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 源氏物語における若紫、紫の上に対してどんな印象を持つでしょうか。少女を自分好みに育てる浪漫? 幼女誘拐は犯罪? 色々な意見があると思うけど、私から見ると彼女は所謂「放置子」だと思う。

若紫、あるいは紫の上。


言わずと知れた光源氏の最愛。

源氏物語史上最高の女性、藤壺の面影を宿した女性。

幼い頃から源氏の手元で育てられ、正式な妻ではないけれども、事実上源氏の妻として生きて行く。子どもができなかったり、恋敵の子を引き取って育て上げたり、晩年に女三宮が源氏に降嫁した事で色々あったりと苦労も多い人生であるけれども、基本的には源氏の人生の大半を占める女性なんじゃないかなと思う。


そんな彼女が、この「源氏物語をモチーフにした小説投稿サイトに投稿されて書籍化もされたラノベ」の世界ではどう関わってくるのか。

残念ながら流し読みしかしていない私にはわからない。全部読んでおけばよかった。反省。


「ロゼア様。シャイア様がお見えです」

声をかけられたので思考は一時停止。職務室を出て、サウス公爵家の馬車に向かう。歩いている途中で、メイド達がひそひそと話しているのが聞こえてきた。


「ねえさっきのトーノス様見た? 汗で透ける筋肉が素敵!」

「私は断然シャイア様派! あんなに美しい方他にはいないじゃない!」

「私は二人が並んでいるときが一番かな」

「わかるー! トーノス様が年下のシャイア様を構っているのがかわいい」

「あら、私は逆にシャイア様がトーノス様をあしらっているのが好きだわ」


……どの世界でもあるのね、こういうの。

身内のそういう話は聞きたくなかったな……。聞かなかったことにしよう。


ついでに補足しておくと、今世では同性婚が可能。

貴族の三男同士とかなら結婚しても継ぐべき爵位が無い為跡取りが必要ないので、特に問題が発生しないのよね。そんなに数は多くないし、跡取りが必要な当主となると、さすがに難しいけど。


この世界の跡取り条件は、一に血筋二に血筋。

当主の血を引いていることが絶対条件になる。

当主に子どもができなかった場合は先代当主の子、つまり当主の兄弟姉妹から養子をもらうことになる。


私も公爵家の次期当主だし、子どもを産んだ方がいいんだけど、源氏物語の葵上、出産で死んでるのよねえ。

嫌だなあ。

子ども産めなかったらこの間サウス侯爵領に送ったユーリナ様のとこの子を貰おうかしら。

マリーお姉様怒るかな。


そんなことを考えながら我が家の馬車に辿り着いた。

馬車の中ではこの世でいちばんのイケメンが、深い憂いを湛えた表情で座っていた。

キラキラ輝く金髪に、深い紫の瞳が真剣な色を帯びている。今日のシャイアは休日、ラフな薄紫のシャツと紺のズボン姿。一番上のボタンをはずして肌をチラ見せ。色気も出ている。耐性のない人が不意打ちで見たら倒れてしまうかもしれない。まぁ私には効果ないけど。


「シャイア、お父様が急に呼び出してごめんなさいね」

一応そう言っておく。

「いや、ララ様が誘拐されかけたと聞いては、何を置いても駆け付けない訳にはいかないよ」


「…ララ様とはどなたです?」

礼拝堂で誘拐事件ってことは平民なのかと思っていたけど、「様」付けってことは貴族令嬢?

「彼女は孤児院で暮らしている令嬢だよ。母方の祖母と一緒にね」

「なるほど。なぜシャイアがそれを知っているの?」

「前に礼拝堂を訪れた時に出会ってね」

既に随分親しそう。

最近昼間によく出かけると思っていたけれど、彼女に会っていたのか。


気になっていたけど忙しすぎて放置してたわ。放置は良くないね。

とかなんとか考えている間にも馬車は進んでいく。北の礼拝堂までは、そう時間はかからない。


「ところで、どうしてシャイアは北の礼拝堂に? 特に縁はなかったわよね?」

この世界での礼拝堂は、神様に祈りを捧げる所だ。

古くは長い文言を一言一句諳んじる必要があると言われていたみたいだけど、最近は自分の心の中で思うだけで良いとされている。

神様は美しいものが好きと言う事なので、絵画や陶芸、刺繍や織物を供えたり、音楽を奏でたりすることもある。

人々は空き時間や何か悩みがある時にふらっと礼拝堂を訪れ、神に向き合い自分の心と対話する。ついでに併設されている孤児院で焼き菓子を買って、つまみながら帰る。貴族も平民も同じ、一般的な礼拝の形。


因みに、サウス公爵家くらいになると、家の敷地内に礼拝室がある。

皇城にもあるから、私に悩み事があったりするときはどちらかに行くことが多い。

死亡フラグに関することは神様にどうのするつもりがなかったから自室でなんやかんやしてたけど。だって神様が私を殺すシナリオ書いてるかもしれないじゃない。自爆行為だわ。


皇都内には東西南北に一つずつ孤児院併設の礼拝堂があるから、焼き菓子が食べたくなったらお忍びで行くこともある。孤児院で作っているお菓子たち、素朴な味で美味しいんだよね。考えてたら食べたくなってきた。


「焼き菓子食べたくて行ったの?」

返事がないので重ねてそういうと、きょとんとした顔をされてしまった。

「ああ、そうだね、美味しいからね」

しまった絶対違うわ。なんなら食い意地はってると思われたわ。

何か言い返そうと思ったが、馬車が動きを止める。どうやら目的地にたどり着いたようだ。


「シャイアお兄さま!」

シャイアにエスコートされて礼拝堂に入る。中にいた少女がぱっと顔を上げ、シャイアに抱き着いてきた。

「ララ様。怪我はないかい?」

「はい!」


うっわーまっぶしー! 

キラキラが渋滞してる! 

誰か! 

サングラスください! 


心の中で叫びながら私は目をつぶった。

シャイアと同じ色のキラキラと輝く金の長い髪。潤む瞳はラベンダーのよう。幼さの残る顔立ちに桃色の頬。すらりと長い手足に、華奢な体つき。質素で飾り気のない平民用ワンピースですら着こなしている。


美少女。

まごうことなき美少女。

正ヒロインの座を欲しいままにするのも頷ける。

私なんかとは作画が違う。

この子はまさしく若紫の君だと確信した。


そういえば皇后様によく似ている。

絶対姪だ。

藤壺の宮の姪の、若紫の君だ。


世界の美少女、ララ様ははっとシャイアから離れた。

「はしたない真似をしてごめんなさい……」

「いいんだよ、不安だったんだろう?」

そういってシャイアが頭を撫でる。


ああー絵になるー誰か絵師呼んできてーファイラ様来てー。 


なんて気持ちで二人を眺めていると、ララ様がようやく私に気が付いたようでこちらを見た。

「あの方は?」

「ロゼア・サウス公爵令嬢。私の妻だよ」

「つま?」

「お嫁さんっていう事さ」


おっと? 

これはもしや、新たな死亡フラグが立つのでは?


「ええっ! マジで! コーシャクっておじょーさまなんでしょ? やっばーい! あたしホンモノのオヒメサマ初めて見た!」


一瞬思考がフリーズした。


「しかもシャイアお兄様のお嫁さんなの? えーいいなー! あたしもシャイア様のお兄さまのお嫁さんでオヒメサマになりたかったなー。ねえねえ、握手してくれない?」

「ララ様、話し方が崩れているよ」

「あっごめんなさーい」


てへぺろ、と言わんばかりに首を傾げられる。

絵になる、絵になるけど……え? 


若紫って、ラノベになるとこんなキャラなの?


(今のところ)作品一明るく元気なギャル、ララちゃんの登場です。

貴方の思う最高の美少女を思い描きながらお読みいただければと思います。キラキラでお願いします。キラキラ~~~°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°


読んでいただいてありがとうございます。


★★★★★やいいねをポチってもらえるとモチベーションが上がります。


どうぞよろしくお願い致します。

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