山梨編 第二話「秩父越え、死の峠道」
伊勢崎を出発して2時間、国道299号に入り秩父方面へ。
この道は昼間でもライダーが多いことで知られているが、深夜ともなるとほとんど誰もいない。
静寂と闇の中を突き進むZ900。
時折すれ違うのは、深夜配送のトラックぐらい。
峠の中腹に差しかかると、問題が起きた。
カーブを曲がった直後、前輪がズズッと横滑りする。
「やべっ……!」
ハンドルを即座に切り戻し、体をイン側へと傾けてバランスを取る。
危うく、谷底にまっ逆さまだった。
路面には、雨で流された砂利がうっすらと広がっていた。
深夜で見えにくかったせいもあるが、「峠道あるある」だ。
頭では分かっていたのに、疲れた身体と脳が判断を遅らせていた。
「マジで死ぬかと思った……」
ヘルメットの中で呟く声が震えている。
一歩間違えれば、富士山どころか三途の川ツーリングになるところだった。
それからは慎重に走行。
時速30キロ以下で、まるで教習所のS字クランクのような運転を強いられる。
秩父の街が見えてきた頃には、手のひらが汗でぐっしょり濡れていた。
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