表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソロキャンライダー放浪記  作者: たけるん
20/74

フィクション 妙高高原編 第三話「斑尾、雪の壁と薪ストーブ」

関温泉をあとにして山道を走る。春の陽気とは裏腹に、標高が上がるにつれて空気がキュッと冷たくなる。

妙高から斑尾高原へ抜けるルートは、見事に“雪の回廊”だった。除雪された道路の両脇には、まだ1メートル近い雪の壁が残っている。


「嘘だろ、これ春かよ……!」


冗談のような景色だが、これもまた、旅の醍醐味。寒さに耐えつつ走り抜けるZ900。メッシュグローブを選んだ自分の浅はかさを呪う。



---


斑尾高原のふもと、小さな集落の先にある古民家風カフェ「火と森」に立ち寄る。

店内は薪ストーブが焚かれており、ガラス越しに見える森の奥では、まだ鹿の足跡が残る。


「暖かっ……天国かよ……」


店主の気さくなおじさんが声をかけてくる。


「バイクかい? 今日なんて、まだ朝マイナス3度だったよ。よく来たね」


「無計画の極みです」


笑い合いながら、チーズトーストと焙煎コーヒーを注文。山小屋風の内装と、ストーブのパチパチという音に心まで解凍される。


そこへ、同じくバイクでやってきたという若いソロライダーが入店。YZF-R25に乗る大学生らしい。話が弾み、コーヒーをもう一杯おかわりしてしまう。


「キャンプしてるんですか? 僕、今夜もどこで泊まるか迷ってて……」


彼の話を聞くうちに、「じゃあ、今夜は一緒に焚き火でもしようか」という流れになる。



---


日が傾きはじめた頃、ふたりは斑尾の林間にある「まだらおの森キャンプ場」へ。まだ営業前だが、オーナーのご厚意でプレオープン利用を許可してもらった。


枯れ枝と松ぼっくりで火を起こし、焚き火の前でチタンマグの酒を傾ける。


「いやー……こういう出会い、ソロじゃなきゃ味わえないっすね」


「ほんと、一期一会だよな」


彼は来月、就職で関東を離れるという。その前に“やり残したことを全部やってる”らしい。


「俺もさ、昔そんな旅してたわ。あんまり覚えてないけど」


そう言いながら、炎の向こうに揺れる彼の影を見つめていた。


やがて夜が深まると、あたりは再び氷点下へ。ふたりとも早々に寝袋に潜り込むが、耳には風の音、鼻先には焚き火の残り香――春寒の高原の夜は、静かに続いていた。

今回、読んでいただきありがとうございます。「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、評価をよろしくお願いします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ