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紗代子の場合

作者: 笛吹さき

初めて短編小説を書きました。

なにか始めたくなる季節っていつなんでしょうねぇ。


「ふぅ」


年々、厳しくなってきた暑さに汗が染みでる。

エアコンのスイッチを入れながら、ついため息が出る。


冷蔵庫から冷えた麦茶を出しながら、

さて今日は何をしよう?と考える。


結婚して20数年。

2人の子供の子育てが落ち着いて、

ふっと一段落がついた。


娘は大学で知り合った人と来年には結婚するらしい。

仕事も順調そうで先日帰ってきた時、楽しそうに話してくれたのが印象的だ。


息子はどうなる事やらと思っていたら、

この春、大学卒業と同時に一人暮らしを始め、

何だか楽しそうに過ごしている。


たまに自炊もしているようで、

「これ、どうやって作るの?」と連絡が来た時は

驚いたし、なんだか嬉しかった。

子供の頃に一緒にサラダや餃子を作ったことが懐かしい。



二人の子供たちが独り立ちして、

久しぶりに、旦那さんと2人の生活になって半年。


家事の分量も何もかもがごっそり時間が減って、

自分一人家にいる時間が増えてきた。


旦那さんと夕食後にお茶を飲みながら、

あーでもない、こーでもないと話す時間が幸せだ。

子供が小さい頃はなんだか忙しなかったし、

大きくなってくると受験だなんだと相談して決めなくてはならないことが多かった。


なにより自分にゆとりが無かった。





網戸にした窓から小鳥の声が聞こえる。

久しぶりに聞いた気がする。



空になったグラスに麦茶を入れながら、

ふっと空いた時間に何かしたくなる。



もう随分長くなった仕事先は居心地が良く、

週に3.4日ほど入る。


平日の休みは便利だし、仕事を増やすより、

仕事以外で何か出来ることをしてみようかな。



子育てが落ち着き、

ふっと空いた時間に何か始めたくなったのだ。




なんとなく付けていたテレビには

オーケストラが演奏する様子が流れていた。

旦那さんが契約した配信サービスに音楽もあったのでBGM替わりに最近かけている。

案外聞き流せてよいし、たまに知ってる曲も流れてきて楽しい。



楽器かぁ。



昔、ピアノを習っていたから楽譜は読める…はず。

バイエルを娘が弾いているのを懐かしく思う。

今住んでいるところは住宅街だから、大きな音は難しいけれど、フルートくらいならいけるだろう。


娘がピアノを習っていた時、家で練習していたし、

たまに他の家からもピアノやヴァイオリンの練習が聴こえる。


昼間にちょこっと練習するくらいなら、

きっと大丈夫だろう。


ちょうど、テレビにはフルート奏者がソロで有名な旋律を演奏していた。


銀色の美しい楽器から、

軽やかで涼し気な音色が流れてくる。





いいかもしれない。







そばに置いてあったスマートフォンで、

「フルート教室 〇〇市」と検索してみる。


家から通える範囲にいくつかあるようで

案外知らないだけで習い事としてはメジャーなものなのかもしれない。

1番上にでてきた教室のホームページをみると

どうやら体験レッスンというものがあるらしい。


マンツーマンのレッスンのようだし、

先生との相性って重要だろうなぁ。


写真を見ると娘くらいの歳の先生が

にこやかにフルートを持って写っている。

きっと、優しそう?


写真じゃ分からないし、

とりあえず行ってみようかな。


楽器もないから、

その辺も聴いてみないと分からない。


流れで調べてみると楽器の値段はピンキリで

1万円から1000万円まである。


初心者向けの楽器は10~30万円程度と幅があるようで、なんとも選びにくい。

買ってから違いましたで済まない値段だし、取り敢えずお試しで体験レッスンに行ってから考えよう。


そもそも向いているのかもわからない。




玄関の呼び鈴がなった。

お取り寄せの梨が届いたのかもしれない。

取り敢えず受け取ってから、体験レッスンの申し込みをしてみよう。



善は急げというし、

取り敢えず体験してみよう!


久しぶりの習い事、まだ体験レッスンだが、

なんだかワクワクする。


玄関モニターを確認し、玄関に向かう足取りが

いつもより何だか軽く楽しく感じた。



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