲一つない、晴天だった。そして、満月はどこにもない。
新月。そう、今日は新月の日だった。
「…… ウソ!」
ルナの顔から血の気が引いた。月の力を司るルナクラッシュは、
月の満ち欠けに影響される…… 新月の日は、最も力が弱まるのだ。
雹獣はルナの姿を見ると、嘲笑うかのように、猛烈な雹の嵐で攻撃してきた。
ルナはクレッセントに命じ、間一髪で攻撃をかわす。
しかし、月の攻撃力をほとんど発揮できないルナに、為す術はなかった。
「どうして、どうして!?」
焦りが、ルナの冷静さを奪っていく。こんなにも無力な自分。これでは、
ソレイユに「結局、お前も私と同じ」と言われた通りではないか。
その時、遠くから夕日を浴びて、眩い光が差し込んできた。ソレイユだった。
彼女はルナの苦戦を知り、駆けつけたのだ。
「……遅い!」
ルナは、助けられたことへの感謝よりも、自分自身の不甲斐なさと、
ソレイユに助けられるという屈辱感で、思わず悪態をついた。
「いまさら、何しに来たのさ!?」
「この役立たず! 私がいないと何もできないくせに!」
ソレイユも悪態をつきながら、夕日のパワーを使って 必殺技 を放った。
「ソーラーシフト!!」
夕日なので 効果は最大ではない。だが 雹獣の動きを封じるには十分だった。
ソレイユの放った光線が、雹獣を包み込み、ゆっくりと分解していく。
その間に、ルナはクレッセントに体当たりを命じ、雹獣を完全に粉砕した。
「言ったでしょ。アンタは甘いから、闘いのツメだって甘いのよ!」
ルナは、ソレイユに背を向けたまま、吐き捨てるように言った。
ソレイユは、その言葉に傷つきながらも、無言でその場を後にした。
二人の間にある溝は、深まるばかりだった。
フレアに乗り、去って行くソレイユの頬を、くやし涙が流れ落ちた。
「月なんて、太陽がなければ 輝けないくせに」
クレッセントに乗り、遅れて去って行くルナも、泣いていた。
「月さえ出ていれば、太陽のチカラなんて借りなくても勝てたのに」
二人は泣きながら、夜空の家路を急いだ。
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物語は④へつづきます、どうぞ おたのしみに。