第五話:朝露と見知らぬ珈琲
朝。
テントの外は、しっとりと湿っていた。シュラフから出ると、肌に朝露の冷たさがまとわりつく。あくびをひとつ。
――ああ、ちゃんと起きれた。
川のせせらぎは夜と違って、どこか軽やかに響いていた。顔を洗っていると、ふいに誰かの気配を感じて振り返る。
「あ、おはようございます」
キャンプ場の奥のほう、どうやら夜のうちに車で来ていた若い男性キャンパーがいたようだ。軽く挨拶をして、コーヒーでも淹れようかとバーナーを取り出す。
すると、その彼が近づいてきた。
「コーヒー、お好きなんですか? 僕、ちょっといい豆持ってきてるんで、よかったら一杯どうですか」
――まさかの珈琲のお誘い。
「お、それはありがたいっすね」
焚き火台の隅で、コンパクトなミルで豆を挽き始めるその彼は、いかにも“キャンプギアにこだわってます”系の若者だったが、押しつけがましさはなかった。
話を聞くと、福島在住で、最近キャンプにハマり、いろんな無料キャンプ場をめぐっているらしい。
「ソロキャンって、やっぱ気がラクですよね」
「わかる。干渉されないし」
同じスタンスの人間との、あっさりとした共感。 それもまた、ソロキャンプの醍醐味だ。
淹れてくれた珈琲は香ばしく、酸味が強め。寝ぼけた脳に、ちょうどよく効く。
その後、軽く会話をして別れの挨拶をし、撤収を始める。テントが朝露でぐっしょりだったが、それもまた良き経験。
荷物をバイクに積み込みながら、少しだけ名残惜しさを感じた。
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