やっぱりここは地獄だと思いました
ミューラーの尖った右手の爪がグレッグを襲う。
滑り込むアレイシアが刀で受け止める。
「邪魔をするなー!」
今度は左手の爪が迫る。
アレイシアはくるりと身体を捻り刀で左腕に斬り込む。
ミューラーの左腕が断ち切られる。
苦悶の叫びを上げるミューラー。
『あれまあ痛みはあるのかよ』
『本郷さん早く!』
アレイシアは倒れているグレッグに肩を貸そうとする。
『お嬢、その前にマキビシ、マキビシ!」
アレイシアは慌てて腰に付けていた箱からマキビシを取り出しミューラーに向かって蒔く。
ミューラーが落ちている自分の腕を一気に食べ始めると左腕の周りに黒い霧がまとわりつくき左腕が次第に再生していく。
『ヤバい、ヤバいよ!お嬢。やっぱ地獄かね、ここは』
本郷のぼやきを無視して再度グレッグを担ぎ上げようとするアレイシアだが非常に重い。
どうなっているのかと見れば気を失ったまま大剣を握っている。
『めんどくさい男だよ、あんた!』
マキビシを踏んで動けないミューラー。
「アレイシア、俺が担ぐ」
グラハムがグレッグを担ぎ上げる。
アレイシアはグレッグの手を無理やり開いて大剣を投げ捨てようとするが重いので放っておくことにしたが本郷は相手に武器を与えるのは不味いと思い周りを見渡す。
壁に隠れて戦闘の様子を伺う野次馬が数人いた。
服装を見ると冒険者のようである。
「おい!そこのおや・・・」
と言おうとするがアレイシアに止められる。
「おじ様!この剣をお願いします」
冒険者たちはデレデレしながら大剣を急いで担ぎ逃げていった。
本郷は大人になったアレイシアを頼もしく思った。
『お嬢、あれだあれ使おう』
『あれって何ですか本郷さん』
『あれだって、ほら煙の出る奴』
アレイシアはグラハムを追いかけながら背中に背負った小さなバッグから丸いものを取り出し次々とベルトにこすりつけた。
数個の丸いものはもくもくと煙を吐き出し辺り一面煙で視界が覆われる。
グラハムが神殿の陰にグレッグを横たわらせる。
気がついたグレッグが口を開く。
「あんたは一体誰だ」
「通りすがりの冒険者さ、気にするな。あんたはここで休んでおくんだ」
グラハムはそう言って神殿を後にする。
これから大悪魔という怪物と戦う。
グラハムが魔物除けの笛を吹くと隠れていた月の光の兵士が次々に姿を現す。
アレイシアの使っていた見たこともない武器が気になるがとにかく怪物を倒してからだと思うグラハム。
「まったくとんだお転婆淑女様だよ」
敵は強大だが何故か頬が緩んでしまうグラハムであった。




