5-9
皇城の謁見室。
物々しいその部屋に入るのは久しぶりだ。
前に此処に入ったのは、シャイアが我が家に婿入りしてくることを告げられた時だった。
「ロゼア・サウス」
皇帝陛下の声が響く。
私は身に沁みついた礼をする。
社交界で完璧ともいわれる淑女の礼。
「顔をあげよ」
不敬にならない程度に顔を上げる。
目の前にいるのは皇帝陛下。
その左隣には皇后陛下。続いて第一妃殿下、第二妃殿下、第三妃殿下が座っていらっしゃる。
皇帝陛下の右側には宰相閣下。閣下は第一妃殿下の叔母であり、現在のライト公爵の妹でもある。
続いて皇太子殿下と二人の妃たち。
私の後ろには、両親が静かに立っている。
「ロゼア・サウス。報告書は読ませてもらった。周囲への聞き取り調査も終え、事実であることが確認された」
頷く。
私がハチルズ第四皇子殿下に、次期皇太子候補に暴力をふるったことは間違いない事実だ。
問題はその後、どのような処分を受けるのか。
せめて私一人の責であってほしい。
サウス公爵家には、両親には迷惑をかけたくない。
「それを受けて決定した。ハチルズには一代公爵の爵位を授け、ライト公爵領送りとする」
「………え?」
思わず顔を上げる。
ばっちり皇帝陛下と目が合ってしまった。
皇帝陛下は思いがけず、優しい瞳をしていた。
「息子が迷惑をかけたな。あやつの行いはレイジェーンが証言した。猫を蹴ろうとし、自分も踏まれそうになったところを、ロゼアが守ったのだと言っていた」
「その他のことも含めまして、ハチルズ第四皇子殿下は皇太子には相応しくないと判断しました。逆恨みを避けるため学園も退学、我が領で軟禁させていただきます」
宰相閣下が続く。
え、学園を退学?
貴族なら誰でも通う学園を?
皇子様が? 退学?
それは廃嫡と言えるレベルの扱いなのでは?
「ロゼア」
呼ばれて視線を移す。
第一妃殿下が、私を見ていた。
「息子が迷惑をかけましたね。貴女の行いに非はありません。自主謹慎を解き、社交界に戻りなさい。貴女の事を待っている人が沢山います」
第二妃殿下と第三妃殿下も、微笑んで私を見ている。
困惑して振り返ると、両親もにこにこと私を見ていた。
「ロゼア」
もうどこを見て何をしたらいいのかわからない私に、皇后陛下が声をかける。
「息子を守ってくれてありがとう。レイジェーンが貴女にお礼を言いたいと言っています。今度あの子の部屋まで行ってあげてくれますか?」
皇子の部屋に呼ばれる、とはそれだけ皇族に目をかけられている証拠でもある。
「謹んで、お受けします」
これまで学んできた常識から最適解を引きずり出して、私はなんとか礼をする。
まったく理解が追い付かないまま、両親に連れられて皇城を後にすることとなった。
この章特に顕著なんですが、話によって長さが全然違ってバランス悪いです。
話のキリがよいところで…と思うとどうしても…。
何が何だかわかっていないロゼアちゃん。次回、説明回!?
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