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影日向くんは引きこもり  作者: しろかえで
6/23

第6話 アイスランドの“トラサン” ②

今回は『お風呂回?』です。

でも杏ちゃんが可哀想なので、サラッとしか書きません。



『一緒になれたね』

あの優しい声がして

私は周りを目で追ってみた。


居ない…


私の…いや、私は

今、誰なんだろう…

その“私”の中に、語り掛けているのだ。“影日向くん”が…


改めて、洗面器を持っている自分の手に視線を落とす。


大きい


男の子の手だ…


私が詰襟なんて…


不思議…


でも襟で首が少し苦しい

この樹脂、変な感じだ。襟はホック留め? 窮屈!

今まで“モドした”人は、案外これも原因だったのかも


『杏ちゃんは相変らず面白い』柔らかな笑いを伴った声が語りかける。


『ボクの言葉でアタマに来ても、今は自分自身を“ぶっ叩く”事になるね』


そうですね! 

ため息まじりに発した声に自分自身ギョッ!してしまう。


それは初めて聞く男の子の声。

影日向くんは自分の声をこんな風に聞くんだ!


ということは

センパイも同じ声を聞いている?


不思議!!


『ハハハ 楽しんでくれてありがとう。 杏ちゃん 立つことはできそう?』



そうか… さっきは夢中で洗面器を掴んだけれど…

脚はずっと正座していて痺れた時みたいにビリビリぼんやりしている。


でも


大丈夫、“あの”リハビリの最初の時より、はるかにやさしいから…


『そうだね… そうだったね』

影日向くんは、あの事を知っているのだろうか? 微妙に言葉を濁してくれる。


『立つという事は、実際難しい。 今の状況下でもね。 ほら、体の大きさが違うから。頭の中のあらゆるバランス感覚の調整が必要なんだ。 だから逆にボクはしばらく黙って見守るよ。杏ちゃんはその方がうまくやれるから』


うん!私はできるよ! と大きく頷いてみる。


『いくら転んでも大丈夫! まあ痛いけどね。 ケガは絶対しないから』


痛いのも平気だから!


私は洗面器を脇に置いて、そっと膝を引き寄せた。



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部屋を出てみると、真業司センパイが待っていてくれた。


「大丈夫?」と“私”を見上げて聞いてくれる。


私はセンパイを見下ろす背の高さにドギマギしてしまう。

上目遣いのセンパイは、とてつもなく可愛いから


「平気です。ほら!この通り! 片手で物を抱えながら、もう片方の手で、ドアも開けられる。」


「具合は?吐き気は?」


「それも一瞬でした。後は全然ないです」


センパイは「まあっ!!」と言う顔で言葉を続けた。

「それは大変な素質ね!!」

「素質?!ですか?」


「そう! 影日向くんは誰でも着れるわけではないの」

それからセンパイはクスッと微笑まれた。


「影日向くんを着た人には分かる様になるの。『あぁ!この人は影日向くんを着ることができる』って。 だからあの時、新入生の勧誘合戦の時、杏ちゃんを捕まえて離さなかったの。私の見込んだ通り!!杏ちゃんは逸材!」


私は、なんだか、ちょっと複雑な気持ちで頭を掻いてしまう。

あ、髪、短い。


そんな私を見て、センパイは私の頬(正確には影日向くんの)に すーっと手を伸ばして笑顔の花を咲かせる。


「私は杏ちゃんの事、大好きだよ。影日向くんの事は関係なくね」


センパイ! その笑顔!激しく反則です。



--------------------------------------------------------------------


センパイに案内されて、お台所に入ってみると、ちょうど煮魚が作られているようで、いい香りが満ち溢れている。


センパイもエプロンを取って、上下スウェットに髪を束ねて調理している人の横に立った。


学園長先生??!


学園長先生のスウェット姿なんて、ウルトラシークレットレアだ!!


なんて思ってるとこちらを向かれて、まるでお母さんの様に微笑まれた。

これもウルトラシークレットレアだ!!


「おかえり 影日向くん!」


ああ!そうか!私か


「はい」


「具合はどう?」


「大丈夫です」


「良かった。お食事できそう?」


「はい! もちろん! お昼も食べてないし! 煮魚のおいしそうな匂いがたまりません!」


「良かった! 具合がよくなくても食べやすいようにと酢の物なども作ってみたわ」

横に立ったセンパイが解説してくれた。


「学園長先生は私達に起こった“吐き気”を一種の“つわり”の様なものとお考えになっているの。 ひとつのカラダにふたつの命が宿っているって感じですから。そうそう!私も酢の物は食べることができたの…」



なるほど!だから消化に良かったり、酸味のあるものを作っていただいたのか!


「ありがとうございます。たくさんいただきます!」


「元気な“影日向くん”でなにより。今日、食べたかった『購買のカツサンド』もご用意したわ」


「それは!! 本当にありがとうございます。」


大きく返事しておふたりに笑われてしまった。



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お箸がうまく使えない。


箸使いはお母さんにキチンとしつけられたのに… おふたりの前で、正直 恥ずかしい。


「気になさらなくてよろしくてよ。初めはお箸がうまく使えないのも“影日向くんあるある”だから」


センパイは涼やかにおっしゃるが、目の前の煮魚が悲惨な状況で悲しくなってしまう。


すると驚いたことに、学園長先生が私のお皿をお取りになられて、煮魚をきれいに分けてくれた。


「私は少し意地悪なので、今日、煮魚を出させていただいたの。ほら、リハビリと同じように箸使いも練習が必要なものだから。 だから今日はこのくらいにして、スプーンですくって召し上がりなさい」


これが“鬼の学園長先生”のお言葉なのだろうか?


それとも影日向くんに深い深い愛情をお持ちなのだろうか?


本当にお母さんのようで、私は小指で(太いけど)目尻を抑えてしまう。



「さて! 影日向くんにはもう一つすることがあります」

いつもの学園長先生の口調に戻られた。


「あぁ!今日のメインイベントですね」とセンパイがいたずらっ子の目になる。


嫌な予感…



「お風呂に入って、さっぱりとしてもらいます」と学園長先生は事も無げにおっしゃる。


センパイはククッ!笑って「もらいます」と反復した。


ヤバい!!!



--------------------------------------------------------------------


脱衣室にセンパイと二人きりだ。


詰襟のホックは割と楽に外せた。


でもボタンが??


「男の子は“右前”なの」


あぁ!そうか!逆か


四苦八苦しながら詰襟とワイシャツを脱いでセンパイに渡す。

と「ズボンも」と言われてしまう。


私はかなり()()()()ベルトでまた四苦八苦してしまう。


背中の冷や汗を見られてしまいそう。



まだ、センパイは目の前にいらっしゃる。



「いえいえいえいえいえ!!! これ以上はホントに!」

影日向くんの声が震えてしまう。


だって、さすがに下半身のゴロゴロしたものを意識せざるを得ない。


「当然だけど、私は見慣れてますわよ」


お願い!!! そんなことサラッと言わないで!!


「お願いします。ホントにホントに恥ずかしいので」


と、ようやくセンパイを外に出して


なるだけ見ないようにして

下着に手を掛けた。


「!!☆△+√∑●◇×5%&@#$!!!」


声にならない声を上げた!!

それも男声で!!!



お風呂場に入っても


「ギョッエ~!!」とか「ヒェ~!!」とか叫びっぱなしで


湯船の中でガックリ落ち込んだ…



--------------------------------------------------------------------


お風呂からあがって、何とかパジャマは着たけれど


穴を掘って埋まってしまいたいほど落ち込んでいると

学園長先生がジュースを手渡して下さった。


「まぁ 今までにはショックで泣き出してしまった子も何人かいたわ…」

洗濯かごを手に持ったセンパイは

「あら?そうなんですか?」とちょっと驚かれたようだ。


「あなたくらいよ。最初の時 お風呂場でゲラゲラ爆笑したのは」


学園長先生はちょっと肩をすくめて私の方を見返した。

「それが、泣き出した子も時が経つとシャツとパンツで廊下をウロウロするんだから…」


センパイのいたずらっ子の目がキラリ!と光る。

「影日向くん“あるある”ですね」


「そう!影日向くん“あるある”」

そう言って学園長先生は苦笑された。




お休みしている間も杏ちゃんや、奏ちゃんが頭の中で色々動いていて、いくつかの『鍵』を渡してくれました。

「あぁ!奏ちゃんの言動はここから来たのか」とか「杏ちゃんにはこういった事情があったのか」とか 色々気付いて、ますます二人のことが好きになりました。(*^_^*)


ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、切に切にお待ちしております!!


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