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神の猟犬と憤怒の悪魔

建国祭の開始を王が宣言する。


待ってましたとばかりに花火が打ち上げられ高らかに音楽が奏でられる。

神殿の鐘が打ち鳴らされ人々が街中に溢れかえる。

色とりどりの服装に肌の色、まるで世界中の人が集まっているようである。

あちらこちらの神殿で結婚式が始まって幸せそうな花嫁たちがみんなに祝福され光が溢れかえる。


地獄に行くはずだったのに本当に俺はここにいても良いんだろうかと思う本郷であったが緊張は隠せない。


いつもとは違う動きやすい服装に大小の日本刀を差しじっとグレッグの動きを追っていた。


「アレイシア、なんとか子ども達を救出出来た」


「怪我人は」


「トラファルガーの旦那が腕を怪我した。他は問題ない」


「怪我の具合は」


「心配するなぴんぴんしてるから安心しろアレイシア、だとよ」


ホッと胸をなで下ろすアレイシア。

防刃能力に優れる月の光の戦闘服を着ることができない今度の作戦で唯一の心配ごとだったがやはりトラファルガーでも怪我を負った。


グラハムがアレイシアに囁く。


「グレッグがアジトに突入する、後はあいつ次第だ」


ミューラーが生け贄の子ども達を攫った事が月の光の情報網に引っかかった。

悪魔信奉者が作った犯罪組織に潜み行方が定まらなかったミューラーであったがとうとう尻尾を出したと思い神の猟犬に情報をそれとなく流しつつ事前に子ども達を救出したのだ。


ミューラーは待っていた。

愛するグレッグの魂を。

そのために同志に取り入り洗脳し騙して彼らの魂を奪った。

魂を奪う事は魔力を奪うという事だ。

強欲な貴族や商人、犯罪者の魂の力は大きかった。

奪った魂の憎しみや支配欲、残虐な行為を求める声がミューラーを支配する。


まだ足りない。


祝福の光に満たされた今このときこそが執着してきたグレッグの魂を穢し食い散らかすには絶好の時。

だからそれまでじっと待っていた。

子どもを攫った情報をわざと流した。

子どもを救いに焦って来るグレッグの顔を見たかったが横槍が入った。

まあいい、それでも奴は来るとミューラーは確信していた。


上位神官だったグレッグの魂を喰らい最上位悪魔となって自分を棄てた最後に残ったアルカディア教神殿をこの国をこの世界を蹂躙し滅ぼす。


神は何もしてくれなかった、いや我から祝福の力を奪った。


悪魔は我に力を与えてくれたばかりがこの体を更に強大にしてくれるという。


憎しみと欲望と憤怒がミューラーの体を徐々に変えていく。

魔力が溢れ黒い霧に包まれ中から巨大な尾が飛び出てくる。

禍々しい黒い翼が天井を突き破り鋭利な爪を持つ太い腕が壁を凪払う。

突き刺さっていた剣がズルズルと身体から取り出されていく。


グレッグは崩壊する建物から現れた真っ赤な瞳の大悪魔となったミューラーに対峙する。


「ミューラーだな・・・子ども達はどうした」


「喰ったよ、とても柔らかくて美味しかった」


グレッグを動揺させる嘘。


動揺するグレッグ。


「「貴様を殺す!」」


ミューラーが巨大な尾をグレッグに向かって叩きつける、グレッグは素早く間合いを取って回避し身を構えなおし巨大な剣の鍔を握った。


喜びに沸いていた王都の下町に人々の悲鳴が上がっていった。




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