悪役令嬢は登場しませんでした
大悪魔に対峙する冒険者に偽装した月の光の兵士たち。
アレイシアとグラハムが兵士たちに混じる。
「お嬢ちゃん怪我無かったか」
「ご心配をお掛けして申し訳御座いません」
アレイシアはてっきり怒られるかと思っていたが、兵士たちの態度は一様にほっとしていたようである。
皆、マーベリック伯爵邸でアレイシアから近接格闘技術を学んだ兵士たち。
もちろん、マーベリック伯爵邸でしか提供されないレシピで作られた昼食やお菓子を楽しんだ男たちである。
男たちにとってアレイシアは美味しい食事とお菓子の女神である。
アレイシアの隣の同じ年の少女フローリアが話し掛ける。
「何なのよ、あの技。見たこと無いわ、魔法なのかしらアレイシア」
「フローリア様、忍の術で御座います」
「なにそれ、相変わらずあんた色々面白い事するわねー」
学生だった時、ある事件がきっかけで友達になった二人。
公爵家の娘のフローリアは、アレイシアが許嫁や恋人がいるに関わらず男子学生たちに粉を掛けまくった平民の可愛らしい少女の問題で多くの貴族の女子から悩みを相談されていた時その場にいた事があった。
女の子にとって色恋沙汰は大好物である。
ましてや自分に関係無い話であれば食いつかないわけがない。
話を盛りまくる友人たち。
話を聞けば聞くほど義憤に駆られるフローリア。
もう止められないと本郷は思った。
フローリアと平民の少女に接点は無かったが、友人たちのためにその少女に一言言っておこうと動き出そうとしたときアレイシアに止められた。
この時まではアレイシアとフローリアは友人ではなかった。
フローリアは貴族から騎士、兵士、冒険者にいたるまでやたらめったらモテまくっていたアレイシアが正直なところ嫌いだった。
上位貴族や騎士たちと気さくに話したり兵士たちと肩を叩き合ったり冒険者たちと拳を突き合わせているのをよく見かけた。
時折アレイシアに嫌みを言ってみたりしたが、キョトンとするだけでよく分かっていない天然さんな上に友人も多かったので知人としての付き合いにとどめていた。
ちなみにアレイシアは騎士たちや冒険者たちと普通に男同士のような会話をしていただけである。
平民の可愛らしい少女は、貴族の女子たちからいろいろ注意されていたが男子学生は彼女がイジメにあっていると勘違いていた。
アレイシアもこの少女は知っていたが、恋から意識的に遠ざかっていたので関わらないようにしていた。
また本郷も色恋沙汰にはとんと縁がなかったのでドーデモイイと思っていた。
だが、フローリアが多くの級友の代表となって平民の少女を問い詰めるといき巻いていたのは見過ごせなかった。
このままではフローリアが悪役になってしまう。
知り合い程度ではあったが、フローリアの立場が悪くなったり平民の少女が公爵家に諫められ怯える様子も見たくなかった。
本郷に相談すると両方の言い分をよく聞き裏をとり、それから考えようと言われ行動した。
特に平民の少女に問題がなかった。
誤解され続けるのも何だろうからと本郷が解決すると申し出た。
どうするのか聞いたが俺に任せろと言うだけだった。
一晩よく寝たアレイシアが目を覚まし学校へ行くと全てが解決されていた。
アレイシアが魔法のように問題を解決したように見えたフローリア。
以来フローリアはアレイシアに色々相談事を持ちかけたり一緒に遊ぶようになった。
時折二人で行動すればアレイシアが男性たちと何を話していたか分かったフローリア。
今まで知らなかった世界が広がる。
気がつけばマーベリック伯爵邸で行われている戦闘訓練に参加していた。
そこで腕を上げるフローリア。
剣術においてはアレイシアを軽く上回るようになった。
成人するとマーガレットから月の光にスカウトされた。
二つ返事であった。
フローリアはもともと男気溢れる少女でもあったのである。
ちなみに将軍の心配したとおり未だに婚約者はいない。
自分より弱い男には嫁に行かない宣言をしてしまったからである。
アレイシアの父アレックスは公爵からどーしてくれるんだと散々嫌みを言われアレイシアの母マリアンヌの胸の中で泣いていたが、マリアンヌが公爵に話をつけに行くとその後何も言われ無くなった。




