山梨編 第六話 雲と焚き火と、ゆるい午後
精進湖キャンプ場には、拍子抜けするほどすんなり到着した。チェックインもスムーズ、スタッフも気さくで好印象。空いているとのことだったので、湖が見えそうな場所を探して早速設営に取りかかる。
しかし、天はあいにくの曇天。さっきまでの天気はドコへやら、富士山……どこ? 完全に雲の中に隠れてる。まぁ、いつものことだ。設営は問題なく完了、タープも張らずに済んだが、次の瞬間、パラパラと雨が落ちてきた。
「ハイ、来ましたねー!」
誰に向かって言ってるのか分からない独り言を呟きつつ、テントに避難。外で何かするには微妙な雨量だったので、スマホで「ゆるキャン△」を再生する。リンちゃんたちのキャンプ風景を観ていると、ちょっと自分のキャンプがアニメに影響されたような気がして可笑しかった。
『ゆるキャン△』、けっこう好きなんだよね……。
30分ほど経っただろうか、雨が上がったので外に出る。空は相変わらず分厚い雲が重なっていて、富士山の気配すら無い。でも、やることは一つ。
「飲むぞ!」
焚き火台に火を入れ、買っておいた肉を焼き始める。ミニマムな焚き火台でも、火があるだけで気分がガラッと変わる。ビールが喉を通る音さえも軽やかだ。
焼くのは牛カルビとウィンナー、そしてキノコ多めの野菜たち。豪華な料理なんていらない。ただ焼いて、酒の肴にする。それが俺流キャンプ飯。
途中、ふと空を見上げると、虹が出ていた。
「おおっ……」
思わず独り言が漏れる。虹を見ながらの一杯。これもまた、ソロキャンプの醍醐味だろう。
雲は消えない。富士山も見えない。けど、今この瞬間、ここにしかない時間を味わっている。
そして、酒が進むほどに夜も更けていった――。
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