4-1
新章スタートです。
源氏物語と言えば!真打登場です!
「やっと仕事が一段落した……」
大きな机にだらしなく倒れ込む。すかさず侍従の咳払いが飛んできた。
慌てて姿勢を正すと、侍女が苦笑しながらお茶を入れてくれた。流行を無視した甘めのミルクティー。優しい香りにホッとする。
久しぶりにゆっくりお茶を飲んでいると、控えめなノックの後、兄であるトーノス・サウス侯爵が部屋へと入ってきた。
「ロゼア、父上から仕事の依頼だ」
「あら? お兄様。今日は非番なのでは?」
「ああ。演習場で自主練していたら駆り出された。」
急いでやってきたのだろう。汗ばんだ深茶色の短髪、動きやすいシンプルな白シャツと黒のズボン姿が、素材の良さを引き出している気がする。モノトーンの色味の中でアクアマリンの瞳が綺麗だ。なんとなく廊下が騒がしいのは、久しぶりに兄がここを尋ねたせいかな。お兄様人気だもんね。
「お父様からの仕事って?」
「なんでも、北の礼拝堂で誘拐未遂があったらしい。被害者に事情を聞いてきてくれ」
誘拐事件の事情聴取ですか。
私の仕事は祭事の警備なのでハッキリ言って管轄外だけど、依頼が来た意味はわかる。軍の人間は大体身体が厳つくて顔が怖いのよ。誘拐未遂の被害者が泣いてしまうかもしれない、という配慮から、女性である私に声がかかったんじゃないかな。軍のトップであるお父様は、顔は怖いけど女子供には優しいし。
「被害者がシャイアの名前を出したらしい。家に使いを出してあるから、一緒に行ってくれ」
おっと、お父様の配慮じゃなかった。そういえば女性警備員もいるもんね。私を呼ぶ意味ないよね。
兄をにこやかに送り出し、侍従と侍女に指示を出してから、私は改めて机に突っ伏した。なんだかとっても、嫌な予感がしませんか。
「北の礼拝堂……北山の僧院……なんか似てない?」
こういう時の私の勘は絶対にあたる。
そして思った通り、新たなヒロインが私の前に現れることになりました。
源氏物語最強のヒロイン、若紫の登場です。
というわけで4章はVS若紫編となります。
2、3章と違って長丁場となりますが、お付き合いいただけると幸いです。
読んでいただいてありがとうございます。
★★★★★やいいねをポチってもらえるとモチベーションが上がります。
どうぞよろしくお願い致します。




