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山梨編 第十話 豚みそ丼と帰還の儀
帰り道、埼玉を経由するルートを選ぶ。そう、最後の目的地はあの名店。
「豚みそ丼 野さか」
開店30分前に着いたのに、すでに数人が並んでいた。人気の高さがうかがえる。行列に並びながら、さっきまでの富士山と温泉を反芻する。あれだけの非日常を体験すると、もう明日からの生活に戻れる気がしない。
開店と同時に入店し、迷わず一番人気の豚丼を注文。
届いた丼は、これでもかと敷き詰められた肉に覆われて、まるで肉の屋根。だけど見た目ほど重くなくて、タレも濃すぎない。香ばしさが米を引っ張る引っ張る。
「……これだよ」
口の中にじゅわっと広がる旨味と、軽やかな脂。食べてるそばから「もう一杯いけるな」と思ってしまう危険な丼。気づけば完食していた。満腹なのに。
満足感と眠気が再び押し寄せる中、最後のライディングを終えて、無事に帰宅。
テントの匂いが染み付いた荷物と、酒にまみれた記憶。それら全部が、たまらなく愛おしく感じた。
旅は、終わった。
また、走り出すその日まで。
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