ひきずる弟と片思いのメイド
ルークが婚約した。
相手はメイドのサラである。
サラはルークよりも二つ上のこれまた超絶美少女である。
超絶美少女だからルークに見初められたというわけでは無い。
ルークの初恋の相手のレイアに比べれば結構性格がキツいと言うか自分に厳しく他人にも厳しいのでルークからすれば怖いお姉さんであった。
少しでも服が乱れていたりマナーが成っていなければ注意される。
使用人の間でも仕事に厳しい融通の利かないメイドで通っていたが、他人の失敗をさり気なくフォローしたり病気になった同僚の看病を積極的にしたりするので尊敬はされても嫌われてはいない。
ちなみにサラはルークが大好きであるが片思いと自分の中でけじめはつけていた。
そんな二人が婚約したのはマクシミリアンがアレイシアと婚約した少し後であった。
男の子の多くがそうであるようにルークも恋愛においては未練がましい。
小さい頃から慕っていたレイアが突然嫁に行ってしまったショックが未だに尾を引く。
レイアの飼っていた猿の名前を決める裁判でレイアの代理人弁護士としてたち姉のアレイシアと争い見事に勝利を納めその勢いでレイアに婚約を申し込もうとした矢先に裁判官のゴルドに横からさらわれたトラウマがあった。
昼は学生として学び、夕方から王立指圧学院の校長として後進の育成に精を出し休む暇など無い。
最近は法律の勉強も始めた。
ひたすら将来の自分のあるべき姿を模索する。
そんなルークであってもふと訪れる静かな時間がある。
小さいときからのレイアと過ごした日々が頭に浮かぶとなんとなく姉の部屋を訪れる。
アレイシアのベッドに横たわりグダグダとレイアとの思い出を語るルーク。
レイアに抱っこされたり膝枕してもらったり、熱を出してベッドで横になっていれば食事を口まで運んでくれたりなどなど。
はっきり言えばレイアは全ての男の子の理想の女性であった。
アレイシアはそんなルークの話を適当に受け流しながら机に向かって格闘していた。
原稿の締め切りが近いのであるがどうにもこうにも話が進まない。
本郷から何時までもネタを受けるわけにはいかないとオリジナルに挑戦している。
出だしは調子よく出版社の編集から売れること間違いなしと設定も含めてベタホメされたのだが上手く話を収束できないでいた。
はっきり言えば伏線の回収に悩んでいた。
そんな姉にお構いなくレイアの話を続けるルーク。
ここで癇癪を起こしては淑女として失格であるとアレイシアは自制するもイライラは募っていく。
『お嬢、気分転換に外にいこうや』
『そうですね本郷さん。ギターを持って行きましょう、何曲か弾けるようになりましたし』
アレイシアは天井を見上げながらレイアとの思い出に浸るルークに呆れながらそっと部屋を出て行った。
外はかなり冷え込み雪がチラチラと舞ってきていた。
僅かに積もった雪が辺りの音を消す。
本郷はこんな日にぴったりな曲をアレイシアと共に練習していた事を思い出す。
生ギターの綺麗な音色にアレイシアの声をのせてロマンチックな曲が奏でられる。
メタラーの本郷でもこんなロマンチックな曲を知っているだなんてとアレイシアに驚かれた曲である。
最後のコードを弾き終わると後ろから小さな拍手をされた。
「素敵な曲ですね、お嬢様」
「あら聴かれていたのですね。恥ずかしい」
「何を仰います。こんな素敵な曲を聴いたのは初めてです」
サラは暖房用の牧を取りに小屋にきて聞こえてきた曲につい聴き入ってしまっていたのだ。
「今の曲素敵よね、一緒に歌ってみましょう。元々デュオで歌う曲なのですから」
「でも、仕事を放り出すわけには」
「大丈夫、今暇な人がいるから。ほら寒いので私の部屋に行って練習しましょう」
その暇な人がルークであることは言うまでもなかった。




