「公園」
日常の切り取り系短編です。
「あぁぁぁぁ………いい天気だ……。」
よく晴れた穏やかな日差しの中、俺はたまにこうやって公園のベンチに座って日向ぼっこをする。
毎日の喧騒を忘れのんびりするためだ。
そうして頭を空にしていると、たまに…そう、たまに聞こえてくる会話があったりする。
『ーーうん、そうそう。…えっ?違うよ。……大丈夫、大丈夫。買い物だよ、買い物。…ん?……え?ちょ……え?店に向かってるとこだから…違うから…公園じゃないから。もう切るよ?じゃあね。』
「あいつ……。なんで分かるんだ?こわっ…。」
【怖いねぇ。場所がほぼ特定されてるって事はたぶんGPSアプリかなんか入れられてるのかな?怖いねぇ。】
間違えてはいけない事だけど、俺はのんびりするために来ているだけでここにいると変な会話が聞こえてきて楽しい…とかではないのだ。
目の前には池があり、そこではアヒルが泳いでいたり、ボートに乗ったカップルが居たりとそれぞれ憩いの時間を楽しんでいるように見える。のどかだ。
『こんなとこよく知ってたな。』
『たまたまですよ。煙草吸えるとこあんまり無いですもんね。』
『そうなんだよなぁ。居酒屋とかでもダメなところ増えてきたもんな。』
『そうっすねぇ。あんまり見なくなりましたよね。』
『この後まだ予定まで時間あるし、あそこのカフェ行きません?』
『カフェ?俺、あんまり行かないんだよなぁ。あれだろ?サイズの言い方がS、M、Lとかじゃなくて難しいやつ。』
『ふふっ。難しくないっすよ。』
『なんだっけ?で…で…デコルテ?』
『あははっ。違いますよ。デカンタですよ。』
『それ飲み屋のやつじゃねぇかよ。まったく。』
『デコルテもなかなかですよ。なんでしたっけ?デコルテって…。』
『なんだろうなぁ…。なんか出てきたんだよなぁ。』
『あの子…。携帯見ながらずっとウロウロしてません?』
『ん?そうかぁ?待ち合わせとかじゃないか?』
『めちゃくちゃ表情険しいっすよ。』
『…あんまり見んなよ。そろそろ行こう。』
【何かを察知したのかな。……さて俺もカフェに行こうかな。エスプレッソのアフォガードをグランデサイズでな。】
向かう途中、視界の端でGPSの反応が消えただろう場所をウロウロしてるのを観たのは仕方ない話。
ありがとうございました。