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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ゆるい短編

名もなき勇者の消失

作者: 閑古鳥
掲載日:2022/07/19

勇者と呼ばれる者が居ました。

魔女を滅ぼす勇者です。

一番強い魔の物である、魔女を殺す勇者です。


小さな小さな村でその勇者は生まれました。

勇者はすくすく成長します。

小さな剣で魔物と戦えるようになりました。

大きな剣で魔物を倒せるようになりました。

勇者の剣でたくさん魔物を殺せるようになりました。

そうして強くなった勇者は魔女を殺すための旅を始めました。


勇者は世界を旅します。

たくさんの村を周りました。

たくさんの街に行きました。

そうして旅をしてたくさんの魔物を殺します。

勇者が進んだその後に、魔物は残っていませんでした。


勇者が魔物を殺す度に人はその活躍を褒めたたえます。

「さすが勇者様だ! 勇者様はすごい!」

勇者はいつもそれに笑って応えます。

「魔物を殺すのが俺の役割ですから」

それを聞いて人々はまた喜びます。

「なんて優しい勇者様だろう!」

勇者は再び笑います。

「いいえ、それが俺の役割ですから」


勇者は旅を続けます。

人の歓声を浴びながら、魔物の血を浴びながら。

それが勇者の役割です。

それ以外に勇者の役割はありません。

だから勇者は進むのです。


勇者はとうとう魔女の城へと辿り着きました。

小さな小さな村を出発してから2年の月日が経っていました。


空っぽの城の中を勇者は迷うことなく進みます。

魔女が居るのは一番奥の部屋。

それを勇者は知っているからです。


勇者が魔女の部屋へとたどり着くと、魔女は笑って言いました。

「ああ、来たんだね」

勇者は笑って応えます。

「ああ、来たよ」

魔女は勇者に近づいてぐっと頭上へ手を伸ばします。

「よくがんばったね。おつかれさま」

勇者の頭を撫でた魔女は、一歩下がって勇者に言いました。

「さあ、君の役目を果たしなさい」


そして勇者は魔女を殺しました。

勇者が小さな小さな村へ戻るまでの道のりは、人々の喜びの声で満たされていました。

勇者の剣をあるべき場所に戻し、勇者は一人小さな小さな村へと戻りました。

勇者が持っているのはたった一つ、小さなナイフだけ。

それだけあればもう勇者は何もいりません。


小さな小さな村の奥、少し開けた森の広場。

たくさんのナイフが転がるそこが勇者の終わりの場所でした。


ぐさり


小さなナイフで心臓を一突き。

それで勇者の役割は全部終わりです。

勇者は最後まで笑っていました。

それが勇者の役割だからです。

勇者は役割を果たして満足して死ぬのです。

だから勇者はずっと笑っていました。


けれど勇者は知りませんでした。

勇者が死ぬ一瞬だけ前に、なぜか勇者の瞳から

水が一滴、零れ落ちていたことを。


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