山梨編 第八話 猫と朝焼けと二日酔い
ハッ、と目が覚めた。
テントの天井。明るい。つまり朝。やべぇ、完全に落ちてた。 最後に覚えているのは、馬刺しをつまみに赤ワインをラッパ飲みしてたところまで。そこから先は、ブラックホール。きれいに記憶が抜け落ちてる。
「……ま、いっか」
テントのファスナーを開けると、朝のひんやりした空気が顔にぶつかる。湖畔にはまだ薄い霧がかかっていて、空は淡くオレンジに染まりかけていた。
ん? 焚き火台が――片付いてる。
「オレ、片付けたっけ?」
完璧に記憶が無い。むしろ、飲んだ後にあんな面倒な作業ができるような人間だったら、もっと人生うまくいってるはずだ。自分でやったのか、酔っ払いながらオートで動いたのか、妖精のしわざか。答えは闇の中。
ふと足元に気配を感じて視線を落とすと、小さな白い猫が一匹。こちらをちらりと見て、のっそりと湖畔の石の上に移動して毛づくろいを始めた。
「お前も朝早いな……って、オレが遅いのか?」
猫は返事もせず、ただ尻尾をピンと立てて去っていった。孤高の生き様。見習いたい。
頭が重い。体もだるい。明らかに二日酔い。しかも強め。酒に飲まれると、こうなる。分かってるけどやめられない。
それでも撤収はしなきゃならない。二日酔いだろうが、キャンプは現実と向き合う場所だ。片付けを済ませ、ゴミも忘れずにパニアに詰めて出発する。今日の最初の目的地は――温泉。
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