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託された野望と花嫁衣装

王国建国200年に当たる今年の建国記念フェスティバルは盛り上がっている。


国の威信を懸けた建国200年祭。


建国祭を待つまでもなく王国は賑やかになっていた。


沢山の露店、賑やかな路上音楽。

劇場では新しい演目がひっきりなし。

歌劇場では新たに生み出された大衆音楽のコンサートに若者が熱狂。

比例するように楽器の売上は鰻登り。

さらに今までパトロンがつかずに苦労していたミュージシャンも作曲家として名声をはくしたりステージに駆り出されたり音楽教室の仕事に忙殺される。


劇場や歌劇場の数が足りないと苦情まで出ていた。


大衆小説というものが生み出され影響を受けた人々が自らペンを握りしめる。

新しい物語が生まれ本の生産が追い付かなくなると印刷技術がどこからともなく提供されて需要を満たしあらたな読者が生まれた。


またひっそりとマンガというものが深く静かに浸透している。


アレイシアの着ている服に刺激され多くの服飾デザイナーも生まれ店ができた。


平和が続くこの国で大衆音楽の花が開き、次々と新たなファッションが生まれている。

また物珍しい食べ物やお菓子が怒濤のごとく提供されて舌が休む暇がない。


教育や文化の下地があったのでほんのしたきっかけで物事は一気に進んだ。

こんなやり方をしてもいいんだ、これをやってもおかしくはなかったんだとみんなが意識を変えていった。


マーデラス王国は100年ほど前から法治国家であり自由で教育熱心な国である。

でなければマーデラス王国を取り囲むように存在する他国からの侵略に国家国民が一丸となって抵抗できない。

住んでいたい国だからこそ守りたい国民、住んでいたい国にするのが為政者の役割とお互いに補い国を良くする為に知恵を絞る。


国会は貴族院と衆議院があり政党も存在する。

貴族院は衆議院の決定を再審議させるだけの力しかない。

また宗教の拘束も緩いので人々は自由を満喫している。


権力を握るものが無能であれば国が滅ぶという大方針が掲げられているマーデラス王国。

昔からそれだけ他国の勢いも見過ごせない国際情勢なのだ。



本郷は目の前で完成に近づく隣り合う二つの野外ステージを見ていた。


『とうとうここまできたよ、お嬢』


『これが建国200年祭の目玉の音楽フェスティバル会場ですね、本郷さん』


『まだヘヴィメタルは無理だがポップロックまで持ち込めた。これからハードロック、ヘヴィメタルを少しずつ聴いてもらう。まだまだ先は長い』


本郷は音楽に関してはまったく商売気がない。


音楽は本郷にとって夢中になってしまうものなのである。


音楽フェスティバル開催に夢中になっている本郷ではあるが目の前に行き交う女性たちのファッションを注意して見れば本郷の野望が再燃するであろうことは必然と思うアレイシア。

最近アレイシアは男子禁制であるならばメイド喫茶も問題ないと思うようになっていたが幸いにして本郷の野望はここのところ全く聞かされる事はない。

だがなぜそれに需要が見込めるのか理解はできないのであった。


アレイシアの思いとは裏腹に本郷は心に野望を未だに秘めていた。


アレイシアの目がある限り野望が達成される事は無いだろうと思った本郷はアレイシアが寝てしまう夜間にメイド喫茶に関するありとあらゆる知識を詰め込んだ一冊の本を書き上げ、ある貴族に託した。


マーベリック伯爵邸に訪れたその貴族はじっとメイドを観察していた。

同志にしかわからないものを感じた本郷。


本郷は自分の持つノウハウを全て書き込んだ本を厳重に包装しその貴族へ贈った。

包装の裏には『新しい使用人服における一考察』とだけ小さく記し脇に更に小さく可愛いメイド服のデザインを書き込んだ。


自分ができなければ誰かにやってもらう。

大騒ぎになったライブ騒動で今真横にいるハーシュレイ侯爵に助けてもらった事から学んだ事である。


アレイシアは音楽フェスティバルの主催者であるハーシュレイ侯爵に挨拶をすますとある神殿に向かった。


「これが今回の結婚式の花嫁の衣装ですがどうでしょうか」


小さな神殿を預かる神官が机いっぱいに広げられたデザイン画に目を見開いた後に細部を宗教的しきたりに反していないか確認する。


「問題ありませんよ、アレイシア様」


「良かったー。神官様ありがとう御座います。花嫁になられる女性からぜひこれでといわれておりましたのでホッとしました」


「ふむふむ、建国祭に合わせてここで結婚式を挙げるに相応しい装いですよ」


少し派手かと思ったが野暮は言わない神官であった。


建国祭に合わせてここ以外にも多くの神殿で結婚式が執り行われる。

今年は特に多いことだろうと神官は顔をほころばせながら祝福の光が舞う光景を想像した。








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