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死亡フラグをかけた決死のお茶会から、二か月の時が流れた。
ロクサーヌ様との交流は順調に続いている。
初めてお邪魔した時に、ご息女アキエル様にもご挨拶させていただけた。
初めは緊張していたアキエル様も、何度か通ううちに「ロゼアお姉様」と呼んでくれるようになった。妹が欲しかったから、すごく嬉しい。
ロクサーヌ様とアキエル様は髪の色も目の色もそっくり同じで、とても麗しい母娘なので見ていてとても幸せな気持ちになれた。そうです私はメンクイです。シャイアのことも顔だけなら好きよ。
交流してみればロクサーヌ様とは意外なほど共通点があった。
皇太子妃教育で辛かったこと、先生に何度も注意されたときのことや、息抜きに読んでいた本のこと。学園で皆のお手本に指名されたときにプレッシャー。先生は素晴らしい人だけど本当に怖かったという話。社交の上でぐいぐい来る人をやんわりお断りするのがめんどくさい、という話。
ロクサーヌ様は一代公爵になられるアキエル様と縁を繋いでくれと寄ってくる人が多いそうだ。ちなみに私は、夫であるシャイアを紹介してほしいと言われる。お近づきになりたい場合もあれば、恨みを晴らしたい場合もあるので、見極めも大変なのよね。あまりきつく言うと角が立つし、かといってやんわり過ぎると勘違いされるし、いい塩梅というのがなかなか難しい。使える断り文句を教えてもらって嬉しい。次は言われたら使おうっと。
約束通り友人であるモニカや、ファイラ様のことも紹介した。
アキエル様はデビュタント前だが、既にあちらこちらから、「嫁入りしないか」「婿入りさせてくれ」と言われてきているそうだ。一代公爵としてこの国で生きていくか、留学して世界を広げるか、母娘で悩んでいたそうだ。ファイラ様は一代公爵の先輩だし、モニカの母親は隣国出身で、留学経験後、外交の職についてこの国と隣国を行ったり来たりの生活を行っている。そんな先輩たちの体験談は、とても参考になったみたい。
シャイアもまだロクサーヌ様のもとへ通ってはいるけれど、私達が来ていると知ってか、頻度は確実に減っているようだ。
「ロクサーヌ様が以前より自立されたように見えるし、興味が薄れたんじゃない?」
とはシャイアをよく知るモニカの言。でもシャイア、前世で言うとバリバリのキャリアウーマン自立の塊みたいなモニカの事も口説いているし、関係ないんじゃないかな? とも思う。
でもとにかく、ロクサーヌ様が私のことを呪い殺さないのであれば、私はそれでいいや。
これまでの経緯を手帳にまとめ終わって、そっと手帳を閉じる。死亡フラグ対策会議は、一段落したと思っていいはず。ほっと胸をなでおろす。
ただ少し不安なのが、転生もののお約束として、「物語の強制力」があるんじゃないかっていう事。
たとえロクサーヌ様に呪い殺されなかったとしても、シャイアの妻になりたい人はきっと山ほどいるわけだし。まさか次期女公爵を物理的に殺そうとしてくる人はいないと思いたいけど、産後の肥立ちが悪くて死ぬかもしれないし、浮気現場に踏み込んでしまい刺されるかもしれない。
「それでも、私は諦めない」
どんな死亡フラグが待ち受けていようとも、必ず迎撃し、叩き折って見せようじゃないの。
「私達の戦いはこれからよ!」
打ち切り漫画の最終回のようなセリフを叫んでしまい、部屋の隅に控えていた侍女に、小さな咳払いで注意されてしまったのでした。ごめんね。
第一章、VSロクサーヌ様(六条御息所)編、完結です。
明日人物紹介を更新しまして、その後は一週間おき、毎週月曜日の更新となります。
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