表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソロキャンライダー放浪記  作者: たけるん
16/74

新潟編 第二話:大池いこいの夜宴(やえん)

スーパー「NARUS」の駐車場にZ900を停める。シートバッグを空けて、中の食材や酒が入るスペースを確認しながら、カゴに目をやる。

「……これ、詰めるか?」

買い物カゴにはビール、赤ワイン、地元産の豚肉、ソーセージ、しいたけ、エリンギ、そして特売の焼き鳥セットまで入っていた。やる気満々である。


店を出て、バイクに荷物をくくりつける。雨がすっかり止み、夕陽が斜めに差し込んでくる。ヘルメットを被る瞬間、「旅してるなぁ……」と一人つぶやいた。背中には、酒と肉と希望が詰まっている。



---


「大池いこいの森キャンプ場」には17時過ぎに到着。車で来ていた老夫婦が、ちょうど焚き火の準備をしているところだった。

「こんにちは!」と声をかけると、旦那さんがニコッと笑って「いらっしゃい。バイクかい?今日は静かでいい日だよ」と返してくれた。


橋を渡って場内へ進み、釜戸のある炊事場近くにテントを設営。地面は少し湿っていたけど、焚き火台を置くスペースは乾いていた。タープを張るか迷ったが、空が明るかったのでやめた。


バイクから荷物を下ろしながら、ふと、向かいのサイトを見ると、カップルらしき二人がテントと格闘していた。彼氏の方が「それポール逆じゃない?」と焦り気味に言っているのを見て、心の中で「ガンバレ」とエールを送る。



---


設営がひと段落したら、いよいよ至福の時間。

チェアに腰かけ、コンロに火をつけて、ウィンナーとキノコをジュウジュウ焼く。火の上で跳ねる肉汁の音にビールを開ける手が止まらない。


「ん~っ……( ゜Д゜)ウマー」


焼きたてのウィンナーを口に入れ、冷たいビールで流し込む。炭火の香ばしさと肉の脂が喉奥を満たし、鼻の奥まで幸福感が駆け抜ける。


パン屋で買っていたクロワッサンとベーコンエピも、ここで登場。ワインと一緒にちびちびやる。なんという贅沢。



---


20時過ぎ、「お父さん」から声をかけられた。

「にいちゃん、一緒に飲まんかね?」

「喜んで!」と返すと、「お母さん」も「つまみあるわよ~」と笑ってくれた。


それから少しして「お兄さん」「お姉さん」も加わり、焚き火を囲む輪ができた。赤ワインが回り、地元のチーズと「お母さん」の自家製ピクルスが並び、誰かが流し始めたBluetoothスピーカーからは、昔のフォークソングが流れていた。


最初に挨拶をしたが、酒が回ってからは誰の名前も覚えていない。なのでそれぞれ「お父さん」「お母さん」「お兄さん」「お姉さん」で通すことにした。


お母さんは、時折ちらっと俺を見るたびに「うちの娘ね、まだ独身でねぇ……」と繰り返す。たぶん、5回は言われた。でも妻子持ちなのでスルー。ピクルスだけありがたくいただく。


夜はどんどん更けていく。火は小さくなり、虫の音だけが耳に残る頃、「これ、またやりたいですね」と誰かが言った。そのとき、誰も何も言わなかったけれど、たぶんみんな同じ気持ちだった。



---


翌朝、6時起床。頭は少し重いけど、悪くない二日酔い。昨日の焚き火台を片付けていたら、お父さんが「また会おうや」と言ってくれた。


「もちろんです。またここで。」


帰り道、昨日のパン屋に寄って、焼きたてのパニーニを頬張る。温かいベーコンとチーズが、まだ酒の残る胃にやさしい。これだけで今日一日走れそうだ。


そして、群馬へと続く長い道。朝の空気を吸い込みながら、Z900のエンジンを回す。心地よい疲労と、どこか名残惜しい気持ちを抱えて。


一期一会の夜を、胸にしまって走り出す――。

今回、読んでいただきありがとうございます。「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、評価をよろしくお願いします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ