表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/103

閻魔様の声

新宿歌舞伎町桜通りの一角で神竜組組員本郷レイジは血を流し倒れている。


黒鋼の魂が本郷の身体から離れていく。


神々谷レイジの魂と混じり合い長く日本人として生きるうちに本郷の記憶にすっかり塗り替えられている黒鋼の魂。


眼下に倒れる自分の姿を眺めていると仕事着の姉さんや女性店員が土砂降りの雨も構わず本郷に泣いて縋っている。

後から神竜組の組長以下若頭や兄弟分がかけこみその場を仕切る。


「レイジー!」


若頭の叫びが聞こえる。


救急隊員が担架に本郷を載せる。


「お願いだ、お願いだからレイジを助けて!」


半狂乱の姉さんと泣き叫ぶ女性店員たち。


警察官が組長に何かを聴いている。


さよならだ。


ろくでもない自分を受け入れて任侠として生きる道を与えてくれた日本で最後の任侠博徒たち。

ヤクザものと言われまた自分自身そう卑下しても本業の伝統的博徒の道を歩んだ血がつながってはいないが熱い絆で結ばれた親と兄弟。


自分を救ってくれた医師の顔が浮かぶ。

すまない先生、でも俺は任侠として最後まで来れたと呟く。


本郷はヤクザ者ではあったが任侠であった。

誰にも言わないし言ってしまえば法律で裁かれるので救われた人達も口を噤む。

任侠道に貸し借りは無い。

本郷的には全て気紛れに見ていられない人達を救ってきただけである。


『牧の兄貴、今からそっちに行く』


馬鹿言っちゃいけねえ相棒、鬼の本郷がこんなもんでこっちに来ちゃいけねえよ。


そんな声が聞こえた時だった。


『娘を、どうか娘をお救い下さいまし!お願いで御座います黒鋼様!』


本郷の消えゆく魂に何かを願う女性の声が聞こえた。


何となく聞いた事のある声だがそれが誰だか分からない本郷。


本郷の魂が何かに吸い寄せられていく。


救いを求める声に耳を傾ける本郷。


『娘、娘を救えと・・・』


娘を救ってほしいと願う魂に黒鋼の僅かな記憶が呼び覚まされる。


『行くのじゃ』


黒鋼の声を『これが閻魔様の声かー』と勘違いし呑気に構える本郷。

地獄に行くのが分かり切っているが相手が閻魔様なので一応確認する。


『どこに・・・いくんですか』


『光っている方に向かう。聖女の娘を救わなければ』


訳の分からない本郷。


『娘って』


『娘を救って欲しいという声が聞こえんのか!とにかく人助けじゃ』


地獄に落ちても任侠博徒本郷である。

閻魔様の言葉に一肌脱ぐ事にした。


どうやら事は緊急の様子である。


今更救いを求める声に向かっていっても遅いだろうと判断した本郷は似ていると感じる魂を探す。


ひときわ輝く光が2つ見える。


『あれじゃ!』


もしかして天国行けるのか、いやいやそれはねーよなーと思いつつ本郷は閻魔様の指示通りに指し示された光に突入していった。


気がつけば目の前に真っ赤な毛並みの凶悪な犬のようなものがいた。

やっぱり地獄かあと思う本郷。


しょうがねーなーと思いながらも救わなければならない娘を探す。どこを見ても娘の姿は見えないが取りあえずコイツをどうにかすればいいんだろうと体を動かす。


動かす身体は手が小さく脚も細かったが俺はきっと地獄の小鬼にでもなったんだろうと思いいつも通りに技を繰り出す。


犬のような動物の後ろ足を持ち上げパイルドライバーでとどめを刺す。


既にアレイシアは気を失っており、肉体も限界であった。

閉じていくアレイシアの瞳。

閉ざされていく本郷の視界。

なにがなんだか分からないまま本郷だけが取り残される。

まだおかしなものがいると思い緊張する本郷。


『それにしたって娘さんっていうのはどこにいるんだか。閻魔様よー!』


本郷の問い掛けに応えはなかった。


元の世界に戻るためにかなりの魔力を使った黒鋼の意識はまた消えていった。

疲れが一気に押し寄せ気を失う前に本郷が思った事は地獄はなかなか厳しい、これからやっていけるんだろうかという心配であった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ