--- 【第三話】鎌倉古道と、再び巡り合う潮騒の夜
朝7時。
湖畔の夜明けの余韻を後にして、芦ノ湖を出発。
目指すは三浦半島、でもその前に鎌倉に寄り道する。
「なんとなく、古道を歩きたい気分だったんだよな」
箱根越えから海へ近づくにつれて、心は次第に穏やかに。
逗子を抜け、鎌倉へ入る。
裏道の入り組んだ住宅街を進んでいると、ふと思い出す。
初対面は千葉の路上、彼女はSR400に凝った装備と黒髪が印象的だった。
この鎌倉の古道、彼女も好きそうな場所だ。
---
◆ 偶然の再会、古民家カフェ「風季」
石畳の坂を抜けてたどり着いた古民家カフェ。
窓越しに珈琲の湯気が見える。やっぱり来てみよう。
店内にはジャズが流れ、木漏れ日が優しく差し込んでいる。
「いらっしゃい」と店主が笑顔。カウンター越しにコーヒーとカステラを淹れてくれた。
ほっと一息ついていると…
ドアの開く音。振り返ると――
そこにいたのは……
「また会うなんて思ってなかったです!」
そう、千葉で出会った佐倉葵だった。SR400にまたがっていた彼女は、昨日ツーリングで鎌倉を回っていたとのこと。
「鎌倉、気ままに歩いてたら見つけて。店の雰囲気がすごく良かったんで飛び込んじゃいました」
「俺も迷い込んで、ここがいいなと思ってたところです」
カステラと珈琲を前に、物静かに笑い合う。
人違いじゃなかった嬉しさと、また同じ景色を共有できる安心感が心地よかった。
---
◆ 三浦半島へ――ふたりのライダー
カフェを出て供に走り出す。
SR400とZ900。海へ続くミラーに映る空は澄んでいた。
逗子を抜け、横須賀へ。途中、佐島や小坪漁港で軽く立ち止まり、海の香りと静けさを味わう。
「佐倉さん、今日のキャンプ場は?時間ある?」
「うん、キャンプ場は「ソレイユの丘キャンプ場」で、三浦最後に回って“潮風キャンプ”できたら嬉しいなぁって思ってた」
なんという幸運(?)
---
◆ ソレイユの丘で風のテント設営
南端の「ソレイユの丘キャンプ場」に到着したのは午後2時過ぎ。
高台から見下ろす湘南の広がりは、澄んだ空の下で本当の絶景だった。
強い海風に悩まされながら二人で各々のテントを設営。
葵がテントの張り綱を押さえ、主人公がペグを打ち込む。
「風、強いな」
「でも、それがここっぽくていいですよね」
風に翻るシートの音が心地よい。
---
◆ 夕暮れの湖畔と、二人の距離
設営後、潮風を味わいながらだらりと焚き火。
海風で焚き火が煽られ、煙が二人を包み込む。
軽い飯は袋ラーメンと缶詰だったが、味は最高に美味かった。
波の音は、夜のBGM。
沈む夕陽を見つめながら、葵が口を開いた。
「千葉でも感じたんですけど……あなたが“余計なこと”しないから、安心してキャンプできるんです」
「俺の…そういうとこ、褒めていいのか?」
「ぜんぜん、仲間として嬉しいですから」
静かな夜の向こうに、海が深く広がっていた。
---
◆ 夜の風、二人と焚き火と
夜風に当たりながら、焚き火の赤い灯が闇に浮かぶ。
わずかな距離感が、かえって信頼を育んでいく。
「明日はどこへ行く?」
「帰りは千葉経由にして、銚子のあの港町の店…」
「そこ、俺も行こうと思ってたんだ」
笑いの光が、この旅に、また新しい地図を広げてくれた。
今回、読んでいただきありがとうございます。「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、評価をよろしくお願いします!




