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好きな事より出来ること

何となく伯爵邸の中の温度が2度ほど上がったような気がするのは気のせいだろうかと思うアレイシア。


熱いよねー、そりゃ熱いよ。なんていうか熱気、情熱的に燃えてるっていうの、甘い炎って言う感じ。炎に味なんてある訳ないけどさ。あー!あついあつい!あつくこちとらとけちまうよー!と中学生のようなことを大人であるので口には出さないが甘い青春時代などなかった本郷は若干後ろ向き(壁に向かって体育座り)である。


アレイシアと本郷の感じる熱さの原因。


本郷はルークとサラのほーりんらぶ、アレイシアはリビングのドアの向こうの訪問者から感じていた。


執事のクレイがドアを開くと眩い光と熱気がアレイシアを包む。


「アレイシアちゃん!待ってたのよ!」


「アレイシアちゃん!ごめんなさいね急に押し掛けてきちゃってって言うかライトニングちゃんと契約したとき以来だったかしら、ホントお久しぶりよねー。あらあら、そう言えばルークちゃん見えないけどどうしたの。ねえ、どうしたの」


白い生地に金の竜の絵柄の入った男物の着物を着たライトニングと、青い生地に桜吹雪模様の着物を着こなすハーシュレイ侯爵が両手を広げて立っていた。


輝くような美男子二人の後ろで困った顔の父のアレックスといつものようにお茶を飲んでいる母のマリアンヌ、ニッコリあいさつする付き人のフレディーに楽器を持ったミュージシャンらしき男女が7,8人見える。


アレイシアは二人のオーラに一瞬後ずさったがクレイが体をそっと支えてくれる。


熱いというより光に包まれた世界に本郷も圧倒される。

こういう光景は学生時代にアイドルコンサートに行っていた時によく見た。

アイドルたちは影という影をライティング技術で徹底的に消され暗い客席から見れば天上人のようであった。

ステージから見れば数多のペンライトが一面に広がる夜の海のように見えたのかもしれない。


組員になってからこういう輝く世界と随分疎遠になっていたものだと感慨深く感じる本郷。


アレックスに促されてソファーに落ち着く一同。


「えっと、侯爵様にライトニング様のご用件と言うのは・・・」


「そうそう、それいわなきゃね。ライトニングちゃんお願い」


「わかりました。要件って言うのは新曲、この前アレイシアちゃんが口ずさんでた新曲のことなのー。侯爵様も気に入ってくださってこんどのステージで発表する予定なのよー」


『本郷さん・・・』


『あれかー、冗談だったって言ったら』


『いーえーまーせーんー』


パーッと明るくするならサンバでしょ、サンバと言えばブラジルでしょ。いやまあボサノバもあるけどとか思いながらリオのカーニバルをステージで再現したらお祭りっぽくて楽しいかもという冗談をライトニングに適当に言ったつもりの本郷。


『旦那~、ホントにステージでやるつもりなんですかい』


『あったりまえじゃないの!夢よ!みんなに夢を見せてあげるの!』


本郷と会話する口振りもすっかり業界人のライトニング。


『わかりやした。でもってその新曲で相談ってー事ですが、なにがどうしたってんでさー旦那』


『本郷ちゃんの口ずさんだ曲を譜面に起こして色々アレンジとかしてみたのよー、公演も近いんだけど何かが足りないって言うのかしら。とにかくちょっと聴いて頂戴な』


ライトニングはすっと立ち上がってミュージシャンたちに向かってパンパンと手をたたく。


「お願いね、みなさん」


曲が演奏される。

普通にサンバ曲である、と言うか適当に口ずさんだメロディーから良くここまでの曲に仕上げたものだと感心する本郷であったが確かに何か物足りないような気もした。


楽器隊は弾けるリズムに相応しい構成である。


『お嬢、どう思う』


『明るくて楽しいですね』


『踊りたくなったかな』


『そこまでは』


『なんで何だろうか』


『曲に取っ掛かりっていうんですか、それが無いような気がします』


取っ掛かりねーとか思いながら楽器隊を眺めるアレイシア(本郷)。


『お嬢!ホイッスル・・・ああ、なんていうか。こうピーとか鳴る笛あるかな!』


『魔物除けの笛でよければ』



アレイシアの吹く魔物除けの笛を合図に楽器隊が陽気な曲を奏でライトニングが歌う。

アレックス・マーベリック伯爵夫婦に使用人一同がハーシュレイ侯爵率いるライトニング楽団の奏でるサンバについつい体を揺らす。


本郷には見えた。


花が咲き乱れる木々の描かれたバックドロップをバックに踊るダンサーたち。

そこに紙吹雪が舞い、艶やかな着物姿で登場するライトニングが。


自分は恋愛よりもこういうものが似合っているんだなーと思う本郷であった。







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