猫の実
猫の実、と呼ばれる果実が、南米のとある場所で発見された。
その実を食べると、たちまち猫になってしまうらしい。
しかも、元の姿には戻れない。
動物実験の結果、猫以外の動物全員、この実を食べたら猫になってしまった。
摂取量は極少量、たとえ1億分の1グラム摂取した場合でさえも、有効、つまり猫になってしまう。
アメリカ政府は猫の実を兵器と見なし、南米の猫の実の発見地に軍を派遣し、違法に占拠した。しかし、猫の実の効果は実はそれだけではなかったようだ。
猫の実のなる木、その半径30m以内に1時間滞在するだけでも、猫になってしまう。たちまち違法占拠していたアメリカ軍の人間は猫になってしまった。
猫の実の木は、宇宙からやってきた未確認生物なのでは?
という議論がなされたが、これといって有力な説は立証されなかった。
ちなみに猫になった人間は、人間の記憶と知能を有しており、猫になった人間同士の子ども(猫が生まれる)も同様に、人間並みの知能を持つことが分かった。猫の実の木はいつの間にか、2本に増えており、4本、8本、と指数関数的に増えていった。
これを危険視した世界各国は、猫の実の木の一帯にナパーム弾、核兵器など、ありとあらゆる兵器を投入した。
だが、猫の実の木は一切傷つくことなく存在していた。
やがて世界は猫の実の木で埋め尽くされることとなり、その周囲の人間は猫になる。つまり全人類、猫になってしまった。その後、どうなったのかは分からない。
などと妄想しながら、僕は中庭に転がる野良猫を見つめていた。
野良猫のすぐそばには、不思議な形の木の実がある。
そう、これは猫の実。
なんてね。