山梨編 第四話 豚とソフトと富士の麓
道の駅・富士吉田を後にし、再びZ900を走らせる。
目指すは「道の駅・朝霧高原」。
地図で見れば距離はそう遠くないのに、山梨の県道は思ったよりタフだ。
登って下って、登ってまた下る。
ギアチェンジのたびに、クラッチを握る左手が疲弊していく。
「くっそ、腹減った……」
富士山の絶景も、空腹には勝てない。
体感的には胃袋が背骨にくっついてる。
朝から「米か、うどんか、それとも肉か」と悩み抜いた末、やっぱり“豚丼”という選択は正しかった。
何より「朝霧ヨーグル豚」という名前がもう反則級にうまそうだ。
そして到着した「道の駅・朝霧高原」。
「うおお……空広ぇ……!」
視界の先には、遮るもののない空と草原。
空気もうまいし、牛もうまい(※多分)。
バイクを停めて建物の中へと歩を進めると、すでに何組かの観光客が豚丼を頬張っている。
その香りだけで、ごはん三杯はいける。
迷わず「肉丼」を注文。
出てきたそれは、思った以上にボリューム満点。
器に収まりきらない豚肉たちが、まるで「戦地から戻ってきた歴戦の戦士」のようなオーラを放っている。
「朝霧ヨーグル豚……お前……柔らかすぎるだろ……」
一口食べた瞬間、語彙力が消し飛ぶ。
ネギの香ばしさと甘味、タレの旨味、そして豚肉の脂のコク。
これぞ朝メシ界の三冠王。
食べ終える頃には満腹というより“満足”という感覚が勝っていた。
「さて……甘いもんでも食うか……」
食後のデザートに、ソフトクリームが恋しくなるのはもはや自然現象。
検索の末、気になったのは「ハートランド朝霧」という牧場併設のソフトクリーム店。
「……店員いねぇ……」
到着しても誰もいない。
店先には“電話してね”の文字と番号。
——怪しすぎる。
でも、気になる。
恐る恐る電話をかけると、陽気な声が返ってきた。
「誰か行かせるから少し待ってて~」
数分後、また電話。
「ごめんね~、今行けないから自分で作って行って~」
「え? 自分で……?」
「店の中入っていいから~。まずジョッキに出して、コーンに入れてね~。バイト代で50円引いとくから300円でいいや!」
このテンションの高さ。
絶対この人、元バンドマンか何かだ。
言われるがまま店に入り、自作ソフトクリームチャレンジ開始。
ジョッキに試し出ししてから、慎重に……慎重に……。
「ぐはっ」
やらかした。
盛りすぎて崩れた。
やり直してようやく完成。
控えめな甘さと、しっかり感じるミルクの味。
「……これは……まじでうまい……」
バイクのシートに腰を下ろし、牧場の空の下で食べるソフトクリーム。
この上ない贅沢。
ちなみにこの牧場、RADWIMPSの「前前前世」のPVにも使われたらしい。
おそらく今、俺もそのPVに勝るとも劣らぬ構図にいる(※主観)。
そして、いよいよ次なる目的地は——
「……キャンプ場、探さなきゃな」
富士山ソフトクリームでクールダウンしつつ、富士山の見える湖畔キャンプ場を検索開始。
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