切れない縁と勘違いし続ける侠客
聖女マリアンヌと娘のアレイシアは常に貴族や神官、平民の中の悪魔信奉者たちから狙われていた。
聖属性の魔力を持つ者を苦しみの果てに殺し魂を食らえば悪魔となれると記された密かに伝わる悪魔教教典、悪魔信奉者たちは聖属性を持ち治癒魔法などを使う女性を食らい何人も最上位とはいかないが悪魔となった。
むろんその前に月の光や神の猟犬により処分される者の方が多かった。
それをくぐり抜け悪魔になった者も全て神の猟犬や月の光の兵士に葬り去られた。
彼らに殺されない為には膨大な聖属性の魔力を保持する聖女の魂を喰らい最上位悪魔もしくは大悪魔となり強大な力を手に入れ国を支配する事。
聖女として膨大な魔力を持つマリアンヌ。
その子供のアレイシア。
まだアレイシアの魔力判定はされていなかったが当然のようにアレイシアにも膨大な聖属性の魔力が備わっていると考えた悪魔信奉者たち。
悪魔信奉者としてどうしても欲しい膨大な聖属性の魔力。
狙いやすいのはまだ子供のアレイシア。
ある悪魔信奉者はもっともっと力が欲しかった。
貴族の魔力保持者であり性格は残忍で容赦ない統治を行い領民から突き上げられた。
マーデラス王国は情報を元に貴族の悪行を表は国として裏で月の光が調査に入り証拠を押さえた。
焦ったその貴族はついに悪魔となりその力で妖精を操りアレイシアを誘き出す。
この時アレイシア、10歳。
なんとしてもアレイシアの魂を食らい出来れば最上位悪魔、せめて大悪魔となり力を手に入れなければ単なる貴族として断罪の憂き目にあう。
姿の見えなくなったアレイシアを心配して父であるアレックス・マーベリック伯爵は国の機関や自分の家の関係者全員のみならず冒険者たちにも捜索を依頼したがなかなか見つけられない。
日に日にやつれていくマリアンヌ。
聖なる輝きを見ることが出来るのは竜だけである。
黒鋼しか竜を知らないマリアンヌ。
そもそも竜自体会ったこともないし会おうとも思わないのがこの世の者の大半である。
ひたすら黒鋼に救いを願うマリアンヌ。
森に迷い込んだ挙げ句に悪魔に操られる魔犬に襲われ助けを求めるアレイシア。
見知った魔力に起こされ導かれる黒鋼こと本郷の魂はこうしてアレイシアに憑依したのであった。
アレイシアを喰らおうとした貴族は月の光により葬り去られた。
国の裏で起こった出来事であり、貴族もしくは背教者が主の悪魔信奉者が起こす事件のため全て闇から闇に葬り去られていった多くの出来事の中の一つの事件である。
『おかしい、ここは地獄であるはずなのに』と、未だに閻魔様の導きでアレイシアに憑依したと本郷は思い続けている。
幼き頃の神々谷レイジの魂に憑依し30年を超える年月を日本で日本人として過ごした黒鋼。
しかも出逢う人達はみんな濃い人たちであった。
見知らぬ世界で長く長くさまよい続け疲弊し自分が誰であったかも分からなくなった黒鋼にとって安住の地に染まり自らの由来を忘れさせるには十分な月日と人の出会いであった。
だが少女との縁は自分が誰であったか忘れようと、また世界をまたいでも切れることはなかったのであった。




