リアリストの使い方
アイドルがもしも目の前で微笑み話す事さえ許されるなら誰であろうと(神竜組組員の様なメタラー除く)その幻想を否定出来ないであろう。
好みもあろうがアイドルというものは恐ろしくカッコ良く可愛いのだ。
見惚れる人の耳元でたとえ他人に何を囁かれようが幻想を打ち破ることは困難である。
ましてや信者と化した者の心を打ち砕く事は不可能。
会うことが出来、時には抱き締められ頬に口づけをされ挙げ句にアイドルが嫁になってくれる可能性さえあるアンドリューにマクシミリアンの声は届かない。
「そんなはずは無い」の一言で全てを都合の良いほうに捉える。
お手上げである。
「アンドリュー、アレイシア。ちょっといいかな」
フェリックス第二王子が手招きをする。
周りの大人たちが怪訝な顔だ。
フェリックス第二王子は端正な顔に笑顔を浮かべ、ひざを折りアンドリューの顔の位置と自分の顔の位置をあわせる。
「アンドリュー、君は誰の子供だっけ」
「父上母上の子供だよ、当たり前じゃないか」
「うん、そうだね。君は母であるラフレシアさんから生まれた訳だけど、今の君がそのまま生まれてきた訳じゃ無いよね」
「赤ちゃんだったと思う」
「その通りだ、赤ちゃんでこんなに小さかったな」
フェリックス第二王子が両手で赤ん坊のおおよその大きさを表す。
自分はこんなに小さかったのかと驚くアンドリュー。
フェリックス第二王子は第一王子に許可を得てアンドリューを産婦人科(本郷)にアレイシアと共に訪問する。
多くの乳児が母といるのを見る。
「いいかいアンドリュー、アレイシアもいずれこうなるんだ」
目を見張ってアレイシアを見上げるアンドリュー。
「アレイシアも赤ちゃん生むの」
「はい、アンドリュー様」
少し考え込むアンドリュー。
「さあ、次だ」
フェリックス第二王子は服飾工房やレストラン、ギルド受付や王宮の事務方が働く職場を見ながら既婚者で母となった女性に王子権限をちらつかせてインタビュー。
もう、それはそれは愚痴のオンパレードである。
旦那や子供、近所付き合いから職場の上司にいたるまで罵詈雑言の嵐である。
甲斐性がない、言うことをきかない、浮気からセクハラ酒癖まで幾らでも出てくる。
「アレイシアも・・・」
「そうですね、時々思うことも有りますけれど今は結婚してませんからこれほどではないですよ」
自分の母もこういうものだとは思うが、それは自分の家族特有のものだと思っていたアンドリューは、世間一般も同じだったのかと驚いた。
フェリックス第二王子は再度アンドリューの耳元で囁く。
「アンドリュー、ここの人たちは幾つくらいだと思う」
「フェリックス叔父さん位だと思う」
「そうだね。よし、アンドリューが結婚できるようになるのはあと何年くらい掛かるかというと最短で11年かかる」
周りを見渡すアンドリュー。
「アレイシアはずっとそのままだよね」
「とんでもございません、私も皆さんと同じですよ」
いつまでも美しく、微笑みを絶やさず一日中一緒におしゃべりしたり遊んだりするアレイシアから人に変わったリアルなアレイシアを意識するアンドリュー。
アンドリューが起きたときには既に文官と何やら話をしていたり、寝る少し前でも頭を悩ます母の姿を思い浮かべるアンドリュー。
「アレイシアも働くの・・・」
「もう、働いていますよ。本当に忙しいんです」
勉強をする以外遊んでいるだけのアンドリュー。
今の自分ではアレイシアの力には成れない。
みんなが待つ王宮に戻るアンドリュー。
「マクシミリアンさん」
「はい、アンドリュー様」
「アレイシアを助けてあげてください」
マクシミリアンはアンドリューに跪き答える。
「今までも、これからも私はアレイシアを支え続ける覚悟です」
「頑張って下さい」
「はい」




