【番外編・第一話】
「今日は絶対に急がないって言ったからな」
朝、群馬・伊勢崎市某所。
友人・吉村(マグナ250)と、お互い顔を見合わせて念を押す。俺は今回もハンターカブ125。
吉村は30代、学生時代からの腐れ縁。
性格はちょっと頑固。でも悪いヤツじゃない。
二台はインカムを繋ぎ、のんびりと秩父を目指す。
のんびり、と言いつつマグナの方がやはり速い。
カブに合わせようとする吉村だが、どこかスピード感が噛み合わない。
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午前10時過ぎ、長瀞の有名店阿左美冷蔵へ到着。
平日でも行列。ふたり並んで他愛もない会話を交わす。
「お前、そろそろハンターカブじゃ物足りねぇんじゃないの?」
「いや、これがちょうど良いんだよ。お前のマグナより遅くて悪かったな。それに遠出はZを乗ってるから」
「……まぁな」
そんな会話をしながら、名物の天然氷かき氷を頬張る。
ふたり共、宇治金時ミルクを選んだ。
ふわふわと消える氷と、渋い抹茶、練乳の甘さに顔が緩む。
子供の頃からの付き合い。
こういう瞬間は、なんだかんだ落ち着く。
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その後、秩父のワインディングをゆったり走る。
昼食は秩父名物くるみ蕎麦。
ツーリング客に人気の小洒落た蕎麦屋に入り、二人で天ぷら付きのセットを頼む。
胡桃のまろやかさと蕎麦の香りが絶妙で、無言で啜る時間が心地よい。
「……これ、酒欲しくなるな」
「だから泊まりで来てんじゃねぇか」
「バカ、今飲みたいんだよ」
またふたりで笑う。
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午後、山間の国道でインカム越しに事件が起こる。
お互い、曲がる道について意見が食い違う。
「いや、そっちじゃ遠回りだ」
「でもそっちの方が景色がいいって言ってんだろ」
「バイクは景色より効率だ」
「お前と走ってると疲れるわ」
インカム越しに言い争いになる。
結局、お互い譲らず別々にキャンプ場へ向かうことに。
険悪な空気のまま、日が傾く。
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