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さすらいの果てに出会ったヲタク

黒鋼の魂はこの世界を離れていった。

本来であればこの世界に留まり何かを生み出すものとなるはずだった。

だが聖女の治癒魔法により魂そのものが治癒されたことによってイレギュラーが発生した。


他の世界に流れ着いて魂の拠り所を求めた黒鋼。

神というものを意識できる知性体にしか黒鋼の力を受けとめられない。

さまよい続ける黒鋼。

多くの依り代候補に出会うもその地に生きる人々の信仰心に拒絶される。

他の神を認めない心の壁が黒鋼の魂を拒絶する。


長い旅だった。

記憶は薄れ自分が何者かも分からなくなる程の長い長い旅だった。

数十億という人の世界で拒否され続けた黒鋼がやっとたどり着いた安住の地。

それが八百の神と共に生きる日本であった。

黒鋼は日本人の子供として生まれ変わった。


黒鋼が依り代とした死にかかった子供。

生まれてまだ3ヶ月にもならない。

消えかかる命にそっと囁きかける。


『生きたいか』


『○×あケク△って・□!』


何を言っているか分からなかったが生きたいらしい。

ひたすら母を求めて喘ぎながら泣く子供。

子供の目に父母の顔が映し出される。


『力を貸そう幼き子よ。我とともに生きようぞ』


黒鋼の魂が子供に憑依すると同時に体調を回復していく。


驚く医師。


「いったい何が起こったんだ」


医療器械が示す値に頭を抱える。


「先生!先生」


子供の母が小さな手を握りながら医師に問いかける。


「ご安心くださいお母さん、レイジ君はもう、大丈夫です。どうやら峠は越えたようです」


泣き崩れる母の脇で医師に向かって何度も頭を下げる父。


「ありがとうございます!先生のおかげで子供が!」


戸惑う若き医師はそれでも笑顔を作る。

本来であれば死んでいてもおかしくなかった、いや死ぬ可能性の方が高かったのだ。

だが生きている子供。

原因を究明したいところだが今はそれどころではないと思った医師は日頃の彼らしく結果オーライだからいっかーと子供の両親と共に喜びを分かち合うことにした。


その後、子供は7歳までこの医師から頻繁に検診を受け続けた。


ちなみにこの医師は学生時代コスプレした姿で手術台に横たわり『ヤメロー、俺にいったい何をするー!』とやっていたところを教授に見られて怒られた過去があった。


『何でこんな真似をしてるんだ君は!』


『通販で買ったこのベルトの出来が良すぎたんです、教授』


『馬鹿かね君は・・・』


そんな青年であったが学生時代から優秀であるし医師としても有能である事だけは確かである。


ゆえにみんなに尊敬されている。


神々谷レイジ、後の本郷がネタに走るようになった原因であった。





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